税理士は人手不足時代の経営参謀になれるのか 未来戦略編

人生100年時代

中小企業経営者の悩みが変わっています。

かつては売上不足や資金繰りが最大の課題でした。

しかし現在、多くの経営者が最も頭を悩ませているのは人材不足です。

求人を出しても応募がない。

採用しても定着しない。

ベテラン社員が高齢化している。

後継者候補が育たない。

このような状況の中で、経営者は日々難しい判断を迫られています。

そして、その相談相手として期待される存在が税理士です。

税理士は単なる税金の専門家なのでしょうか。

それとも人手不足時代の経営参謀になれるのでしょうか。

税理士の未来を考える上で重要なテーマです。

経営課題の中心がお金から人へ移った

高度経済成長期やバブル崩壊後の時代には、多くの企業が資金不足に悩みました。

銀行融資を受けられるか。

資金繰りは大丈夫か。

設備投資は可能か。

税理士はこうした課題に対して大きな役割を果たしてきました。

しかし現在は状況が変わっています。

金融機関には資金があります。

補助金や助成金制度も充実しています。

一方で働く人は減少しています。

仕事があっても人がいない。

設備があっても人がいない。

顧客がいても対応する人がいない。

経営課題の中心は「お金不足」から「人不足」へ移行しているのです。

税理士は企業の実態を最も知る専門家

税理士は毎月の試算表や決算書を確認しています。

数字の裏側には企業の実態が表れています。

売上高。

利益率。

人件費。

採用費。

外注費。

残業代。

これらを長年見続けている税理士は、経営者自身が気付いていない問題を発見できる場合があります。

例えば、

人件費が急増している。

外注費が増え続けている。

教育費が減少している。

一人当たり売上高が低下している。

こうした変化は、人材不足や組織の問題を示しているかもしれません。

税理士は数字を通じて企業の健康状態を診断する立場にあります。

人材不足は数字だけでは解決できない

もちろん税理士が採用活動を代行するわけではありません。

人事制度を設計するわけでもありません。

しかし経営者と定期的に対話する中で、多くの課題を共有できます。

「最近、人が辞めて困っている」

「若手が定着しない」

「後継者候補が育たない」

こうした相談は決して珍しくありません。

重要なのは、税理士が人材問題を経営課題として認識することです。

経営者が抱える問題の本質を理解しなければ、適切な助言はできません。

数字を見るだけではなく、その背景にある組織や人材の課題にも目を向ける必要があります。

経営参謀とは答えを出す人ではない

経営参謀というと、万能のコンサルタントをイメージする人もいます。

しかし実際にはそうではありません。

経営参謀とは、経営者と一緒に考える存在です。

経営者に気付きを与える。

問題を整理する。

選択肢を示す。

必要に応じて専門家につなぐ。

これが本来の役割です。

税理士は毎月顧問先と接するため、経営者との信頼関係を築きやすい立場にあります。

だからこそ、経営者が本音を話せる相談相手になれる可能性があります。

AI時代に税理士の価値はどこにあるのか

近年はAIやクラウド会計が急速に進化しています。

記帳業務。

集計作業。

申告書作成。

こうした業務は今後さらに自動化されるでしょう。

しかし経営者の悩みは自動化できません。

人材不足。

事業承継。

組織改革。

将来戦略。

これらは人間同士の対話を必要とします。

AIが数字を分析する時代だからこそ、税理士には経営者と向き合う役割が求められるようになります。

税理士の価値は計算能力ではなく、経営者との対話力へ移っていくのかもしれません。

人生100年時代の税理士像

人生100年時代には企業経営も大きく変わります。

高齢社員の活躍。

副業人材の活用。

障害者雇用。

外国人材の受け入れ。

人的資本経営。

こうしたテーマが重要になります。

税理士も変化が求められます。

税金だけを語る専門家ではなく、経営者の未来を一緒に考える伴走者です。

顧問先の利益だけでなく、

顧問先の人材。

組織。

事業承継。

企業価値。

これらを総合的に考える存在へ進化できるかが問われています。

結論

人手不足時代の経営課題は、もはや税務や会計だけでは解決できません。

企業にとって最も重要な経営資源は人材になりつつあります。

税理士は企業の数字を最も深く理解している専門家です。

その強みを生かし、人材や組織の課題にも目を向けることで、経営者の真の相談相手になれる可能性があります。

これからの税理士に求められるのは、申告書を作る専門家ではなく、経営者と未来を考える経営参謀です。

人手不足という大きな経営課題に向き合う中で、税理士の役割もまた大きく変わろうとしているのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 朝刊 2026年6月23日

「障害者雇用の義務化50年 法定雇用率の運用見直しを」

中島隆信・慶應義塾大学名誉教授(経済教室)

タイトルとURLをコピーしました