第二次納税義務とは何か 本人以外が滞納税金を払うことになる仕組み編

税理士
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税金は、税金を負担すべき本人が納めるのが原則です。

所得税であれば所得を得た人、法人税であれば利益を上げた法人が納税義務を負います。

ところが、税金を滞納している人が自分の財産を家族へ贈与したり、会社の財産を関係者へ移したりした結果、本人から税金を徴収できなくなることがあります。

このような場合に、一定の要件を満たす第三者に対して、滞納者本人に代わって税金を納める責任を負わせる制度があります。

それが「第二次納税義務」です。

名前だけを見ると特殊な制度に思えますが、親族間の財産移転、会社の清算、事業譲渡、同族会社など、さまざまな場面で問題となる可能性があります。

特に重要なのは、第二次納税義務が単純に「家族だから税金を肩代わりする」という制度ではないことです。

どのような場合に本人以外の人が税金を払うことになるのか、その仕組みを見ていきます。

本来の納税義務と何が違うのか

まず理解しておきたいのが、本来の納税義務と第二次納税義務の違いです。

例えば、父親が所得税を滞納しているとします。

所得を得て所得税を負担するのは父親です。

したがって、本来の納税義務者は父親です。

その子どもが同居しているからといって、当然に父親の所得税を納める義務が生じるわけではありません。

親子であることだけを理由として、子どもに第二次納税義務が発生するわけでもありません。

第二次納税義務は、国税徴収法が定める一定の要件を満たした場合に初めて成立します。

つまり、本来の納税義務とは別の法律上の根拠によって発生する納税義務なのです。

国税庁も、主たる納税義務と第二次納税義務は法律上それぞれ別個の納税義務であるとしています。

ただし、両者は完全に独立しているわけではありません。

第二次納税義務には、主たる納税義務に対する「付従性」と「補充性」があります。

なぜ第三者に税金を負担させるのか

なぜ、自分が発生させたわけでもない税金を第三者が払わなければならないのでしょうか。

第二次納税義務を理解するうえでは、この制度趣旨が重要です。

例えば、1000万円の税金を滞納している人が、所有している2000万円の土地を子どもへ贈与したとします。

土地を所有したままであれば、税務署はその土地を差し押さえ、公売することで滞納税金を徴収できた可能性があります。

ところが、土地を子どもへ贈与してしまえば、滞納者本人の財産は減少します。

その結果、税金を徴収できなくなる可能性があります。

このような財産移転を認めたままでは、財産を持ち続けた滞納者と、家族などへ財産を移した滞納者との間で不公平が生じます。

そこで一定の場合には、財産移転などによって利益を受けた人にも、補充的に納税責任を負わせるわけです。

国税不服審判所も、国税徴収法39条について、無償譲渡などによって利益を受けた第三者に納付義務を補充的に負わせることにより、国税の徴収確保を図る制度であるとの考え方を示しています。

第二次納税義務には補充性がある

ここで重要なのが「補充的」という言葉です。

第二次納税義務者は、本来の納税義務者と最初から同じ立場で税金を負担するわけではありません。

あくまで主たる納税義務者の税金について、その徴収を確保するために責任を負う立場です。

そのため第二次納税義務は、主たる納税義務に対して補充性を持っています。

国税庁も、第二次納税義務について主たる納税義務に対する付従性と補充性があると整理しています。

「第二次」という名称も、この性質を表していると考えると分かりやすいでしょう。

国税徴収法32条はどのような仕組みなのか

第二次納税義務の手続について基本となるのが国税徴収法32条です。

第二次納税義務そのものは、国税徴収法33条から41条までに定められたそれぞれの要件を満たすことによって成立します。

そして税務署などが実際に第二次納税義務者から税金を徴収しようとするときには、納付通知書による告知が行われます。

納付通知書には、徴収しようとする金額や納付期限などが記載されます。

国税庁は、この告知について、すでに抽象的に成立している第二次納税義務を具体的に確定する性質を持つものと説明しています。

したがって、

滞納者本人に税金がある

第二次納税義務の法律上の要件を満たす

第二次納税義務が成立する

納付通知書による告知が行われる

という流れで理解すると分かりやすくなります。

第二次納税義務にはいくつもの種類がある

第二次納税義務というと、滞納者から財産を贈与された人に課される制度という印象が強いかもしれません。

しかし、それだけではありません。

国税徴収法33条から41条には、さまざまな第二次納税義務が規定されています。

例えば、清算人等の第二次納税義務、同族会社の第二次納税義務、共同的な事業者の第二次納税義務、事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務などがあります。

そして、今回の公表裁決で問題となったのが、国税徴収法39条の「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」です。

第二次納税義務は一つの制度ではありますが、その成立要件は対象となるケースによって異なるのです。

家族が対象になる代表例が財産の贈与である

個人にとって特に注意したいのが、家族への財産贈与です。

国税徴収法39条では、滞納者の国税について徴収不足が生じ、その徴収不足が一定期間内に行われた無償譲渡などに基因すると認められる場合、利益を受けた人に第二次納税義務が生じることがあります。

