学校のテストといえば、教室で問題用紙が配られ、決められた時間内に答えを書くという方法が一般的です。
知識を覚えているか。
計算できるか。
文章を理解できるか。
こうした能力を一定の条件で確認するために、テストは長く使われてきました。
しかし生成AIの普及によって、学校で何をどのように評価するのかという問題が改めて注目されています。
生成AIは質問に答えるだけでなく、作文を書き、資料を要約し、計算やプログラミングを支援することもできます。
AIが答えを作れる時代になるほど、完成した答えだけではなく、その答えに至るまでに本人がどのように考えたのかを評価する必要が高まります。
そのため重要になると考えられているのが、口頭試問や記述式問題などを組み合わせた評価です。
従来のテストは何を測ってきたのか
学校のテストにはさまざまな形式があります。
選択肢から正解を選ぶ問題。
漢字や英単語を書く問題。
計算問題。
文章を読んで答える問題。
自分の考えを文章で説明する問題。
これらを組み合わせることで、授業で学んだ知識や技能が身についているかを確認します。
特に多数の児童生徒を評価する場合には、正解と不正解を明確に判断できる問題が便利です。
採点基準をそろえやすく、短時間で多くの答案を評価できるからです。
しかし、正しい答えを出せることと、その内容を本当に理解していることは必ずしも同じではありません。
生成AIの登場によって、この違いがさらに重要になっています。
AIで答えを作れる問題が増えている
生成AIは、従来なら人間が時間をかけて取り組んでいた課題を短時間で処理できます。
例えば、ある歴史上の出来事について説明してくださいという問題があったとします。
生成AIに同じ質問を入力すれば、まとまった説明を作ることができます。
英作文も作れます。
文章の要約もできます。
プログラムを書くこともできます。
そのため、家庭で取り組むレポートや課題については、完成した成果物だけを見ても本人の能力なのかAIの能力なのか区別しにくくなっています。
この問題は、学校での評価方法そのものを見直すきっかけになります。
口頭試問とは何か
そこで注目される方法の一つが口頭試問です。
口頭試問とは、教員などが質問し、児童生徒がその場で口頭で答える評価方法です。
例えば提出したレポートについて質問します。
なぜこの結論にしたのですか。
この言葉はどういう意味ですか。
別の立場から考えるとどうなりますか。
どの資料を参考にしましたか。
本人が内容を理解していれば、自分の言葉で説明できます。
生成AIを利用してレポートを作ったとしても、内容を理解せずにそのまま提出しただけなら、追加の質問に答えることは難しくなります。
完成した文章を見るだけでは分からない理解度を確認できるわけです。
記述式問題が重要になる理由
記述式問題も重要になります。
例えば選択式問題なら、正解を知っているかどうかを効率的に確認できます。
しかし、なぜその答えになるのかまでは分からない場合があります。
記述式では、結論だけでなく理由や考え方を書かせることができます。
算数や数学でも、答えだけを書くのではなく途中の考え方を説明させることができます。
社会科なら、複数の資料を比較して自分の考えを書かせることができます。
国語なら、文章中の根拠を示しながら自分の解釈を説明させることができます。
このように、知識を持っているかだけでなく、その知識を使って考えられるかを見ることができます。
正解より思考過程を見る
生成AI時代の評価を考えるうえで重要なのが、思考過程です。
例えば数学の問題で答えが100だったとします。
従来なら、正解であれば一定の点数を与えることができます。
しかし、本当に理解しているかを確認するなら、なぜ100になるのかを見る必要があります。
どの公式を使ったのか。
なぜその公式を使ったのか。
別の解き方はあるのか。
途中で間違えた場合、どこを修正したのか。
こうした過程を見ることで、本人がどの程度理解しているのかが分かります。
これは生成AIの有無にかかわらず重要なことですが、AIが簡単に答えを出せるようになるほど価値が高まります。
AIを使わせないテストだけが答えではない
生成AI対策として、試験中はスマートフォンやパソコンを使わせなければよいという考え方もあります。
