親が亡くなり、実家を相続したものの、自分はすでに別の地域に自宅を持っている。このようなケースは珍しくありません。
すぐに売却するわけでもなく、誰かに貸すわけでもないまま実家を残していると、その住宅は空き家になっていきます。
大阪府寝屋川市が導入を進める空き家税が注目される理由の一つが、こうした市場に出てこない住宅を動かそうとしていることです。
では、空き家税が導入されると誰が負担することになるのでしょうか。
空き家税を負担するのは住宅の所有者
基本的に空き家税の対象として想定されるのは、空き家を所有している人です。
典型的なのが、親から実家を相続した子どもです。
例えば大阪にある親の家を相続したものの、子どもは東京に住んでいるとします。
自分が大阪へ戻る予定はなく、実家を売却する予定も賃貸する予定もない場合、その住宅は長期間使われない可能性があります。
こうした住宅を市場へ戻すことが空き家税の大きな狙いです。
相続した実家が空き家になりやすい理由
相続したからといって、すぐに実家を処分できるとは限りません。
まず家の中に残された家財道具を整理する必要があります。
土地や建物の名義変更も必要です。
さらに売却するのであれば不動産会社への相談や価格査定、修繕の必要性なども検討しなければなりません。
思い出の詰まった実家を売却することに心理的な抵抗を感じる人もいるでしょう。
そのため、とりあえずそのまま残すという判断になりやすいのです。
空き家を持っているだけで課税されるわけではない
ここで注意したいのは、住宅が一時的に空いているからといって、すべて空き家税の対象になるわけではないということです。
例えば転勤によって一時的に自宅を離れているケースがあります。
数年後に戻って再び住む予定があるのであれば、売却や賃貸を求めることは適切ではありません。
入院や施設への一時的な入所などによって住宅を離れている場合も考えられます。
重要なのは、なぜその住宅が使われていないのかという事情です。
単純に人が住んでいないという事実だけで判断する制度ではありません。
問題になるのは市場に出ない住宅
空き家には大きく分けて性質の異なる住宅があります。
入居者を募集している賃貸住宅も空き家として統計に含まれる場合があります。
売却中の中古住宅も同様です。
これらは現在人が住んでいなくても、次の利用者を探している住宅です。
一方、売却にも賃貸にも出されず、利用予定も明確ではない住宅があります。
寝屋川市が特に市場へ流通させたいと考えているのが、このような住宅です。
寝屋川市では約6000戸が市場に出ていない
寝屋川市には約1万6,000戸の空き家があります。
そのうち、売却にも賃貸にも出されていない住宅は約6,000戸とされています。
市内には新たな住宅地として開発できる土地がほとんど残っていません。
それにもかかわらず、既存住宅が使われないまま残っているわけです。
若い世代が住宅を探している一方で、利用できる可能性のある住宅が市場に出てこないというミスマッチが起きています。
年間数万円の負担で所有者に判断を促す
寝屋川市の空き家税は、固定資産税額の3割から4割程度を目安としています。
一般的な住宅の場合、年間数万円程度の負担増になるとされています。
重要なのは、この金額そのものではありません。
毎年負担が発生することによって、所有者が住宅の将来について考えるきっかけをつくることです。
そのまま保有するのか。
自分や家族が住むのか。
売却するのか。
誰かに貸すのか。
あるいは建物を取り壊すのか。
空き家税は、先送りされやすい判断を所有者に促す仕組みといえます。
税収より行動変容が目的
通常、税金というと行政サービスを支える財源というイメージがあります。
しかし空き家税では少し考え方が異なります。
寝屋川市が重視しているのは税収ではなく、所有者の行動変容です。
極端にいえば、空き家税によってすべての対象住宅が売却や賃貸などに動き、税収が減少したとしても、政策目的には近づいたことになります。
税金を集めることではなく、税金をきっかけとして住宅を動かすことが目的だからです。
相続した瞬間から出口を考える時代へ
これまで実家を相続した場合、とりあえず保有しておくという選択も珍しくありませんでした。
しかし全国で空き家が増加する中、住宅を利用しないまま長期間保有することへの政策的な対応は強まっています。
今後は実家を相続した段階から、その住宅をどうするのかを考える必要性が高まりそうです。
自分が住むのか。
家族が使うのか。
貸すのか。
売るのか。
解体するのか。
相続は財産を受け取る手続きだけではなく、不動産の将来を決める出発点にもなります。
結論
空き家税で重要なのは、単に空き家を所有している人へ新しい税負担を求めることではありません。
特に問題となるのは、利用予定が明確ではなく、売却にも賃貸にも出されないまま眠っている住宅です。
親から実家を相続したものの、自分は別の場所に住んでいるというケースは、今後ますます増える可能性があります。
空き家税が導入されれば、住宅をそのまま保有することにも新たなコストが生じます。
相続した不動産について、何もしないという選択を続けるのではなく、住む、貸す、売る、解体するといった出口を早い段階から考えることが、これまで以上に重要になっていきそうです。
参考
日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 直言 眠る空き家、若者に回せ