典型例が贈与です。

土地

建物

現金

預金

株式

その他の財産

などを家族へ贈与した場合が考えられます。

国税不服審判所でも、滞納者から第三者への金銭の振込みが国税徴収法39条の無償譲渡に当たるとされた事例があります。

したがって、「不動産を名義変更した場合だけの問題」と考えるべきではありません。

生活費を渡しただけでも対象になるのか

もっとも、家族にお金を渡せば何でも第二次納税義務につながるわけではありません。

例えば、夫婦や親子には扶養義務があります。

国税徴収法基本通達では、滞納者が生計を一にする親族の生活費や学費などに充てるために行った、社会通念上相当と認められる範囲の金銭や物品の交付については、39条の無償譲渡には当たらないという考え方が示されています。

国税不服審判所もこの取扱いを相当と認めています。

重要なのは「生活費と言えば何でも除外される」という意味ではないことです。

実態や金額などから、社会通念上相当な範囲なのかが問題になります。

実際に、将来の生活費や学費の前払いだと主張された送金について、39条の無償譲渡に該当するとされた裁決もあります。

贈与だけではなく低額売買も問題になる

注意したいのは、財産をただで渡す贈与だけが対象ではないことです。

国税徴収法39条は、無償による譲渡だけでなく、「著しく低い額の対価による譲渡」なども対象としています。

例えば、本来3000万円程度の価値がある不動産を親族へ極端に安い価格で売却すれば、形式上は売買であっても問題になる可能性があります。

「贈与ではなく売買契約にしておけば大丈夫」という単純な話ではありません。

実質的に第三者へ利益を移転したのかどうかを見る必要があります。

この点は、同族会社と経営者、親会社と子会社、親族間などの取引でも重要になります。

家族だから責任が重くなる場合がある

国税徴収法39条には、さらに重要な特徴があります。

通常の第三者については、原則として無償譲渡などによって受けた利益が「現に存する限度」が第二次納税義務の範囲となります。

これに対して、財産を受けた人が処分時に滞納者の親族その他の特殊関係者だった場合には、「受けた利益の限度」とされています。

この違いは重要です。

親族などの特殊関係者については、受け取った利益がその後そのまま残っているかという問題とは別に、受けた利益そのものを基準として責任範囲が考えられるからです。

家族への財産移転について国税徴収法上の注意が必要な理由の一つです。

第二次納税義務は家族だから発生するわけではない

一方で誤解してはいけないのは、親が税金を滞納しているだけで子どもに第二次納税義務が生じるわけではないということです。

例えば国税徴収法39条では、単に親族であることではなく、

滞納者による無償譲渡等の処分があったこと

その処分が一定の期間内に行われていること

滞納国税について徴収不足が認められること

その徴収不足が無償譲渡等に基因すると認められること

などが重要になります。

国税不服審判所も、39条の成立要件として、徴収不足、一定期間内の無償譲渡等、その処分と徴収不足との因果関係を示しています。

したがって、第二次納税義務の問題では、親族関係だけでなく、財産移転の時期、内容、対価、滞納状況などを総合的に確認する必要があります。

納税義務者本人だけを見ていては分からない制度である

通常の税務では、「誰に所得が帰属するのか」「誰が財産を取得したのか」といった本来の納税義務者を中心に考えます。

第二次納税義務では、さらに一歩踏み込む必要があります。

滞納者の財産がどこへ移ったのか。

誰が利益を受けたのか。

なぜ税金を徴収できなくなったのか。

利益を受けた人と滞納者にはどのような関係があるのか。

こうした財産移転の流れを追跡することになります。

その意味で第二次納税義務は、税額を計算する「課税」の問題というよりも、確定した税金をどのように確保するのかという「徴収」の世界に属する制度といえます。

結論

第二次納税義務とは、本来の納税義務者が税金を滞納している場合に、国税徴収法が定める一定の要件を満たす第三者に対して、その滞納国税について補充的な納税責任を負わせる制度です。

親子や夫婦だからという理由だけで、家族の滞納税金を負担するわけではありません。

一方、滞納者が財産を家族へ贈与したり、著しく低い価格で譲渡したりした結果、国税を徴収できなくなった場合には、財産を受け取った家族に第二次納税義務が生じる可能性があります。

特に国税徴収法39条は、滞納者から第三者への財産移転と国税の徴収確保を結びつける重要な規定です。

前回取り上げた公表裁決で、父親から土地の贈与を受けた長男が第二次納税義務を負うことになった背景にも、この仕組みがあります。

そして次に重要になるのが、「どのような贈与や低額譲渡であれば国税徴収法39条が適用されるのか」という問題です。

第二次納税義務を理解するためには、単に「誰が税金を滞納したか」だけでなく、「滞納者の財産が誰に、どのような形で移転したか」を見ることが重要なのです。

参考

税のしるべ 2026年8月3日 【公表裁決】原処分庁の主張額は審判所依頼の鑑定評価額の範囲内、処分は適法

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