REITは比較的高い分配金を受け取れる金融商品として、多くの投資家に利用されてきました。
特に日本で超低金利が続いていた時代には、預金や国債から十分な利回りを得ることが難しく、REITの分配金には大きな魅力がありました。
しかし、金利が上昇すると状況が変わります。
債券などから得られる利回りが高くなり、REITとの比較が始まるからです。
さらにREIT自身も借入金を利用して不動産を取得しているため、金利上昇によって資金調達コストが増える可能性があります。
長期金利3パーセント時代には、分配金が高いという理由だけでREITが買われるとは限らなくなります。
REITと金利にはどんな関係があるのか
REITは投資家から集めた資金だけで不動産を購入しているわけではありません。
金融機関からの借入金なども利用します。
例えば、投資家から1000億円を集め、それに借入金を組み合わせて、より多くの不動産を保有することがあります。
借入金には利息がかかります。
金利が低ければ、低いコストで資金を調達できます。
金利が上昇すれば、新しい借入れや借換えの金利も上昇する可能性があります。
このため、REITにとって金利は収益を左右する重要な要素です。
金利が上がると利払いが増える
単純な例で考えてみます。
1000億円を年1パーセントで借りていれば、年間の利息は10億円です。
同じ1000億円でも金利が2パーセントになれば、年間の利息は20億円になります。
差は10億円です。
不動産から得られる賃料が変わらなければ、利払いが増えた分だけREITに残る利益は減ります。
利益が減れば、投資家へ支払う分配金にも影響する可能性があります。
これが金利上昇がREITにとって逆風になる理由の1つです。
すべての借入金の金利がすぐ上がるわけではない
ただし、長期金利が上昇したからといって、REITの利払いが翌日から一斉に増えるわけではありません。
REITは固定金利で資金を借りていることがあります。
借入期間もそれぞれ異なります。
固定金利で長期間借りていれば、その期間中は市場金利が上昇しても支払金利は基本的に変わりません。
問題になるのは借換えです。
低金利時代に借りた資金が満期を迎え、高い金利で借り直す必要が生じれば、徐々に利払い負担が増えていきます。
したがって、投資家は借入金の金額だけでなく、固定金利の比率や返済期限なども確認する必要があります。
債券との競争が始まる
金利上昇がREITへ与えるもう1つの大きな影響が、投資先としての競争です。
例えば、安全性の高い債券からほとんど利回りを得られない時代に、REITから4パーセント程度の分配金利回りを得られるとします。
投資家にとってREITは魅力的に見えます。
しかし、債券の利回りが大きく上昇すれば話が変わります。
価格変動リスクを負ってREITを保有しなくても、債券から一定の利回りを得られるようになるからです。
投資家はREITの分配金利回りと債券利回りの差をより厳しく見るようになります。
分配金利回りだけでは比較できない
REITの分配金利回りが4パーセントで、債券利回りが3パーセントだとします。
数字だけを見ればREITの方が1パーセント高くなります。
しかし、REITの投資口価格は毎日変動します。
不動産市況が悪化すれば価格が下落する可能性があります。
空室が増えれば賃料収入が減る可能性もあります。
一方、安全性の高い国債などとはリスクの性質が違います。
そのため、REITには債券より高い利回りが求められるのが一般的です。
債券利回りが上昇すれば、REITにもそれに見合う高い利回りが求められる可能性があります。
利回りを上げるには価格が下がる場合がある
分配金が変わらない場合、REITの分配金利回りを高くする方法があります。
投資口価格が下がることです。
例えば、年間分配金が4000円で投資口価格が10万円なら、単純な分配金利回りは4パーセントです。
投資口価格が8万円まで下がり、年間分配金が4000円のままなら、利回りは5パーセントになります。
債券利回りが上昇して投資家がREITにも高い利回りを求めるようになれば、分配金が増えなくても投資口価格が下落することで利回りが調整されることがあります。
これが金利上昇局面でREIT価格が下がりやすい理由の1つです。
長期金利3パーセントの意味
日本では長期間、非常に低い金利環境が続いてきました。
その環境ではREITの比較的高い分配金利回りが大きな魅力でした。
しかし、日本の長期金利は30年ぶりに3パーセント台へ上昇しました。
