定年後の企業経験は成年後見で生かせるのか 市民後見人編

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高齢化が進む日本では、認知症や判断能力の低下によって財産管理や契約手続きが難しくなる人が増えています。その支援制度として成年後見制度がありますが、利用者の増加に対して後見人の担い手不足が深刻化しています。

こうした中、改正民法によって成年後見制度の利用しやすさが向上することになりました。そして今、新たな担い手として注目されているのが企業で長年働いてきたシニア人材です。

企業経験は本当に成年後見の現場で役立つのでしょうか。人生100年時代における新たな社会参加の形として考えてみます。

成年後見制度が抱える担い手不足

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない人を支援する制度です。

後見人は本人に代わって財産管理を行ったり、必要な契約手続きを支援したりします。

しかし制度の利用者は約25万人にとどまっています。利用が広がらない理由の一つが担い手不足です。

現在の後見人は弁護士や司法書士などの専門職、あるいは親族が中心です。

ところが高齢化の進展によって、支援を必要とする人は今後さらに増加します。認知症高齢者は2030年には500万人を超えると予測されており、従来の体制だけでは対応が難しくなる可能性があります。

そのため専門職だけに依存しない新しい仕組みづくりが求められています。

成年後見は財産管理だけではない

成年後見というと、預金管理や契約手続きなどの財産管理をイメージする人が多いかもしれません。

しかし実際の現場では、それだけではありません。

高齢者を狙った特殊詐欺への対応や、介護施設との連携、医療機関との調整など、本人の日常生活を支える役割がますます重要になっています。

認知症の症状や判断能力の程度は人によって大きく異なります。

本人が何を望んでいるのか。

どのような生活を送りたいのか。

どこまで自分で判断できるのか。

こうしたことを丁寧に把握しながら支援する必要があります。

つまり成年後見に求められるのは法律知識だけではなく、人と向き合う力なのです。

企業人が持つ強みとは何か

ここで注目されるのが企業経験です。

日本企業では多くの人が営業、総務、人事、経理、企画など複数の部署を経験します。

その過程で様々な価値観を持つ人たちと接し、多様な立場を理解する力を身につけます。

また組織の中では調整力や問題解決力も求められます。

成年後見の現場でも、

・本人との信頼関係づくり

・家族との調整

・介護事業者との連携

・行政機関との手続き

など、多くの関係者とのコミュニケーションが必要になります。

これは企業人生で培われた経験が十分に活用できる領域です。

特に管理職経験者は、相手の立場を理解しながら意思決定を支援する能力を持っています。

その力は成年後見業務と非常に相性が良いといえるでしょう。

人生後半の社会貢献という選択肢

定年後、多くの人が「自分の経験を社会のために役立てたい」と考えます。

しかし専門資格がないと社会貢献はできないと思い込んでいる人も少なくありません。

成年後見の分野では必ずしもそうではありません。

もちろん法律や制度の知識は必要です。

しかし専門的な判断が必要な場合は弁護士や司法書士、税理士などと連携すればよいのです。

大切なのは本人に寄り添う姿勢です。

むしろ同じ高齢世代だからこそ理解できる悩みや不安もあります。

企業で長年働いてきた経験を地域社会で生かすことは、本人にとっても大きな生きがいになるでしょう。

税理士や司法書士にも広がる新たな役割

成年後見制度の利用拡大は、士業にも新しい役割をもたらします。

税理士は財産管理や相続対策の助言を行うことができます。

司法書士は後見申立てや不動産登記、遺言支援などを担当できます。

そして市民後見人が日常的な見守りや意思決定支援を行う。

このような役割分担が実現すれば、より多くの高齢者を支援できる体制が整います。

特に今後は家族だけで支える時代から、地域全体で支える時代へ移行していくでしょう。

その中で市民後見人と専門職の連携は重要な社会インフラになる可能性があります。

結論

成年後見制度はこれまで専門職中心で支えられてきました。しかし認知症高齢者の増加によって、それだけでは対応が難しくなりつつあります。

その解決策の一つが企業経験を持つシニア人材の活用です。

企業で培った対人関係力や調整力、問題解決力は、成年後見の現場で大きな力になります。

人生100年時代において、定年は社会との関わりの終わりではありません。むしろ長年の経験を地域社会に還元する新たなスタート地点です。

成年後見は、その代表的な活躍の場の一つになるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 朝刊 2026年6月24日
企業経験が支える成年後見(私見卓見) 福島正純氏

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