相続税評価は本当に公平なのか 資産評価編 第6回

税理士
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相続税の相談を受けていると、多くの方が驚くことがあります。

それは、

「同じ財産なのに評価額が違う」

という現実です。

例えば、銀行預金1億円は相続税評価額も1億円です。

しかし、時価1億円の不動産が相続税評価額では5000万円や6000万円になることがあります。

さらに都心のマンションでは、時価3億円でも相続税評価額が1億円以下になるケースもありました。

この差が長年、相続税対策として利用されてきました。

しかし本当にそれは公平なのでしょうか。

資産税の第一人者である本郷尚税理士は、今回のインタビューで相続税評価制度の根本的な課題について問題提起しています。

人生100年時代において、相続は多くの人にとって避けて通れないテーマです。

だからこそ評価の公平性について考える必要があります。

相続税評価額と時価は違う

多くの人は財産の価値は一つだと思っています。

しかし税務の世界では違います。

不動産には、

時価

固定資産税評価額

相続税評価額

公示価格

など複数の価格があります。

例えば現金1000万円は誰が見ても1000万円です。

しかし不動産は評価方法によって大きく金額が変わります。

そのため相続税対策では長年、不動産が活用されてきました。

現金を不動産に変えるだけで評価額が下がることがあったからです。

マンション評価問題とは何か

近年、大きな議論になったのがマンション評価です。

特に都心のタワーマンションでは、実際の売買価格と相続税評価額との間に大きな差がありました。

例えば市場価格が3億円で売買されているマンションでも、相続税評価額は1億円程度というケースがありました。

すると何が起きるでしょうか。

現金3億円を持っている人と、同じ価値のマンションを持っている人とで相続税負担が大きく変わることになります。

これは公平性の観点から問題視されました。

そのため令和6年からマンション評価の見直しが行われました。

しかし本郷先生は、それでも根本的な解決にはなっていないと指摘しています。

なぜ時価を使わないのか

本郷先生が特に疑問を呈しているのはここです。

マンション市場では日々売買が行われています。

取引価格も公表されています。

実際に売買された価格が分かるのです。

それにもかかわらず、税務上は土地と建物を分けて評価し続けています。

不動産鑑定の世界では、実際の取引事例を重視する考え方があります。

買った人がいる。

売った人がいる。

その価格こそが市場価値です。

ところが税務評価は別の計算方法を採用しています。

この違いが長年の議論の対象になっています。

相続人間の不公平も生まれる

評価の問題は税金だけではありません。

家族関係にも影響します。

例えば長男が都心のマンションを相続し、次男が現金を相続したとします。

税務上の評価額だけを見ると公平に見えるかもしれません。

しかし実際の市場価値では大きな差があることがあります。

すると、

「本当に公平だったのか」

という問題が生じます。

本郷先生は、弁護士から時価ベースで再計算を求められるケースもあると語っています。

相続税評価額と実際の価値が大きく離れると、家族間の納得感にも影響するのです。

貸付用不動産評価の見直し

近年は貸付用不動産の評価についても見直しが進んでいます。

背景には、相続税対策目的の不動産投資があります。

借入金で賃貸不動産を取得すると評価額が下がる仕組みがありました。

その結果、本来の投資目的ではなく、相続税圧縮だけを目的とした取引も増えました。

国税当局はこうした動きに対応して評価ルールを見直しています。

しかし本郷先生は、個別の修正だけではなく、評価制度そのものを考え直す必要があるのではないかと問題提起しています。

公平と実務のバランス

一方で、すべてを時価評価にすれば解決するわけでもありません。

時価は変動します。

評価の手間も増えます。

納税者と税務署の争いも増える可能性があります。

税務行政には、

公平性

分かりやすさ

実務性

という三つの要素が求められます。

どれか一つだけを重視することはできません。

だから評価制度は難しいのです。

人生100年時代の相続対策に必要な視点

人生100年時代になると相続財産も大きくなります。

不動産を保有する期間も長くなります。

そのため、

節税になるから

評価額が下がるから

という理由だけで対策を考えるのは危険です。

重要なのは、

家族にとって公平か。

将来売却しやすいか。

管理し続けられるか。

相続人が納得できるか。

という視点です。

税金だけを見ていると、本当に大切なことを見失う可能性があります。

結論

相続税評価制度は長年にわたり多くの課題を抱えてきました。

マンション評価や貸付用不動産評価の見直しは進んでいますが、本郷尚先生はなお根本的な課題が残っていると指摘しています。

相続税の目的は税金を徴収することだけではありません。

納税者間の公平性を確保することでもあります。

人生100年時代において相続はますます重要なテーマになります。

だからこそ相続対策では、節税だけでなく公平性や家族の納得感まで含めて考えることが必要なのではないでしょうか。

参考

税のしるべ 2026年6月15日

インタビュー等「私が見た 税を巡る 点と線」

本郷尚氏に過去のエピソード、資産税関係の最近の動向を聞く、貸付用不動産の相続税評価額の改正は根本的な問題に触れず

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