金利上昇で生命保険の解約が増加 いま見直すべきなのは「利回り」ではなく「保障」の役割

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

金利のある世界が戻ってきたことで、私たちの資産運用や保険の考え方も大きく変わり始めています。

日本経済新聞によると、2026年1~5月の生命保険の解約返戻金は約6兆円と前年同期比で約4割増加し、このままなら上半期として過去最高になる見込みです。

背景には、金利上昇によって新しい保険商品の予定利率が高くなったことに加え、新NISAを利用した投資信託への資金シフトがあります。

しかし、このニュースを「保険より投資の方が得」という単純な話として受け止めるのは危険です。

本当に考えるべきなのは、「保険」と「投資」は目的が違うという基本原則です。

今回は、金利上昇で起きている生命保険の解約ラッシュから、これからの資産形成について考えてみます。

金利上昇で保険を取り巻く環境はどう変わったのか

長年、日本は超低金利時代が続いていました。

そのため、生命保険会社も高い利回りの商品を提供することが難しく、予定利率は低水準が続いていました。

ところが金利が上昇すると、保険会社は国債などの運用利回りが改善するため、新しく販売する保険商品の予定利率を引き上げることができます。

すると以前に契約した低予定利率の保険は、相対的な魅力が薄れてしまいます。

その結果、

「今より条件の良い保険へ乗り換えよう」

「保険ではなく投資信託にしよう」

と考える人が増えているのです。

金利の変化が、契約者の行動まで変え始めています。

新NISAが資金移動を後押ししている

今回の特徴は、新しい保険への乗り換えだけではないことです。

投資信託へ資金を移す人も増えています。

新NISAでは運用益が非課税になるため、資産形成を重視する人にとって非常に魅力的な制度となっています。

株式市場が堅調なこともあり、

「保険より投資信託の方が資産を増やせる」

という考え方が広がっています。

実際、公募株式投資信託への資金流入も大幅に増加しています。

資産形成という観点では、保険会社は投資信託と直接競争する時代に入ったといえます。

保険は投資商品ではない

ここで忘れてはいけないのが、生命保険の本来の役割です。

生命保険は、

・死亡保障

・医療保障

・介護保障

・就業不能保障

など、「もしも」に備えるための商品です。

一方で投資信託は資産を増やすことが目的です。

役割そのものが違います。

近年は貯蓄性保険が人気となったことで、この違いが見えにくくなりました。

しかし、本来は

保障は保険

資産形成は投資

と分けて考える方が合理的という考え方が広がっています。

金融アドバイザーの間でも、この「保障と運用の分離」は近年の大きな流れになっています。

利回りだけで解約すると後悔することもある

利回りだけを見て保険を解約するのは注意が必要です。

例えば、

・健康状態によって新しい保険に加入できない

・年齢が上がり保険料が高くなる

・保障内容が小さくなる

・解約返戻金が元本を下回る

といったケースも少なくありません。

また、契約初期の保険では解約返戻金が少ない商品もあります。

「利回りが高いから」という理由だけでは、本当に有利とは限らないのです。

保険は金融商品であると同時に、「保障契約」でもあることを忘れてはいけません。

生保会社にとっても解約増加は大きなリスク

生命保険会社にも悩みがあります。

保険会社は契約者から預かった資金を超長期国債などで運用しています。

ところが金利が上昇すると、過去に購入した債券価格は下落します。

もし解約が急増すると、保険会社は返戻金を支払うために債券を売却しなければならず、含み損が実際の損失になります。

これが利益を圧迫する要因になります。

さらに予定利率を無理に上げ続ければ、将来の運用利回りが不足する「逆ざや」が発生する可能性もあります。

実際、1990年代には逆ざやが原因で経営破綻した生命保険会社もありました。

そのため各社は利率競争ではなく、配当や営業職員によるフォローなどで契約維持を図っています。

金利がある時代は「保険の目的」を見直す時代

低金利時代には、

「保険で貯める」

という考え方が支持されてきました。

しかし金利が上がり、投資環境も整った現在では、

「保障は保険」

「資産形成は投資」

という考え方がより合理的になっています。

もちろん全ての人に当てはまるわけではありません。

家族構成や年齢、資産状況によって最適な選択は異なります。

重要なのは、「利回りが高いから解約する」のではなく、自分に必要な保障と資産形成を切り分けて考えることです。

金利上昇は、私たちに保険の本来の役割を改めて問いかけているのかもしれません。

結論

生命保険の解約が急増している背景には、金利上昇と新NISAの普及という二つの大きな変化があります。

資産形成を重視する人が増えること自体は自然な流れですが、生命保険は本来「万一に備えるための保障」であり、投資信託とは役割が異なります。

これからは、「どちらが得か」を比較する時代ではなく、「保障は保険」「資産形成は投資」という目的に応じた使い分けが重要になります。

保険を見直す際には、利回りだけではなく、将来必要となる保障やライフプラン全体を踏まえて判断することが、後悔しない選択につながるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年7月29日 朝刊
生保解約、金利上昇で拍車 返戻金1~5月4割増、最高ペース 高利回りの投信にシフト

タイトルとURLをコピーしました