2026年中途退職者はどう扱う みなし提出の適用時期を整理

税理士
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2027年1月から始まる給与所得の源泉徴収票の「みなし提出の特例」では、制度の適用時期について注意が必要です。

特に間違えやすいのが、2026年中に退職した従業員の取扱いです。

「2027年から始まる制度なのだから、2026年中に退職した人は対象外」と考えてしまいそうですが、必ずしもそうではありません。

重要なのは退職した日だけではなく、源泉徴収票をいつ提出するのかです。

2026年中に退職した従業員であっても、源泉徴収票を2027年1月1日以後に提出する場合には、みなし提出の特例の対象となります。

制度開始直後の年末調整実務では、特に確認しておきたいポイントです。

中途退職者の源泉徴収票には提出期限がある

年の途中で退職した従業員についても、会社は給与所得の源泉徴収票を作成します。

資料では、中途退職者の給与所得の源泉徴収票について、原則として退職の日以後1か月以内に税務署へ提出することとされています。

ただし、実務上は翌年1月末までに、ほかの給与所得の源泉徴収票とまとめて提出することも認められています。

この実務上の取扱いが、2026年から2027年にかけて重要になります。

2026年に退職しても2027年提出なら対象になる

たとえば、2026年12月に従業員が退職したとします。

退職したのは2026年です。

しかし、会社がその従業員の源泉徴収票をほかの従業員分とまとめて2027年1月に提出する場合があります。

この場合、2027年1月1日以後の提出となるため、みなし提出の特例の対象になります。

つまり、

2026年中の退職者だから旧制度

2027年中の退職者だから新制度

という単純な区分ではありません。

制度の適用を判断するときには、源泉徴収票の提出時期を確認する必要があります。

2026年中に提出すれば従来の取扱いになる

反対に、2026年中に退職した従業員について、会社が2026年中に源泉徴収票を提出した場合を考えてみましょう。

みなし提出の特例は2027年1月1日以後に提出する場合に適用されるため、2026年中に提出するものについては新しい特例の対象にはなりません。

同じ2026年中途退職者であっても、

2026年中に提出するのか

2027年1月1日以後に提出するのか

によって取扱いが変わることになります。

制度移行時だからこそ発生する論点です。

年分だけで判断しない

給与税務では、「何年分の給与なのか」を基準として制度を考えることが多いため、今回も2026年分か2027年分かだけで判断したくなるかもしれません。

しかし、みなし提出の特例については、それだけでは不十分です。

資料では、2027年1月1日以後に提出する場合には、2026年中に退職した従業員の給与所得の源泉徴収票であっても特例の対象になることが示されています。

したがって、実務では、

対象となる年分

退職した時期

実際の提出時期

を分けて確認することが重要になります。

30万円以下の中途退職者には別の論点がある

中途退職者については、もう1つ重要な「30万円」という基準があります。

2027年から給与所得の源泉徴収票の提出範囲が変更され、その年の給与等の支払金額が30万円以下である中途退職者を除き、原則としてすべての給与等が提出範囲になります。

ここで注意したいのは、「30万円以下の中途退職者」という話と、「2026年中途退職者にみなし提出が適用されるか」という話は別の論点だということです。

前者は提出範囲の問題です。

後者は制度の適用時期の問題です。

中途退職者について確認するときには、この2つを混同しないようにする必要があります。

従業員本人への源泉徴収票交付は必要

みなし提出の特例によって税務署への源泉徴収票の直接提出が不要になっても、退職した従業員本人への源泉徴収票の交付まで不要になるわけではありません。

受給者本人への源泉徴収票の交付は、これまでどおり必要です。

これは在職している従業員だけでなく、中途退職者についても重要です。

退職した従業員は、その後の再就職先で年末調整を受けたり、自分で確定申告をしたりする際に源泉徴収票を使用することがあります。

「税務署へ提出しない」と「従業員へ交付しない」を混同しないことが大切です。

退職者管理と提出管理を分けて考える

2026年から2027年にかけては、給与担当者が中途退職者を管理するときにも工夫が必要になりそうです。

単に退職日だけを管理するのではなく、

いつ退職したのか

源泉徴収票をいつ作成したのか

従業員本人へいつ交付したのか

税務署への提出またはみなし提出をどのように処理するのか

といった情報を整理しておくことが重要になります。

特に2026年末の退職者については、提出処理が2027年にまたがる可能性が高いため、制度移行時の対象者として確認しておいた方がよいでしょう。

給与ソフトの処理時期にも注意する

給与計算ソフトや年末調整システムを利用している企業では、中途退職者の源泉徴収票を退職時に処理する場合と、年末調整後の法定調書作成時にまとめて処理する場合があります。

その処理方法によって、2026年中途退職者の提出時期が変わる可能性があります。

2027年1月の制度開始を迎える前に、自社の給与ソフトが中途退職者をどのように処理しているのか確認しておくことが重要です。

特に、従来から年明けにまとめて提出している企業では、2026年中途退職者が新制度の対象になる可能性があることを意識しておく必要があります。

制度移行期は新旧の取扱いが混在する

2027年1月の制度開始前後では、同じ会社の中でも従来の取扱いと新しい取扱いが混在する可能性があります。

2026年中に提出を終えたものは従来の取扱いとなり、2027年1月1日以後に提出するものは、要件を満たせばみなし提出の対象になります。

そのため、「2027年になったからすべて新制度」「2026年分だからすべて旧制度」と一括して処理するのは危険です。

制度の切替え時には、提出日を基準として個別に確認することが重要になります。

2025年分以前とは取扱いが違う

さらに、過年度分についても注意が必要です。

みなし提出の特例は、2027年1月1日以後に提出すべき2026年分以後の源泉徴収票が対象です。

したがって、2025年分以前の源泉徴収票については対象外となります。

2027年以降に2025年分以前の源泉徴収票を訂正する必要が生じた場合には、従来どおり税務署へ源泉徴収票を提出する必要があります。

「2027年以降に提出するものなら何でもみなし提出になる」というわけではありません。

この点も制度の適用時期を考えるうえで重要です。

結論

2027年1月から始まる給与所得の源泉徴収票のみなし提出では、中途退職者の取扱いに注意が必要です。

2026年中に退職した従業員であっても、源泉徴収票を2027年1月1日以後に提出する場合には、みなし提出の特例の対象となります。

一方、2026年中に提出するものについては、新しい特例の対象にはなりません。

したがって、「何年に退職したか」だけで新旧制度を判断することはできません。

また、中途退職者には30万円以下という提出範囲の例外もあるため、適用時期の問題と提出範囲の問題を分けて考える必要があります。

制度移行期となる2026年末から2027年初めは、退職日、給与等の支払金額、提出時期をそれぞれ確認することが重要になります。

2026年中途退職者は、新しい制度への切替えを正しく処理できているかを確認するうえで、特に注意したい対象者といえるでしょう。

次回は、「eLTAXを使わなくても『みなし提出』はできる 書面提出との違いを整理」について詳しく見ていきます。

参考

企業実務 2026年10月号 2027年1月施行 給与所得の源泉徴収票「みなし提出の特例」の実務対応

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