60歳からのiDeCoは遅くない 拠出額拡大と70歳未満までの延長で老後資金をもう一度つくる

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iDeCoは若い人が老後資金を準備するための制度というイメージが強いかもしれません。

しかし、制度改正によって、むしろ60歳以降の働く世代にとって使いやすい制度になろうとしています。

ポイントは、掛け金を増やせることだけではありません。

働きながら所得控除を受け、運用益を非課税にし、さらに受取時の退職所得控除を新たに積み上げられる可能性があります。

60歳から70歳までの10年間を、老後資金形成の第二ステージとして考えることが重要になりそうです。

60歳以降もiDeCoを続けられる時代へ

iDeCoは、自分で掛け金を拠出し、自分で運用商品を選び、老後に受け取る私的年金制度です。

大きな特徴は税制優遇です。

掛け金は全額所得控除の対象となり、運用中の利益も原則として非課税です。さらに受け取る際にも、一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除を利用できます。

制度改正では、掛け金を拠出できる期間が70歳未満まで延長されます。

60歳で定年を迎えても、その後再雇用などで働き続ける人が増えている現在の雇用環境に合わせた制度になっていくわけです。

月6万2000円なら10年間で744万円

注目したいのが拠出可能額の拡大です。

企業年金のない会社員の場合、拠出可能額は現在の月2万3000円から月6万2000円へ大幅に増える予定です。

60歳で企業年金の加入資格を失い、その後も会社員として働くケースでは、月6万2000円の枠を利用できる場合があります。

仮に60歳から69歳まで10年間、毎月6万2000円を拠出するとします。

年間では74万4000円です。

10年間では744万円になります。

60歳から始めても、かなり大きな老後資金を積み上げられることが分かります。

働いている60代ほど所得控除の効果が大きい

iDeCoの最大の特徴の一つが掛け金の所得控除です。

掛け金の全額を所得から差し引くことができます。

例えば10年間で744万円を拠出し、所得税と住民税を合わせた税率が15パーセントだったとします。

単純計算では約111万6000円の税負担軽減になります。

もちろん実際の節税額は所得や各種控除などによって異なります。

重要なのは、iDeCoの所得控除は所得がある人ほど利用価値が高くなりやすいということです。

60代でも給与収入があり、所得税や住民税を負担している人にとっては、老後資金を準備しながら現在の税負担も減らせる可能性があります。

60代だからといって株式だけで運用する必要はない

iDeCoというと投資信託で積極的に運用するイメージがあります。

しかし、必ず大きな投資リスクを取らなければならない制度ではありません。

定期預金などの元本確保型商品を選べる金融機関もあります。

掛け金の所得控除によるメリットを重視するのであれば、運用リスクを抑えながらiDeCoを利用するという考え方もあります。

一方、10年程度の運用期間を確保できるのであれば、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券などへ分散する方法もあります。

60代の資産運用では、どれだけ増やせるかだけでなく、大きく減らさないことも重要です。

70歳になったらすぐ受け取る必要はない

もう一つ重要なのが受取開始時期です。

掛け金を拠出できるのは70歳未満までとなりますが、iDeCoの老齢給付金は一定の範囲内で受取開始時期を選択できます。

つまり70歳になったからといって、その時点ですべてを現金化しなければならないわけではありません。

例えば70歳時点で株式市場が大きく下落していた場合、すぐに売却せず、運用を続けながら市場の回復を待つという選択肢も考えられます。

60代で運用する場合は、運用期間だけでなく受取開始時期まで含めて考えることが重要です。

基礎年金やiDeCoを先に受け取る場合には注意する

70歳未満までiDeCoを続けるためには、受給状況にも注意が必要です。

基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給している場合には、加入を続けられないケースがあります。

そのため、65歳以降もiDeCoへの拠出を続けたい場合には、年金をいつから受け取るのかという問題とセットで考える必要があります。

一方、厚生年金や企業型DC、確定給付企業年金などについては扱いが異なります。

60代からのiDeCoは、単独で考えるのではなく、公的年金や企業年金、退職金まで含めた老後資金全体の設計が必要になります。

60歳以降に退職所得控除をもう一度積み上げる

そして60歳以降のiDeCoで特に興味深いのが、受取時の退職所得控除です。

iDeCoを一時金で受け取る場合には退職所得として扱われ、退職所得控除を利用できます。

退職所得控除は、加入期間が20年以下の部分について原則として1年につき40万円です。

例えば60歳以降に新たに10年間iDeCoへ加入すれば、条件によっては400万円分の退職所得控除につながります。

60歳で会社から退職金を受け取り、それまでの退職所得控除を使った人でも、その後のiDeCo加入期間によって新たな控除枠が形成される可能性があるわけです。

ここは60歳以降のiDeCoを考えるうえで非常に重要なポイントです。

企業年金の加入期間が影響する場合もある

さらに企業型DCなどからiDeCoへ資産を移換した場合には、それまでの加入期間が退職所得控除の計算に関係することがあります。

退職所得控除は20年を超えると、超えた部分について原則として1年につき70万円となります。

そのため、60歳以降のiDeCo加入期間が企業年金などの加入期間を含めて21年目以降に当たる場合には、控除額が大きくなる可能性があります。

単純に60歳から何年間iDeCoへ加入するかだけでは判断できません。

これまで勤務先で加入してきた企業年金制度を確認することが重要です。

拠出時と運用時と受取時を一体で考える

iDeCoには三つの税制上の特徴があります。

掛け金を拠出するときの所得控除、運用中の非課税、そして受け取るときの退職所得控除や公的年金等控除です。

これまでは若い時期から長期間積み立てる制度として注目されることが多かったと思います。

しかし加入可能年齢が延び、拠出限度額も大きくなれば、60歳以降の使い方が変わります。

60歳で退職金を受け取った後も働き続け、その給与からiDeCoへ拠出する。

所得控除を受けながら10年間資産を積み立てる。

そして退職所得控除などを考えながら受取時期を決める。

この流れを設計できれば、60歳からでもiDeCoには十分な利用価値があります。

結論

人生100年時代では、60歳は資産形成の終了地点とは限りません。

70歳近くまで働くことが一般的になれば、60代の10年間は資産を取り崩すだけの期間ではなく、もう一度老後資金を積み上げる期間にもなります。

制度改正後のiDeCoでは、月6万2000円を10年間拠出すれば最大744万円になります。

そこに所得控除による節税効果と運用益の非課税効果が加わります。

さらに受取時には退職所得控除などを利用できる可能性があります。

大切なのは、iDeCoだけを見て判断しないことです。

60歳の退職金、企業年金、65歳以降の公的年金、iDeCoの掛け金、そしてiDeCoをいつ受け取るのか。

これらを一つの時間軸に並べることで、60歳以降の資産形成は大きく変わります。

60歳からのiDeCoは遅いのではありません。

働き続ける時代だからこそ、60歳から70歳までの10年間をどう使うかが、これからの老後資金設計の重要なテーマになりそうです。

参考

日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 60歳からiDeCo増額 拠出・非課税枠活用しやすく

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