非上場株評価改正で持株会社はどうなるのか 純資産の大きな会社ほど影響を受ける理由編

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非上場株の評価制度が大きく見直されると、持株会社を使った事業承継にも影響が及ぶ可能性があります。

持株会社は、複数の事業会社の株式を保有し、グループ全体を統括する会社です。

事業承継では、先代経営者が持つ事業会社の株式を持株会社に集約し、その持株会社の株式を後継者へ承継する方法が使われることがあります。

しかし、新しい非上場株評価ルール案では、会社の簿価純資産と今後5年間で見込まれる収益力を重視する方向が示されています。

持株会社は子会社株式などの資産を多く保有するため、純資産が大きくなりやすい会社です。

そのため、新ルールでは自社株評価額が上がる可能性があります。

今回は、持株会社とは何か、子会社株式と純資産の関係、利益と資産がどのように評価へ影響するのかを整理します。

持株会社とは何か

持株会社とは、他の会社の株式を保有し、その会社を支配したり管理したりすることを主な目的とする会社です。

たとえば、事業会社A社と事業会社B社があるとします。

両社の株式を持株会社H社が保有すれば、

H社

A社

B社

というグループ構造になります。

経営者個人がA社とB社の株式を直接持つのではなく、H社の株式を持つ形です。

この仕組みによって、複数会社の経営権を一つの会社に集約できます。

なぜ事業承継で持株会社を使うのか

持株会社には、経営上さまざまなメリットがあります。

複数の事業会社を一元的に管理しやすくなります。

後継者へグループ全体の経営権を移しやすくなります。

事業会社ごとに役割を分けることもできます。

また、兄弟姉妹が複数の事業会社を担当する場合でも、持株会社を通じてグループ全体の資本関係を整理しやすくなります。

そのため、持株会社化は単なる相続税対策ではなく、事業承継や組織再編の手段として広く利用されています。

持株会社では子会社株式が大きな資産になる

持株会社の貸借対照表を見ると、大きな特徴があります。

それが子会社株式です。

一般の事業会社では、

現預金

売掛金

商品

工場

機械設備

などが主な資産になります。

一方、持株会社では子会社の株式が貸借対照表の大きな部分を占めることがあります。

たとえば、持株会社がA社とB社の株式を取得するために合計10億円を投じた場合、その子会社株式が持株会社の資産として計上されます。

そのため、持株会社は事業を直接行っていなくても、総資産や純資産が大きくなることがあります。

子会社株式の価値が持株会社の価値につながる

持株会社そのものに工場や店舗がなくても、傘下の子会社が高い価値を持っていれば、持株会社にも大きな価値があります。

たとえば、

A社の価値が10億円

B社の価値が5億円

だったとします。

H社が両社の株式をすべて保有していれば、H社は実質的に15億円相当の事業価値を支配していることになります。

つまり、持株会社の価値を見る場合には、その会社単体だけでなく、保有している子会社株式の価値が非常に重要です。

この点が、新しい非上場株評価制度との関係で大きな論点になります。

純資産が大きい持株会社は新ルールの影響を受けやすい

新ルール案では、会社の簿価純資産が評価の重要な要素になります。

持株会社では、多額の子会社株式が資産として計上されているため、純資産も大きくなりやすくなります。

たとえば、

子会社株式10億円

現預金2億円

負債3億円

であれば、単純化すると純資産は9億円です。

持株会社単体の従業員が数人しかいなくても、非常に大きな純資産を持つことがあります。

つまり、従業員数や売上高だけを見れば小さな会社でも、新ルールでは高い評価額になる可能性があります。

持株会社は売上高が小さく見えることがある

持株会社では、売上高が事業会社ほど大きくない場合があります。

主な収入が、

子会社からの配当

経営指導料

不動産賃貸料

などであることもあります。

そのため、売上高だけを見ると小規模会社に見えることがあります。

しかし、会社が保有する子会社株式の価値は大きい場合があります。

新ルールで純資産を重視するのであれば、

売上高は小さい

しかし純資産は非常に大きい

という持株会社の実態が株価へ反映されやすくなる可能性があります。

子会社の利益が持株会社へ影響する

新ルール案では、純資産だけでなく収益力も重要です。

持株会社の場合、収益力は子会社との関係で考える必要があります。

子会社が高い利益を出せば、持株会社は配当を受け取ることができます。

また、持株会社が子会社へ経営指導や管理サービスを提供し、管理料などを受け取る場合もあります。

つまり、子会社の収益力が高ければ、その利益が間接的に持株会社の利益にも反映されます。

このため、

子会社株式という資産

子会社から得られる利益

の両方が持株会社の価値へ影響する可能性があります。

利益と資産の二重の影響が生じる可能性がある

新ルールで持株会社が注意すべきなのは、利益と資産の二重の影響です。

まず、子会社株式を持っていることで純資産が大きくなります。

さらに、子会社から配当などを受け取れば持株会社の利益も増えます。

新ルールが純資産と収益力の両方を評価するのであれば、

資産として子会社株式を持っている

その子会社から利益も受け取っている

という二つの要素が株価を押し上げる可能性があります。

特に高収益の子会社を複数持つ持株会社では、影響が大きくなる可能性があります。

配当の扱いは重要な論点になる

持株会社では、子会社からの配当が主要な収益になることがあります。

ここで重要なのが、新制度で収益力をどのように計算するのかです。

単純に持株会社単体の利益を見るのであれば、子会社からの配当額によって収益力が大きく変わります。

一方、グループ全体の収益力を考えるのであれば、子会社の利益をどのように反映するのかという問題があります。

持株会社の場合には、一般の事業会社と同じ計算式をそのまま適用すると、企業価値を適切に反映できない可能性もあります。

今後の制度設計では、このような持株会社特有の事情をどのように扱うのかが重要になります。

