住宅価格の上昇と住宅ローン金利の上昇が同時に進むなか、住宅購入の判断が難しくなっています。
これまでの日本では、住宅ローンの低金利が住宅購入を後押ししてきました。
住宅価格が上昇しても、住宅ローン金利が低ければ、毎月の返済額を一定程度抑えることができたためです。
しかし、2026年は日本銀行の政策金利引き上げが続き、住宅ローンの変動金利にも上昇圧力がかかっています。
一方、都市部を中心に住宅価格は高い水準にあり、住宅購入に必要な借入額も大きくなっています。
住宅価格が高く、住宅ローン金利も上昇するという状況は、これから住宅を購入する人にとって大きな課題です。
そのため、住宅価格が下がるまで購入を待つべきなのか、それとも金利がさらに上昇する前に購入すべきなのか、迷う人も少なくありません。
しかし、住宅購入の判断を住宅価格や金利の予測だけで行うことには限界があります。
住宅は金融資産であると同時に、家族が生活するための基盤でもあります。
購入時期の判断では、住宅価格、住宅ローン金利、家計の返済能力、家族構成、将来の働き方などを総合的に考える必要があります。
今回は、金利上昇時代に住宅を購入する際の判断基準を整理し、後悔しない住宅購入のために必要な考え方を解説します。
住宅価格と住宅ローン金利は別々に考えない
住宅購入を検討する際、多くの人は物件価格に注目します。
例えば、5,000万円の住宅と6,000万円の住宅を比較すれば、価格差は1,000万円です。
しかし、住宅ローンを利用して購入する場合には、物件価格だけでなく金利負担も考慮する必要があります。
同じ5,000万円の住宅でも、住宅ローン金利が年0.5%の場合と年2.5%の場合では、返済総額が大きく異なります。
住宅ローン金利が低ければ、毎月の返済額を抑えることができます。
一方、金利が上昇すれば、同じ金額を借りても毎月の返済額が増加します。
つまり、住宅購入の負担は、住宅価格と住宅ローン金利の組み合わせによって決まります。
住宅価格が多少下落しても、住宅ローン金利が大幅に上昇すれば、毎月の返済額が増える場合があります。
反対に、住宅価格が高くても、金利条件が有利であれば、返済負担を抑えられる可能性があります。
住宅購入では、物件価格だけでなく、住宅ローンの返済総額を確認することが重要です。
借入額5,000万円で金利上昇の影響を確認する
具体的な数字で考えてみましょう。
借入額5,000万円、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしという条件です。
金利が年0.5%の場合、毎月の返済額は約13万円です。
金利が年1.5%の場合、毎月の返済額は約15万3,000円になります。
金利が年2.5%の場合、毎月の返済額は約17万9,000円になります。
年0.5%と年2.5%では、毎月約4万9,000円の差が生じます。
年間では約59万円の負担増加です。
35年間にわたって同じ金利が続くと仮定すれば、返済総額には約2,000万円の差が生じます。
ただし、これは各金利が借入当初から35年間変わらないと仮定した試算です。
実際の変動金利型住宅ローンでは、金利の見直し時期や借入残高、返済方式などによって返済額が変わります。
それでも、住宅ローン金利の上昇が住宅購入の負担に与える影響は大きいことが分かります。
住宅を購入する際には、現在の金利だけでなく、将来の金利上昇も想定して返済計画を立てる必要があります。
住宅価格が下がるまで待つべきなのか
住宅価格が高い状況では、価格が下落するまで購入を待つという選択肢があります。
しかし、住宅価格がいつ、どの程度下落するかを正確に予測することは困難です。
住宅価格は、人口動態、建築費、土地価格、金利、所得水準、住宅需要など、さまざまな要因によって変動します。
例えば、住宅ローン金利が上昇すれば、住宅購入者の借入可能額が減少し、住宅需要が弱まる可能性があります。
その結果、住宅価格に下落圧力がかかる場合があります。
一方、建築資材価格や人件費が高止まりすれば、新築住宅の価格が下がりにくくなることも考えられます。
また、都心部の利便性が高い地域では、住宅需要が底堅く、価格が高い水準で維持される可能性があります。
反対に、人口減少が進む地域では、住宅需要の減少によって価格が下落する可能性があります。
住宅価格の動向は地域によって異なります。
そのため、全国平均の住宅価格だけで購入時期を判断することは適切ではありません。
購入を検討している地域の人口動態や住宅供給、交通利便性などを確認する必要があります。
住宅価格が下がっても金利上昇で負担が増える場合がある
住宅価格と金利の関係を具体的に考えてみましょう。