もちろん、基礎的な知識や計算力などを確認するために、AIを使わない試験は今後も必要でしょう。
しかし社会に出れば、AIを利用できる場面は増えていきます。
実際の仕事では、検索エンジンや表計算ソフト、生成AIなどを使いながら問題を解決することが一般的になる可能性があります。
そのため学校でも、AIを使わない能力だけでなく、AIを適切に使って問題を解決する能力を評価する必要が出てきます。
AIを禁止した試験と、AIの利用を認めた試験の両方を使い分ける考え方も必要になります。
AIを使うテストでは何を評価するのか
AIの利用を認めるのであれば、単にAIから正解を得られたかを評価しても意味がありません。
例えば生成AIを使って、ある社会問題について調べる課題を出したとします。
その場合には、どのような質問をAIにしたのかを見ることができます。
AIの回答を別の資料で確認したか。
誤った情報を見つけられたか。
複数の考え方を比較できたか。
最後に自分自身の考えを説明できたか。
こうした能力を評価することができます。
つまり、AIを使えることそのものより、AIから得た情報をどのように扱ったかが重要になります。
暗記テストがなくなるわけではない
AIが何でも答えてくれるのであれば、知識を覚える必要はないという考え方もあります。
しかし、基礎知識の確認が不要になるわけではありません。
知識がなければ、AIの回答が正しいのか判断することが難しいからです。
例えば歴史の基本的な流れを知らなければ、生成AIが年代を間違えていても気づかないかもしれません。
数学の基本を知らなければ、AIが示した計算結果がおかしいことにも気づきにくくなります。
そのため、基礎知識を確認するテストと、知識を利用して考えるテストの両方が必要になります。
生成AI時代には、暗記が不要になるのではなく、暗記した知識を何のために使うのかがより重要になると考えられます。
評価方法が増えると教員の負担も増える
口頭試問や記述式問題には課題もあります。
30人の児童生徒に一人ずつ口頭試問を行えば、かなりの時間がかかります。
記述式問題も、選択式問題より採点に時間が必要です。
さらに、採点する教員によって評価が大きく変わらないように基準を整える必要があります。
生成AI時代にふさわしい評価方法を導入するのであれば、教員の負担をどう抑えるのかも考えなければなりません。
デジタル教材による自動採点などで単純な採点作業を減らし、その分を口頭試問や記述式評価に充てるといった役割分担も考えられます。
テストは学力を測るものから学び方を見るものへ
生成AIの普及によって、学校のテストがなくなるわけではありません。
むしろ、何を測るためのテストなのかを明確にする必要性が高まります。
知識を覚えているかを確認するテスト。
AIを使わず自分で考えられるかを見るテスト。
AIを使って情報を集め、検証できるかを見るテスト。
自分の考えを他人に説明できるかを見る口頭試問。
一つの試験方法ですべての能力を測るのではなく、目的に応じて評価方法を組み合わせることが重要になります。
結論
生成AIの普及によって、学校のテストで完成した答えだけを見ることには限界が生まれています。
AIは文章を書き、問題を解き、資料を要約し、プログラムまで作ることができるからです。
そこで重要になるのが、口頭試問や記述式問題などを通じて、本人がどのように考えたのかを確認することです。
なぜその答えになったのか。
どの情報を使ったのか。
AIの回答をどう検証したのか。
自分の言葉で説明できるのか。
こうした思考過程を見る必要があります。
一方で、基礎知識を確認する従来型のテストも必要です。
AIを使わずに身につけるべき力と、AIを使いこなして発揮する力の両方を評価することが求められます。
生成AI時代のテストは、正解を知っているかだけを測るものから、知識やAIを使って自分で考えられるかを見るものへと変わっていく可能性があります。
AIが答えを作れる時代だからこそ、その答えについて自分の言葉で説明できる力が、これまで以上に重要になるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月1日 朝刊 情報化社会の学び刷新
日本経済新聞 2026年9月1日 朝刊 「AI学習」を全国の学校で
日本経済新聞 2026年9月1日 朝刊 学習への活用、依存に懸念