貸付用不動産の三年ルールとは何か 財産評価編

税理士
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非上場株式の評価制度を見直す議論の中で、国税庁が具体的な評価額圧縮スキームとして取り上げたものの一つに、「貸付用不動産の三年ルール」を利用した手法があります。

不動産を購入して一定期間保有した後に株式を移転するという一連の取引は、一見すると通常の資産運用のように見えます。しかし、その目的が自社株評価の引下げだけにある場合には、制度の趣旨に反する利用となる可能性があります。

今回は、貸付用不動産の三年ルールとはどのような考え方なのか、なぜ有識者会議で問題視されたのかを解説します。


貸付用不動産とは

貸付用不動産とは、賃貸マンションやアパート、貸店舗、貸事務所など、第三者に貸し付けて賃料収入を得ることを目的とした不動産です。

企業が貸付用不動産を取得する理由には、

安定した賃料収入の確保

事業の多角化

資産運用

インフレへの備え

などがあります。

このような投資は企業経営の一環として広く行われており、それ自体に問題はありません。


三年ルールとは何か

非上場株式の評価では、会社が保有する資産の内容が株価に大きく影響します。

貸付用不動産については、一定期間保有することで、その評価に影響を及ぼす場合があります。

そのため、一部では、

貸付用不動産を取得する

一定期間保有する

その後に株式を移転する

という流れを利用して、自社株評価を引き下げようとする手法が考案されました。

有識者会議では、このような取引が評価額圧縮スキームの一例として紹介されています。


なぜ株価が変わるのか

非上場株式の評価では、会社の純資産が重要な判断要素となります。

貸付用不動産を取得すると、

資産構成

評価対象資産

純資産価額

などが変化します。

その結果、一定の条件の下では自社株評価に影響が生じることがあります。

本来は事業上の投資として行われるべき不動産取得が、評価額引下げだけを目的として利用される場合には、制度本来の趣旨とは異なる結果となります。


国税庁が問題視する理由

今回の有識者会議では、

「法人が貸付用不動産購入の3年経過後に株式を移転する」

という事例が具体的なスキームとして示されました。

問題とされているのは、

不動産投資そのものではありません。

問題なのは、

株価引下げだけを目的として取得する

事業上の必要性が乏しい

取得から株式移転までが一連の計画となっている

というケースです。

会社の経済的実態がほとんど変わらないにもかかわらず、評価制度だけを利用して税負担を軽減することは、制度の公平性を損なう可能性があります。


不動産投資は本来重要な経営判断

企業が貸付用不動産を取得することには、多くのメリットがあります。

例えば、

安定収益の確保

遊休資金の有効活用

資産の分散

将来のインフレ対策

などです。

これらは企業価値を高める経営判断であり、税務上も当然認められるべきものです。

したがって、不動産取得そのものが問題なのではなく、その目的や経済合理性が重要になるのです。


実態重視の考え方がさらに重要に

近年の税務行政では、「形式」ではなく「実態」を重視する方向が強まっています。

貸付用不動産についても、

長期保有を前提としているか

安定収益を目的としているか

経営戦略の一部として位置付けられているか

などが重要になります。

一方で、

評価額引下げだけが目的

短期間で計画的に株式移転を行う

事業上の説明が難しい

という場合には、制度見直しの対象となる可能性があります。


税理士が留意したいポイント

貸付用不動産の取得を提案する際には、

投資採算性

資金計画

事業目的

税務リスク

事業承継との関係

を総合的に検討する必要があります。

税負担だけに着目した提案ではなく、企業価値向上につながる資産運用として説明できることが重要です。

今後制度改正が行われれば、これまで有効だった評価手法が見直される可能性もあるため、最新の動向を継続的に確認することも欠かせません。


結論

貸付用不動産の三年ルールを利用した株価対策が問題視されるのは、不動産投資そのものではなく、貸付用不動産の取得から株式移転までを一連の評価額圧縮策として利用するケースがあるためです。

企業による不動産投資は、安定収益の確保や資産運用など、経営上重要な役割を果たします。しかし、その目的が税負担の軽減だけに偏る場合には、制度の趣旨に反する可能性があります。

今後の非上場株式評価制度では、個別の取引だけでなく、一連の経営判断全体を踏まえた実態重視の評価がさらに進むことが予想されます。事業承継を考える企業や税理士には、短期的な評価額対策ではなく、企業価値を高める長期的な資産戦略が求められる時代になっているといえるでしょう。


参考

税のしるべ 2026年7月13日号(1面)

取引相場のない株式の評価に関する有識者会議に現評価方法を濫用したスキーム8事例、次回8月の会合に議論の「たたき台」を提示

国税庁「財産評価基本通達」

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