社外取締役は何人いればよいのか 人数より取締役会の構成が重要になる理由編

経営

日本企業で社外取締役が増えています。

企業統治改革が進み、上場企業では経営陣から独立した立場で経営を監督する社外取締役の存在が重要になってきました。

そこで気になるのが、社外取締役は何人いればよいのかという問題です。

2人いれば十分なのか、取締役会の3分の1が必要なのか、それとも過半数を社外取締役にした方がよいのでしょうか。

実は、単純に人数だけを増やせば企業統治が強くなるわけではありません。

重要なのは、社外取締役の比率とともに、取締役会全体をどのような人材で構成するかです。

プライム企業では3分の1以上が基準

2026年7月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社について、十分な資質を備えた独立社外取締役を少なくとも取締役会の3分の1以上選任することが求められています。

たとえば取締役が9人なら、少なくとも3人が独立社外取締役というイメージです。

取締役12人なら4人以上となります。

社内の人だけで取締役会を構成すると、どうしても経営陣と似た視点になりやすくなります。

そこで一定割合の独立した人材を入れ、経営陣とは異なる立場から意見を出せるようにするわけです。

過半数が必要になる企業もある

さらに重要なのが過半数という考え方です。

2026年改訂のコーポレートガバナンス・コードでは、支配株主を有するプライム市場上場会社について、支配株主から独立した独立社外取締役を少なくとも過半数選任することが求められています。

たとえば取締役が9人なら、5人以上ということになります。

なぜ支配株主がいる会社では基準が厳しくなるのでしょうか。

理由の1つが少数株主の保護です。

親会社など強い影響力を持つ株主と、その他の株主の利益が常に一致するとは限りません。

そのような場面で、支配株主や経営陣から独立した取締役が十分な人数いれば、少数株主の立場を踏まえた議論をしやすくなります。

多ければ多いほどよいわけではない

ここで注意したいのは、社外取締役は多ければ多いほどよいとは限らないことです。

取締役会には、社内の事情を深く理解している人材も必要だからです。

商品やサービス、顧客、従業員、技術、海外事業など、会社内部に長くいるからこそ分かる情報があります。

社外取締役には独立性という強みがありますが、社内取締役には事業に対する深い知識という強みがあります。

大切なのは、この2つを組み合わせることです。

取締役会は社内と社外のどちらか一方だけで考えるのではなく、監督と事業理解の両方が機能する構成にする必要があります。

専門性の組み合わせも重要になる

さらに重要なのが専門性です。

仮に社外取締役が5人いても、全員が同じような経歴だったらどうでしょうか。

人数は多くても、議論の視点は広がらない可能性があります。

経営経験のある人。

財務や会計に詳しい人。

法律に詳しい人。

海外事業に詳しい人。

デジタルや人工知能などの技術に詳しい人。

人材戦略に詳しい人。

企業によって必要な専門性は違います。

自社の経営戦略を実行し、それを適切に監督するためには、どのような能力を持つ取締役が必要なのかを考えることが重要です。

スキルマトリックスを見ると構成が分かる

こうした取締役の専門性を分かりやすく示すために使われるのがスキルマトリックスです。

取締役ごとに、企業経営、財務会計、法務、国際経験、デジタル、人事など、どの分野に知識や経験を持っているのかを一覧にしたものです。

これを見ることで、取締役会全体にどのような能力があり、逆に何が不足しているのかを確認しやすくなります。

社外取締役を何人置いているかという数字だけでは、取締役会の実力は分かりません。

どのような経験や専門性を持った人が集まっているのかを見る必要があります。

人数から質へ企業統治の焦点が変わっている

日本企業では社外取締役を増やす改革が進んできました。

実際、2026年7月時点では、プライム市場上場企業の98.8%が独立社外取締役を3分の1以上選任しています。

つまり、一定数の社外取締役を置くという形式面では、かなり整ってきたことになります。

そこで次に問われるのが質です。

取締役会で率直な意見を言えるのか。

経営トップに必要な質問をできるのか。

経営戦略を理解できるのか。

企業価値向上につながる助言ができるのか。

2026年改訂のコーポレートガバナンス・コードでも、独立社外取締役について単に数だけではなく、十分な資質を備えた人物を選ぶことの重要性が改めて強調されています。

会社ごとに最適な構成は違う

社外取締役の適正人数について、すべての企業に共通する唯一の正解があるわけではありません。

国内中心の企業と世界各国で事業を展開する企業では、必要な専門性が違います。

製造業と金融業でも違います。

成長段階にある企業と成熟企業でも、取締役会に求められる役割は変わります。

だからこそ、単に基準となる人数を満たすだけでは十分ではありません。

自社の経営戦略から逆算して、どのような人材を取締役会に置くべきかを考える必要があります。

結論

社外取締役は何人いればよいのかという問いに対して、人数だけで答えを出すことはできません。

2026年改訂のコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社は独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任することが求められ、支配株主を有するプライム市場上場会社では少なくとも過半数が求められています。

しかし、これは出発点です。

重要なのは、経営経験、財務会計、法律、海外事業、デジタル、人材など、その会社に必要な専門性を取締役会全体として確保できているかです。

社外取締役を何人置いているかという人数の議論から、誰を置き、どのような議論をしているのかという質の議論へ。

日本企業の企業統治は、次の段階に入っているといえるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年9月17日 朝刊 社外取の報酬、欧州並みに

金融庁 2026年7月21日 コーポレートガバナンス・コード2026年改訂版の確定について

東京証券取引所 2026年7月21日 コーポレートガバナンス・コード2026年7月版

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