退職金で住宅ローンを一括返済してよいのか 老後資金とローン完済を同時に考える理由編

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住宅ローンが定年後まで残る場合、退職金で一括返済しようと考える人は少なくありません。

特に2階建て住宅ローンでは、元金の50%を最終返済日まで据え置く商品があります。

1億円を借りれば、最後に5000万円が残る計算です。

現役時代の毎月返済額を抑え、最後に退職金などのまとまった資金で返済する。

仕組みとしては分かりやすい方法です。

しかし、退職金は住宅ローンを返すためだけのお金ではありません。

退職後の生活を支える重要な金融資産でもあります。

住宅ローンを完済することと、老後の生活資金を確保することを同時に考える必要があります。

退職金で返済するメリット

退職金で住宅ローンを一括返済する最大のメリットは、負債をなくせることです。

例えば住宅ローン残高が3000万円あり、退職金から3000万円を返済すれば、その後は住宅ローン返済がなくなります。

毎月の家計から住宅ローンという固定的な支出が消えます。

さらに、その後に支払う予定だった利息も発生しなくなります。

現役時代より収入が減少する可能性がある老後に、毎月の固定費を小さくできることには大きな意味があります。

退職金は老後資金でもある

一方、退職金を住宅ローン返済に使えば、その分だけ手元の金融資産は減ります。

例えば退職金が4000万円あり、住宅ローン残高3000万円を一括返済するとします。

住宅ローンはゼロになります。

しかし退職金として残るのは1000万円です。

資産と負債の両方が3000万円ずつ減ったと考えることもできます。

問題は、その後の生活を1000万円と年金などで支えられるかです。

住宅ローンを完済したという事実だけでは、老後の家計が安全になったとは判断できません。

完済後にいくら残るかを見る

退職金で住宅ローンを返すときに重要なのは、いくら返せるかではありません。

返した後にいくら残るかです。

例えば退職金が5000万円あり、住宅ローンも5000万円残っているとします。

数字だけなら一括返済できます。

しかし全額を返済に使えば、退職金として受け取った現金はほぼ残りません。

自宅という資産は残りますが、日々の生活費を住宅そのもので支払うことはできません。

住宅を所有していても、手元の現金が不足することはあります。

この違いを理解しておく必要があります。

老後にも大きな支出はある

退職後は教育費などが減り、支出が小さくなる家庭もあります。

しかし、大きな支出がなくなるとは限りません。

自宅の修繕費が必要になる可能性があります。

マンションなら管理費や修繕積立金などの負担が続きます。

家電の買い替えなどもあります。

さらに年齢が上がれば、医療や介護に関連する支出が増える可能性もあります。

こうした支出に対応するためには、すぐに使える金融資産をある程度持っておく必要があります。

住宅ローンを残すリスクもある

だからといって、退職金を使わず住宅ローンをすべて残せばよいわけでもありません。

住宅ローンを残せば、その後も元金と利息を返済する必要があります。

現役時代より収入が減少する一方で、大きな住宅ローン返済が続けば家計を圧迫する可能性があります。

特に変動金利型なら、将来の金利上昇によって負担が変化する可能性も考える必要があります。

つまり、退職金を使うリスクと住宅ローンを残すリスクの両方があります。

一部だけ返済する方法もある

選択肢は全額返済するか、まったく返済しないかの2つだけではありません。

住宅ローンの一部だけを繰り上げ返済する方法もあります。

例えば退職金が4000万円、住宅ローン残高が3000万円あるとします。

3000万円をすべて返済するのではなく、1500万円だけ返済する方法も考えられます。

住宅ローン残高を減らしながら、手元にも2500万円を残すことができます。

どの程度返済するかは、住宅ローン金利や毎月返済額、年金収入、金融資産、今後の生活費などによって変わります。

重要なのは住宅ローンだけを切り離して考えないことです。

2階建て住宅ローンでは特に重要になる

2階建て住宅ローンでは、元金の大きな部分を最終返済日まで残します。

例えば1億円を借り、5000万円を据え置いたとします。

その5000万円を退職金で返す予定なら、住宅ローンを契約する段階から退職金の使い道を事実上決めていることになります。

しかし、数十年先の生活を正確に予測することはできません。

退職時期が変わるかもしれません。

退職金制度が変化する可能性もあります。

想定以上に老後資金が必要になることもあります。

そのため退職金だけを唯一の返済原資にする場合には、計画が崩れたときの対応も考えておく必要があります。

年金収入との関係を見る

退職後の家計では、毎月どれだけ年金などの収入があるかも重要です。

住宅ローンを完済すれば毎月の返済はなくなりますが、手元資金は減ります。

住宅ローンを残せば手元資金は多く残りますが、毎月の返済が続きます。

そこで退職後の年間生活費と年金などの年間収入との差額を確認します。

年金などで生活費の大部分を賄えるなら、必要な手元資金の考え方も変わります。

逆に毎年大きな赤字が発生するなら、退職金はその赤字を補う重要な資金になります。

自宅は資産でも現金ではない

住宅ローンを完済すると、自宅には借金がなくなります。

純資産という意味では安心感があります。

しかし、自宅は現金とは性格が違います。

10000万円のマンションを所有していても、銀行口座に10000万円あるわけではありません。

生活資金として利用するには、売却などによって現金化する必要があります。

老後では資産額だけではなく、必要なときに使えるお金がどれだけあるかという流動性も重要になります。

結論

退職金で住宅ローンを一括返済すれば、住宅ローンという負債をなくし、将来の利息負担や毎月返済額を減らすことができます。

一方で、退職金は老後生活を支える重要な金融資産です。

住宅ローンを完済するために退職金の大部分を使えば、手元資金が不足する可能性があります。

特に2階建て住宅ローンでは、1億円を借りれば5000万円という大きな元金が最後に残る場合があります。

その5000万円を退職金で返す計画なら、完済できるかだけを見るのでは不十分です。

完済した後に金融資産はいくら残るのか。

年金などの収入で生活費をどこまで賄えるのか。

医療、介護、住宅修繕などの支出に対応できるのか。

住宅ローンをゼロにすること自体を目的にするのではなく、住宅ローンを返した後も家計が安定していることが重要です。

退職金で住宅ローンを返済するときには、完済額ではなく完済後の家計を見る必要があります。

参考

日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 タワマン購入へ「2階建て」ローン、月々の負担減に落とし穴

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