持株会社化だけで株価が下がるとは限らない

従来の事業承継では、持株会社化を自社株対策の一環として検討するケースもありました。

しかし、新ルールが導入されれば、

持株会社を作れば株価が下がる

という単純な発想は通用しにくくなる可能性があります。

持株会社が子会社株式を多額に持てば、それが純資産として評価されます。

さらに、子会社から高い利益を受け取れば収益力も高くなります。

そのため、持株会社化によってグループ構造を変えても、経済実態として高い価値が残っているのであれば、その価値を税務上も反映する方向になる可能性があります。

組織再編の目的がより重要になる

持株会社化そのものに問題があるわけではありません。

経営管理の効率化。

複数事業の分離。

M&Aへの備え。

後継者への権限移転。

兄弟姉妹間の事業分担。

こうした合理的な目的で持株会社を利用することはあります。

重要なのは、

なぜ持株会社を作るのか

という目的です。

新制度で株価圧縮の余地が小さくなれば、税務上の評価だけを目的として持株会社を設ける意味は薄れる可能性があります。

その一方で、本来の経営目的による持株会社化の重要性は変わりません。

事業承継で持株会社を使っている会社は再試算が必要になる

すでに持株会社を使って事業承継対策を行っている会社では、新制度が確定した段階で自社株評価を再計算する必要があります。

特に確認したいのは、

持株会社の簿価純資産

子会社株式の帳簿価額

子会社からの配当収入

持株会社自身の利益

借入金残高

過去5年間の利益

などです。

現在の評価方式で想定していた株価と、新ルールで算定した株価が大きく違う可能性があります。

持株会社の借入金も評価に影響する

持株会社を設立する際には、金融機関から借入れを行って事業会社株式を取得することがあります。

借入金は負債です。

そのため、純資産を計算する際には資産から差し引かれます。

たとえば、10億円の子会社株式を8億円の借入金で取得したとします。

単純化すれば、持株会社の純資産への影響は2億円程度です。

しかし、その後子会社からの配当などを使って借入金を返済すれば、負債が減っていきます。

子会社株式が残ったまま借入金が減れば、純資産は増えます。

つまり、時間の経過とともに持株会社の自社株評価額が上がる可能性があります。

借入金返済が進むほど株価が上がることもある

持株会社による事業承継では、借入金を使って株式を取得し、子会社からの配当などで長期間かけて返済する仕組みが使われることがあります。

経営上は、借入金が減ることは望ましいことです。

財務体質が改善します。

しかし、相続税評価では、

負債が減る

純資産が増える

自社株評価額が上がる

という関係があります。

新ルールで簿価純資産が重視されれば、この影響がより直接的になる可能性があります。

子会社の成長も持株会社株式の価値を高める

持株会社の株価は、傘下企業の成長とも無関係ではありません。

子会社が利益を積み上げれば、子会社自身の純資産が増えます。

配当余力も高まります。

持株会社が受け取る収益も増える可能性があります。

グループ全体が成長すれば、最終的に持株会社の価値も高まると考えるのが自然です。

そのため、持株会社を利用しているからといって、事業会社の成長による株価上昇を切り離せるわけではありません。

純資産が大きいことは悪いことではない

ここでも重要なのは、純資産が大きいこと自体は問題ではないという点です。

持株会社に十分な自己資本があれば、グループ全体の財務基盤が安定します。

新しい事業への投資も行いやすくなります。

子会社を買収する資金力も高まります。

金融機関からの信用力にもつながります。

したがって、相続税評価を下げるためだけに純資産を減らすことが目的になってはいけません。

事業承継では、会社の成長と税負担を両方見る必要があります。

新制度では持株会社の経済実態を見る方向になる

今回の新ルール案の大きな特徴は、会社規模や評価方式より、会社自身の経済実態を見る方向へ変わることです。

持株会社でも同じです。

会社単体の従業員が少ないから小会社。

売上高が小さいから価値も小さい。

という単純な判断ではなく、

どれだけ子会社株式を持っているのか

どれだけ純資産があるのか

どれだけ利益を生み出しているのか

という実態が重要になる可能性があります。

これは持株会社を利用した事業承継にとって大きな変化です。

結論

持株会社とは、子会社株式を保有し、グループ全体を支配したり管理したりする会社です。

事業承継では、複数の事業会社の株式を持株会社へ集約し、その持株会社株式を後継者へ承継する方法が利用されることがあります。

しかし、新しい非上場株評価ルール案では、会社の簿価純資産と収益力を重視する方向が示されています。

持株会社では、子会社株式が大きな資産となるため、純資産も大きくなりやすくなります。

さらに、子会社から配当などを受け取れば収益力にも反映されます。

そのため、

子会社株式という資産

子会社から得る利益

という二つの方向から持株会社の自社株評価額が高くなる可能性があります。

また、持株会社設立時の借入金を返済していけば負債が減り、純資産が増えるため、時間の経過とともに株価が上昇することも考えられます。

新制度が導入されれば、持株会社化そのものによって株価を下げるという発想より、持株会社が実際にどれだけの資産と収益力を持っているのかが重要になります。

すでに持株会社を利用している企業では、新ルール確定後に持株会社単体だけでなくグループ全体の財務内容を確認し、事業承継計画を改めて試算することが重要になります。

参考

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の評価、新ルール案 中小・零細で相続税減

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の相続税、大規模・高収益なら負担増 国税庁案

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の算定方法 企業規模に応じ3方式

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