空き家特例の築年要件はなぜ見直されるのか 対象住宅を広げる税制改正要望編

税理士
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相続した実家を売却した場合に、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3000万円を控除できる空き家特例があります。

空き家の発生を抑えるために設けられた制度ですが、どの住宅でも利用できるわけではありません。

その代表的な条件の一つが築年要件です。

現行制度では、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象とされています。

令和9年度税制改正要望では、国土交通省がこの築年要件の緩和を求めています。

なぜ今、築年要件を見直す必要があるのでしょうか。

なぜ昭和56年5月31日以前なのか

現在の空き家特例には、昭和56年5月31日以前に建築された家屋という要件があります。

この日付には意味があります。

昭和56年は、建築物の耐震基準が大きく変わった時期です。

一般に昭和56年6月1日以降に適用される基準を新耐震基準、それ以前の基準を旧耐震基準と呼びます。

相続によって古い住宅が空き家となり、そのまま放置されることを防ぐという制度の成り立ちから、旧耐震基準の住宅を念頭に築年要件が設けられています。

制度が続けば対象住宅は減っていく

ここで時間の経過という問題が出てきます。

昭和56年5月31日以前に建築された住宅は、年を追うごとに築年数が古くなります。

建て替えや解体が進めば、対象となる住宅そのものも減っていきます。

一方、空き家になる住宅がなくなるわけではありません。

昭和56年6月以降に建築された住宅も高齢化していき、その所有者が亡くなれば相続によって空き家になる可能性があります。

つまり、空き家問題の中心となる住宅は時間とともに変わっていきます。

制度創設時の築年要件を固定したままでは、実際に発生する相続空き家と制度の対象にずれが広がる可能性があります。

新耐震だから空き家問題がないわけではない

新耐震基準で建築された住宅であっても、所有者が亡くなり、相続人が利用しなければ空き家になります。

空き家問題は耐震性能だけで発生するものではありません。

親は地方の実家に住み、子どもは進学や就職をきっかけに都市部で生活する。

子どもがすでに自宅を購入していれば、親の家を相続しても戻って暮らす可能性は低くなる場合があります。

こうした世帯では、住宅の建築時期にかかわらず相続を契機として空き家が発生します。

そのため、空き家発生の抑制という制度目的から考えれば、築年要件をどこまで残すべきかが問題になります。

国土交通省は築年要件の緩和を要望

令和9年度税制改正要望では、国土交通省が空き家の発生を抑制するための特例措置について4年間の延長と拡充を求めています。

拡充項目の一つが築年要件の緩和です。

現行の昭和56年5月31日以前という条件を見直すことで、より多くの相続空き家を制度の対象にできる可能性があります。

ただし、税制改正要望の段階ですので、具体的にどの年代の住宅まで対象になるのかが確定したわけではありません。

要望と決定を区別して見る必要があります。

対象を広げると税制の効果も広がる

築年要件が緩和されれば、これまで対象外だった住宅についても3000万円特別控除を利用できる可能性が出てきます。

売却時の税負担が軽減されれば、利用予定のない住宅を早い段階で売却する判断を後押しする効果が考えられます。

空き家が市場に出れば、新しい所有者が住宅として利用したり、土地を別の用途に活用したりすることもできます。

税制によって不動産の流通を促し、管理されない空き家を増やさないという考え方です。

対象を広げればよいだけではない

一方で、築年要件を緩和すれば税制優遇の対象も広がります。

本来なら特例がなくても売却される住宅まで控除の対象になれば、その部分については税収が減る一方で追加的な政策効果が小さい可能性があります。

税制上の特例を設ける以上、空き家の発生抑制という政策目的にどの程度効果があるのかを考える必要があります。

対象を狭くすれば制度を利用できない空き家が増えます。

対象を広くすれば税制優遇の範囲が大きくなります。

どこに線を引くのかが制度設計の重要なポイントです。

適用件数はすでに増えている

税のしるべの記事によると、令和6年度の空き家特例の適用件数は1万6604件でした。

前年度比で21.2パーセント増えています。

制度が実際に多くの相続人に利用されていることが分かります。

今後さらに相続が増えれば、比較的新しい住宅についても空き家対策が必要になる可能性があります。

築年要件の見直しは、将来の相続空き家をどこまで税制の対象にするのかという問題でもあります。

実家の築年を確認しておく

空き家特例を考える場合、相続が発生してから初めて実家の資料を探すのではなく、事前に建築時期などを確認しておくことも重要です。

不動産の登記事項証明書などから建築時期を確認できる場合があります。

さらに、相続後に売却するのであれば、築年要件以外にもさまざまな適用条件を確認する必要があります。

3000万円という控除額だけを見て、相続した実家なら当然利用できると思い込まないことが大切です。

空き家税制は社会の変化に合わせる必要がある

税制には、制度が作られた時点では合理的だった条件が、時間の経過によって実態と合わなくなることがあります。

空き家特例の築年要件は、その分かりやすい例です。

昭和56年以前の古い住宅を中心に考えていた制度でも、時間が経てば昭和60年代、平成に建てられた住宅も相続の対象になっていきます。

空き家対策を長期的に続けるのであれば、住宅ストックの高齢化に合わせて制度の対象も検討する必要があります。

結論

相続空き家の3000万円特別控除では、現行制度上、原則として昭和56年5月31日以前に建築された家屋という築年要件があります。

しかし、時間の経過とともに相続によって空き家になる住宅の年代も新しくなっています。

新耐震基準の住宅だからといって、相続後に空き家にならないわけではありません。

そこで令和9年度税制改正要望では、国土交通省が築年要件の緩和を求めています。

重要なのは、古い住宅を優遇することそのものではなく、利用されない住宅を長期間放置せず、売却などを通じて次の利用につなげることです。

築年要件の見直しが実現するのか、そしてどこまで対象が広がるのか。

相続した実家の処分を考える人にとって、令和9年度税制改正の注目点の一つになります。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 各省庁の9年度税制改正要望が出そろう、エッセンシャルサービス確保の特例に税制上の軽減措置を

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