現在、5,000万円の住宅を購入し、全額を35年間の住宅ローンで借り入れるとします。
金利が年1.0%の場合、毎月の返済額は約14万1,000円です。
一方、住宅価格が10%下落して4,500万円になった場合を考えます。
ただし、その時点で住宅ローン金利が年2.5%に上昇していたとします。
この場合、4,500万円を35年間で借り入れると、毎月の返済額は約16万1,000円になります。
住宅価格は500万円下落していますが、毎月の返済額は約2万円増える計算です。
もちろん、住宅価格が下落し、金利も低下する場合には、購入負担が軽くなる可能性があります。
しかし、住宅価格の下落だけを期待して購入を先送りすると、金利上昇によって返済負担が増える場合もあります。
住宅購入では、価格と金利を組み合わせて判断することが重要です。
変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか
住宅購入時には、変動金利と固定金利の選択も重要になります。
変動金利型は、固定金利型より借入当初の金利が低い傾向があります。
そのため、毎月の返済額を抑えやすいという利点があります。
一方、将来の金利上昇によって返済負担が増加する可能性があります。
固定金利型は、借入当初の金利が高くなる傾向がありますが、固定期間中の返済額を安定させることができます。
特に全期間固定金利型では、将来の市場金利が上昇しても、契約上の金利は原則として変わりません。
ただし、固定金利が変動金利より高い場合には、その差額を長期間負担することになります。
そのため、どちらが有利かは将来の金利動向によって異なります。
重要なのは、金利の先行きを正確に予測することではありません。
変動金利が上昇しても返済を続けられるか、固定金利の返済額を無理なく負担できるかを確認することです。
住宅ローンの金利タイプは、家計のリスク許容度に合わせて選ぶ必要があります。
住宅ローンは借りられる金額で判断しない
住宅購入では、銀行からいくら借りられるかという点に注目しがちです。
しかし、銀行が融資可能と判断した金額が、その世帯にとって無理なく返済できる金額とは限りません。
例えば、年収800万円の世帯であっても、子どもの人数や教育費、生活費、将来の収入見通しによって返済能力は異なります。
また、共働き世帯では、夫婦の収入を合算することで借入可能額が大きくなる場合があります。
しかし、出産、育児、介護、転職などによって、一方の収入が減少する可能性があります。
そのため、現在の世帯年収だけを前提に住宅ローンを組むことには注意が必要です。
住宅ローンの返済計画では、毎月の返済額に加えて、固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険料なども考慮する必要があります。
さらに、将来の教育費や老後資金の積み立ても重要です。
住宅ローンは、銀行が貸してくれる金額ではなく、家計が長期間にわたって返済できる金額を基準に判断することが大切です。
持ち家と賃貸はどちらが有利か
住宅購入を検討する際には、持ち家と賃貸の比較も欠かせません。
持ち家の利点は、住宅ローンを完済すれば、毎月のローン返済負担がなくなることです。
また、住宅を資産として保有できることも特徴です。
一方、持ち家には固定資産税や修繕費などの負担があります。
マンションでは管理費や修繕積立金も必要です。
さらに、住宅価格が下落すれば、売却時に想定した価格で売れない可能性があります。
一方、賃貸住宅は、住み替えが比較的容易であり、転勤や家族構成の変化に対応しやすいという利点があります。
ただし、家賃の支払いは住み続ける限り必要です。
高齢期には、賃貸住宅の入居審査や保証人の確保などが課題になる場合もあります。
持ち家と賃貸のどちらが有利かは、住宅価格や家賃だけでなく、居住期間、家族構成、地域、老後の住まい方によって異なります。
住宅購入は、資産形成だけでなく、将来どのような生活を送りたいかという視点から考える必要があります。
50代60代の住宅購入は慎重な資金計画が必要
50代60代で住宅を購入する場合には、若い世代とは異なる注意点があります。
最も重要なのは、定年退職後の収入と住宅ローン返済の関係です。
例えば、55歳で20年間の住宅ローンを組んだ場合、完済予定年齢は75歳です。
65歳で定年退職する場合には、退職後も10年間にわたって住宅ローンの返済が続きます。
一方、60歳以降も働き続け、70歳まで一定の給与収入を確保できる人もいます。
その場合には、住宅ローン返済と老後資金の形成を両立しやすくなる可能性があります。
ただし、将来の就労収入には不確実性があります。
