国の財源というと、所得税や法人税、消費税などの税金を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、国には税金以外にもさまざまな収入があります。
それが税外収入です。
政府が保有する資産から得る収入や国有財産の売却収入、特別会計から一般会計へ繰り入れるお金など、その内容はさまざまです。
政府は2027年4月から2年間実施する食料品の消費税減税について、赤字国債に頼らず財源を確保する方針を示しています。その候補として注目されているのが、外国為替資金特別会計の剰余金などの税外収入です。
税金を増やさず、国債も増やさずに財源を確保できるのであれば魅力的に見えます。
しかし、税外収入には税収とは異なる特徴があります。
税外収入とは何か
税外収入とは、国が税金以外の方法で得る収入の総称です。
国の一般会計を大きく見ると、歳入には、
租税及び印紙収入
公債金
その他収入
などがあります。
このうち税収や国債発行による収入とは別に、政府がさまざまな活動や資産などから得る収入があります。
一般にこうしたものが税外収入と呼ばれます。
家計に例えるなら、毎月の給与が税収に近いとすれば、保有資産から得る収益や資産売却代金などが税外収入に近いイメージです。
税外収入にはさまざまな種類がある
税外収入は一つの制度ではありません。
政府が保有する資産などから生じる収入には、さまざまなものがあります。
例えば、
国有財産に関係する収入
政府が保有する株式などに関係する収入
特別会計から一般会計への繰入れ
各種の手数料など
があります。
重要なのは、すべての税外収入が毎年同じように得られるわけではないことです。
安定的に入るものもあれば、その年度だけ大きな金額が発生するものもあります。
したがって税外収入を見るときには、単純な金額だけではなく、その収入が継続的なものか一時的なものかを確認する必要があります。
特別会計とは何か
税外収入を理解するうえで重要なのが特別会計です。
国の基本的な収入と支出を管理するのが一般会計です。
これとは別に、特定の事業や特定の資金の流れを区分して管理するために設けられているのが特別会計です。
特別会計では、それぞれの目的に応じて収入と支出を管理します。
そして特別会計の財政状況によっては、そこから一般会計へ資金が繰り入れられることがあります。
この繰入金も一般会計にとって重要な収入になります。
今回の消費税減税で注目されている外国為替資金特別会計もその一つです。
外為特会から一般会計へお金が入る
外国為替資金特別会計は、政府による外国為替資金の運営などを管理する特別会計です。
日本政府は多額の外貨資産を保有しています。
その中心には外国の国債などがあります。
これらの外貨資産から利子収入などが発生します。
一方で、外貨資産を取得するための資金調達などに伴う費用もあります。
こうした収益と費用などを通じて剰余が生じることがあります。
その剰余金の一部を一般会計へ繰り入れれば、一般会計にとって税金以外の財源になります。
このため、食料品の消費税減税の財源候補として外為特会の剰余金が注目されているわけです。
税外収入なら国民負担は増えないのか
税外収入を財源にすると、新たに税率を引き上げる必要がないため、直接的な増税を避けられるように見えます。
ここが税外収入の大きな魅力です。
例えば5兆円の政策を実施するとき、
5兆円増税する
5兆円国債を発行する
5兆円の税外収入を利用する
では国民の受け止め方は大きく違うでしょう。
しかし税外収入だから負担が存在しないとは限りません。
そのお金を別の政策に使う予定だった場合、消費税減税に使えば別の用途には使えなくなります。
財政には限られた資金をどこへ配分するかという問題が常にあります。
一つの財源を二つの政策には使えない
今回の議論で特に重要なのがこの点です。
外為特会の剰余金は、すでに防衛費増額の財源として活用することも想定されています。
そこへ消費税減税の財源として使う案が出れば、
防衛費
消費税減税
という複数の政策が同じ財源を必要とすることになります。
もちろん実際には年度ごとの金額や財政全体の組み合わせによって判断されます。
しかし原則として、一つのお金を二重に使うことはできません。
消費税減税に使えば、その分だけ他の政策へ使える財源は減ります。
税外収入を使う場合でも、機会費用を考える必要があります。
国有財産の売却も税外収入になる
税外収入の分かりやすい例が国有財産の売却です。
政府が保有する土地やその他の資産を売却すれば、その代金が国の収入になります。
不要な資産を売却して財源を確保すること自体には合理性があります。
問題は継続性です。
例えば国有財産を1兆円売却すれば、その年度には1兆円の財源が生まれます。
しかし一度売却した資産を翌年もう一度売ることはできません。
そのため国有財産の売却収入は、一時的な政策の財源には利用できても、毎年1兆円必要な制度を永久に支える財源には向いていません。
