設備投資税制はなぜ投資前の確認が重要なのか 購入してからでは間に合わない制度がある理由編

税理士
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設備投資税制というと、設備を購入した後、決算や法人税申告のときに検討する制度だと思われがちです。

しかし、令和8年度税制改正で創設された大胆な投資促進税制を見ると、その考え方では対応が遅くなる可能性があります。

同制度では、対象設備の種類や取得価額だけでなく、産業競争力強化法に基づく確認、設備の取得等、事業供用など複数の要件が関係します。

さらに、確認を受ける期間も定められています。

設備を購入してから税務部門が税制を調べるのではなく、設備投資を計画した段階から税制を確認することが重要です。

税務申告は設備投資の最後にある

設備投資には長い時間がかかります。

まず、どのような設備が必要なのかを検討します。

投資採算を計算します。

メーカーを選びます。

契約します。

設備を発注します。

設備が完成すれば納品を受けます。

据付工事や試運転を行います。

そして事業で使用を開始します。

法人税申告はその後です。

つまり、税務申告は設備投資プロセスのかなり後ろにあります。

申告書を作成する段階で初めて税制を調べても、それ以前に必要だった手続きには戻れない可能性があります。

大胆な投資促進税制では事前の確認が重要になる

大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法に規定する特定生産性向上設備等に該当することなどが重要になります。

また、改正産業競争力強化法の施行日である令和8年7月31日から令和11年3月31日までの間に確認を受けることが制度上の時間軸に組み込まれています。

この確認は、法人税申告書を提出するときだけ考えればよいものではありません。

投資計画そのものと結び付いています。

どの設備を導入するのかを決める段階から、制度の対象となる可能性を確認しておく必要があります。

契約する前に確認したいことがある

設備投資では、契約を締結すると簡単には内容を変更できません。

そのため、契約前の段階で税制上の論点を洗い出しておくことが重要です。

どの設備が対象になるのか。

生産等設備に該当するのか。

特定生産性向上設備等として要件を満たすのか。

取得価額はいくらになるのか。

補助金を利用するのか。

圧縮記帳を行うのか。

設備を自社で使用するのか、それとも委託先へ貸与するのか。

こうした事項によって税制の適用関係が変わる可能性があります。

設備の発注時期も投資計画に影響する

大型設備は、発注してすぐ納品されるとは限りません。

特殊な製造機械では、完成まで長期間かかることがあります。

工場建設なら数年単位のプロジェクトになることもあります。

大胆な投資促進税制では、確認を受けた後の取得等と事業供用についても時間軸があります。

そのため、

確認予定日

契約予定日

発注予定日

取得予定日

据付予定日

事業供用予定日

を一つのスケジュールとして管理する必要があります。

単に設備がいつ届くかだけを管理すればよいわけではありません。

取得価額は購入後に初めて分かるものではない

設備投資税制では取得価額も重要です。

しかし、大規模な生産ラインでは複数の設備や工事が組み合わされます。

建物があります。

建物附属設備があります。

構築物があります。

機械装置があります。

器具備品があります。

ソフトウエアが含まれることもあります。

経営上は一つの大型投資でも、税務上は複数の資産として整理する必要があります。

そのため、契約や発注の段階から資産区分と取得価額を整理しておくと、後の税制判定がしやすくなります。

委託先への設備貸与も事前に考える

今回の国税庁通達では、委託先へ貸与する設備についても重要な取扱いが示されています。

設備が専らその法人のためにする製品の加工等に使用される場合には、その法人の事業の用に供したものとして取り扱われます。

ここでも事前の契約設計が重要になります。

設備を委託先が自由に利用できる契約にするのか。

自社製品専用の設備とするのか。

実際にどのように使用するのか。

設備を取得した後で税制の存在を知っても、すでに契約や運用方法が決まっている場合があります。

税務と契約は切り離して考えられません。

補助金を使う場合はさらに早い検討が必要になる

設備投資では補助金を利用することもあります。

補助金には申請期限や対象経費など独自の要件があります。

さらに、補助金を受けた設備について圧縮記帳を行えば、税務上の取得価額との関係も問題になります。

大胆な投資促進税制では、圧縮記帳を適用した場合の取得価額要件の判定についても通達が設けられています。

補助金を申請する部門と税務を担当する部門が別々に動くのではなく、設備投資全体として検討することが重要です。

即時償却と税額控除も投資前に比較する

大胆な投資促進税制では、一定の要件を満たす設備について即時償却または税額控除を選択できます。

機械装置などでは取得価額の7%、建物、建物附属設備、構築物では4%相当額の税額控除が設けられています。

即時償却は、通常なら将来計上する減価償却費を早期に計上することで、投資初期の税負担を抑える効果があります。

税額控除は法人税額を直接減らす仕組みです。

どちらが適しているかは、現在の利益、将来利益、法人税額、資金繰りなどによって変わります。

設備購入後ではなく、投資採算を計算する段階で両方を比較しておくことが重要です。

税務部門を最後に呼ぶ仕組みを変える

企業では、事業部門が設備投資を決定し、契約や購入が終わってから経理部門へ固定資産登録の依頼が届くことがあります。

通常の設備購入なら、それでも処理できる場合があります。

しかし、事前確認や期限が関係する税制では、この流れでは遅い可能性があります。

設備投資の検討を開始した時点で、

事業部門

設備部門

購買部門

経理部門

税務部門

法務部門

などが情報を共有する仕組みが必要になります。

税務部門の役割を申告書作成だけに限定しないことが重要です。

投資案件ごとに税制チェックを行う

実務では、一定額以上の設備投資について税制チェックを行う仕組みをつくる方法も考えられます。

設備投資の稟議書を作成するときに、利用可能な補助金や税制がないか確認します。

対象になりそうであれば、契約や発注を行う前に詳細を調べます。

設備取得後には事業供用日を確認します。

決算時には必要な資料がそろっているか確認します。

このように税制確認を設備投資の業務フローに組み込めば、制度を後から知るリスクを減らすことができます。

結論

設備投資税制は、決算時に節税策を探すためだけの制度ではありません。

特に大胆な投資促進税制では、産業競争力強化法に基づく確認、対象設備、取得価額、取得時期、事業供用、貸付けの取扱いなど複数の要件が関係します。

さらに、即時償却と税額控除のどちらを選択するかによって、投資後のキャッシュフローも変わります。

そのため、設備を購入してから税制を検討するのでは遅くなる可能性があります。

投資計画を立てる。

税制を確認する。

必要な確認手続きを行う。

契約する。

設備を取得する。

事業の用に供する。

そして法人税申告で税制を適用する。

この一連の流れを最初から設計することが重要です。

設備投資税制を上手に活用できるかどうかは、申告書を作るときではなく、設備投資を検討し始めた時点から決まっているともいえます。

大胆な投資促進税制をきっかけに、税務を設備購入後の処理から投資前の経営判断へ組み込んでいくことが重要になります。

参考

税のしるべ 2026年9月14日 8年度法人税関係法令の改正対応で措置法通達、大胆な投資促進税制関係など

国税庁 2026年9月4日 租税特別措置法関係通達 法人税編 の一部改正について

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