健康状態や雇用環境によって、予定より早く退職することも考えられます。
そのため、50代60代で住宅を購入する場合には、定年退職後の収入減少を想定した返済計画が必要です。
また、退職金を住宅ローンの返済に充てる場合には、老後の生活資金を十分に確保できるかを確認する必要があります。
住宅ローンの完済を優先するあまり、老後資金が不足することは避けなければなりません。
住宅購入では立地と将来の資産価値も重要
住宅購入を考える際には、物件価格や住宅ローン金利だけでなく、立地と将来の資産価値も重要です。
住宅は長期間にわたって利用する資産であるため、将来売却する可能性も考慮する必要があります。
例えば、駅から近く、生活利便性が高い地域では、一定の住宅需要が維持される可能性があります。
一方、人口減少が進む地域では、住宅需要の減少によって価格が下落する可能性があります。
また、マンションでは管理組合の運営状況や修繕積立金の水準、建物の維持管理状況なども重要です。
購入時の価格が安くても、将来大規模な修繕費用が必要になれば、家計への負担が増加します。
戸建て住宅でも、屋根や外壁、給排水設備などの修繕費用が必要です。
住宅購入では、購入時の負担だけでなく、保有期間中の維持費と将来の売却可能性を考慮する必要があります。
特に老後の住み替えを考えている場合には、売却しやすい住宅かどうかも重要な判断材料になります。
購入を急ぐ必要がない場合もある
住宅価格や金利の上昇を見て、早く購入しなければならないと考える人もいるでしょう。
しかし、住宅購入を急ぐことが必ずしも合理的とは限りません。
例えば、転勤や転職の可能性が高い場合には、賃貸住宅を利用する方が柔軟に対応できることがあります。
また、子どもの進学や独立などによって、必要な住宅の広さが変わる可能性もあります。
さらに、現在の住宅価格が家計の返済能力に対して高すぎる場合には、購入を先送りすることも選択肢になります。
住宅ローンの返済額が家計を圧迫し、教育費や老後資金の準備ができなくなってしまっては、住宅購入による生活の安定が損なわれます。
住宅購入は、金利がさらに上昇する前に借りることだけを目的にするものではありません。
必要な住宅の条件と家計の返済能力が一致したときに購入することが重要です。
住宅購入の最終判断で確認したいこと
金利上昇時代の住宅購入では、複数の条件を総合的に確認する必要があります。
まず、購入予定の住宅価格が家計に見合っているかを確認します。
次に、住宅ローンの借入額、適用金利、返済期間、毎月の返済額を試算します。
そのうえで、住宅ローン金利が1%、2%、3%上昇した場合の返済負担を確認します。
さらに、固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険料などの住宅関連費用も考慮します。
また、教育費、老後資金、生活防衛資金など、住宅購入以外に必要な資金を確保できるかを検証します。
50代以降では、定年退職後の収入減少と公的年金の受給見通しも重要です。
住宅ローンを完済できるかだけでなく、完済後に十分な金融資産が残るかを確認する必要があります。
住宅購入は人生のなかでも大きな資金計画の一つです。
そのため、物件価格や金利だけでなく、家計全体の長期的な安定性を重視することが大切です。
結論
金利上昇時代に住宅を購入すべきかどうかについて、すべての人に共通する正解はありません。
住宅価格が高く、住宅ローン金利も上昇する状況では、購入時期の判断が難しくなっています。
しかし、住宅価格や金利の先行きを正確に予測することは困難です。
重要なのは、現在の価格や金利だけでなく、将来の返済負担を想定した資金計画を立てることです。
特に変動金利型住宅ローンでは、金利上昇によって毎月の返済額や利息負担が増える可能性があります。
また、住宅購入後には固定資産税や修繕費などの支出も発生します。
そのため、住宅ローンの返済額だけで購入の可否を判断することはできません。
住宅購入では、家計の返済能力、家族構成、働き方、老後資金、住宅の立地や将来の資産価値などを総合的に考える必要があります。
人生100年時代の住宅購入では、住宅を取得すること自体を目的にするのではなく、長期間にわたって安心して生活できる住まいを確保することが重要です。
金利上昇時代だからこそ、住宅価格や金利の動きに振り回されず、自分の家計と将来計画に合った住宅購入を判断することが求められます。
参考
日本経済新聞 2026年10月 変動金利の住宅ローン、銀行ごとにばらつき ルールの確認を
住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査
国土交通省 不動産価格指数
国土交通省 住宅市場動向調査