税外収入には一時的なものが多い
税収と税外収入の大きな違いの一つが継続性です。
所得税や消費税などは制度が続く限り毎年度収入が発生します。
もちろん景気によって金額は変動しますが、収入源そのものがなくなるわけではありません。
一方、税外収入には、
資産を一度売却して得る収入
その年度に発生した剰余金
積立金の取り崩し
など、一時的な性格のものがあります。
これらを恒久的な政策の財源にすると、いずれ新しい財源が必要になります。
税外収入を利用するときには、政策の期間と財源の期間を合わせることが重要です。
2年間限定の減税とは相性がよい面もある
今回の食料品消費税減税は2027年4月から2年間限定とされています。
この点では一時的な税外収入を利用することにも一定の合理性があります。
恒久減税ではないからです。
仮に2年間で必要になる財源を確実に準備できるのであれば、恒久的な増税を行わなくても制度を実施できます。
しかし、前提があります。
本当に2年間で終了することです。
減税が3年、4年と延長されれば、当初確保した一時財源だけでは足りなくなる可能性があります。
その段階で別の税外収入を探すことになれば、財政運営が不安定になります。
税外収入頼みが続くと何が起こるのか
毎年のように一時的な財源を探して政策を維持すると、財政の見通しが立ちにくくなります。
今年は特別会計の剰余金。
来年は国有財産の売却。
その次は積立金の取り崩し。
このような方法で毎年度の支出を賄っていけば、いずれ使える資産や積立金が減っていきます。
家計でいえば、毎月の生活費が給与だけでは足りず、毎年貯金を取り崩したり資産を売ったりして生活している状態に近くなります。
一時的には成り立っても、長期間続けることは難しくなります。
税外収入と赤字国債は性質が違う
税外収入を利用することと赤字国債を発行することは同じではありません。
赤字国債は政府の債務になります。
将来的には元本の償還や利払いが必要です。
一方、すでに発生した剰余金や資産売却収入を使う場合、それ自体によって新たな国債残高が増えるわけではありません。
この違いは重要です。
政府が今回の消費税減税について赤字国債に頼らない方針を示しているのも、市場の信認や財政規律を意識しているためです。
ただし、国債を増やさなければ財政上の問題がすべて解決するわけではありません。
税外収入を使えば政府の資産や将来利用できる財源が減る場合もあります。
財政を見るときには、負債だけでなく資産にも注目する必要があります。
減税財源としてどこまで使えるのか
今回の食料品消費税減税には年間5兆円規模の財源が必要になるとされています。
2年間なら単純計算で約10兆円です。
税外収入を利用する場合には、
2年間で必要額を確実に確保できるのか
毎年度どれだけ利用できるのか
すでに別の政策に使う予定ではないのか
将来必要な財政余力を失わないか
減税が延長された場合にどうするのか
を確認する必要があります。
単に税外収入が何兆円あるというだけでは十分ではありません。
使える金額と使ってよい金額は必ずしも同じではないからです。
財源には名前を付けるだけでは足りない
政策発表では、
税外収入を活用する
特別会計の剰余金を使う
歳出改革で財源を生み出す
といった説明が行われることがあります。
しかし重要なのは、その先です。
どの会計からいくら出すのか。
何年間使えるのか。
他の政策への影響はないのか。
不足した場合はどうするのか。
ここまで具体化して初めて財源が確保されたといえます。
財源候補を列挙することと、実際に財源を確保することは違います。
結論
税外収入とは、税金以外から国が得る収入です。
特別会計から一般会計への繰入れや国有財産に関係する収入など、さまざまなものがあります。
新たな増税や国債発行を避けながら政策財源を確保できるため、有力な選択肢になる場合があります。
一方で税外収入には、一時的なものや年度によって大きく変動するものがあります。
特に資産売却や剰余金などは、毎年同じように利用できるとは限りません。
今回の食料品消費税減税は2年間限定であるため、一時的な税外収入を活用する余地はあります。
しかし本当に重要なのは、約10兆円規模になる財源を2年間にわたって確実に確保できるのかという点です。
さらに、その財源がすでに防衛費など別の政策に使われる予定ではないかも確認する必要があります。
税外収入は魔法の財布ではありません。
税金ではないから負担がないのではなく、国が持つ限られた資産や収入をどの政策に振り向けるかという選択です。
消費税減税の財源論を見るときには、税外収入という言葉だけでなく、その中身と継続性まで確認することが重要なのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年8月9日朝刊
減税先行 揺れた政権基盤 歴代内閣、財源確保に難航 赤字国債増の事例も