安全性の高い債券でも一定の利回りを得られる環境になれば、投資家がREITへ求める条件も変わります。
分配金が安定しているというだけでは十分ではありません。
分配金が今後増えるのか。
保有不動産の価値が高まるのか。
資産を効率的に入れ替えているのか。
成長力まで問われるようになります。
不動産価格が上がってもREITが上がらない理由
現物不動産の価格が上昇しているのに、なぜREIT価格が低迷するのかという疑問があります。
ここにも金利が関係します。
現物不動産の価格が上昇すれば、REITが保有する不動産の価値も高くなる可能性があります。
その結果、NAVは増加することがあります。
しかし、同時に金利が上昇すると、投資家がREITに求める利回りも高くなります。
借入コストも増える可能性があります。
不動産価格には追い風でも、金融商品としてのREITには金利上昇が逆風になることがあるわけです。
これが現物不動産価格とREIT価格が必ずしも同じ方向に動かない理由です。
賃料を上げられるREITは違う
金利上昇局面でも、すべてのREITが同じ影響を受けるわけではありません。
重要なのが賃料を上げられるかどうかです。
物価上昇や景気拡大によって不動産賃料も上昇すれば、REITの収入が増える可能性があります。
金利負担が増えても、それ以上に賃料収入が増えれば利益を維持できます。
逆に、賃料をほとんど上げられないREITでは、金利負担だけが増えて収益が圧迫される可能性があります。
金利上昇時代には、単に現在の分配金を見るだけでなく、賃料を引き上げる力を見ることが重要になります。
物件売却も重要になる
REITが保有する不動産価格が大きく上昇している場合、低い収益しか生まない物件を売却するという選択肢があります。
売却によって得た資金を借入金の返済に使うこともできます。
投資主へ還元することもできます。
より高い収益が期待できる物件へ入れ替えることも考えられます。
2025年のJ REITによる物件譲渡額は8246億円となり、2024年より2割増えて過去最高となりました。
金利が上昇する時代には、不動産を持ち続けるだけではなく、資産を積極的に入れ替える経営が重要になります。
株式との競争もある
REITが競争する相手は債券だけではありません。
投資家は日本株や海外株にも投資できます。
成長企業であれば、利益の増加によって株価上昇を期待できます。
REITが安定した分配金だけを強調しても、成長性の高い株式へ資金が流れる可能性があります。
金利上昇によって債券の魅力が高まり、同時に株式には成長力で競争を挑まれる。
REITはその中間で、安定性と成長性の両方を示す必要があります。
金利上昇は悪いことだけではない
金利上昇が必ずREITに悪いとは限りません。
金利が上昇する背景に、物価上昇や経済成長がある場合があります。
企業業績が改善してオフィス需要が強まれば、賃料を上げられる可能性があります。
訪日客や国内旅行が増えれば、ホテル収益が伸びることもあります。
物流需要やデータセンター需要が拡大することも考えられます。
重要なのは、金利上昇そのものだけを見るのではなく、なぜ金利が上がっているのか、その環境でREITの収益も成長できるのかを見ることです。
結論
金利が上昇するとREITが下がりやすくなる理由は、大きく2つあります。
1つは、REIT自身の借入コストが上昇する可能性があることです。
もう1つは、債券など他の金融商品の利回りが上昇し、REITの分配金の相対的な魅力が低下することです。
債券利回りが上がれば、投資家はREITにもより高い利回りを求めます。
分配金が増えなければ、投資口価格が下落することで利回りが調整される場合があります。
日本の長期金利が3パーセント台へ上昇した現在、超低金利時代と同じ考え方でREITを評価することはできなくなっています。
これから重要になるのは、現在の分配金利回りだけではありません。
賃料を上げられるか。
借入コストを管理できるか。
低収益の物件を売却できるか。
新しい成長資産を取り込めるか。
長期金利3パーセント時代のREITには、安定した分配金に加えて、分配金そのものを成長させる力が求められるようになります。
参考
日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 不動産高騰でもREIT低迷
日本経済新聞 2026年9月15日 朝刊 よろい脱ぎ、時代に合った変革を