燃えるゴミからなぜ金が採れるのか 焼却灰が高品位の都市鉱山になる仕組み編

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金を採る場所といえば、普通は地下の金鉱山を思い浮かべます。

ところが今、日本では私たちが毎日のように捨てている一般ゴミから金を回収する取り組みが進んでいます。

正確には、燃えるゴミそのものから金を取り出すのではありません。

自治体がゴミを焼却した後に残る「焼却灰」から、金などの有価金属を回収します。

しかも、そこから取り出された金属には、一般的な金鉱石の含有量の10倍程度に相当する金が含まれているとされています。

なぜ普通のゴミが、高品位の「都市鉱山」に変わるのでしょうか。

燃えるゴミの中にも金が紛れ込んでいる

家庭から出るゴミの大部分には、もちろん金は含まれていません。

しかし一般ゴミの中には、本来なら別の方法で回収されるべき小型電子機器などが混ざることがあります。

例えばハンディーファンのような小型機器には電子部品が使われています。

電子部品の接点や端子などには、ごく微量ながら金が使われることがあります。

元記事では、クレジットカードなどに含まれる金も焼却灰に混ざる可能性が指摘されています。

一つ一つの製品に含まれる量はわずかです。

しかし大量のゴミを集めて処理すれば、そこに含まれていた微量の金属も集まります。

これが一般ゴミから金が回収できる出発点です。

ゴミを燃やしても金は簡単にはなくならない

紙やプラスチックなどは焼却すると燃えて体積が大きく減少します。

一方、金などの金属は同じように燃えて消えてしまうわけではありません。

そのためゴミを焼却すると、燃える成分が減少する一方で、金属などの不燃性の物質が灰側に残ります。

ここが重要です。

焼却前には大量のゴミの中に分散していた微量の金属が、焼却後には少ない量の灰の中へ集まります。

つまり焼却には、結果として金属を濃縮する側面があります。

この灰をさらに処理することで、金などの有価金属を回収できる可能性が生まれます。

焼却灰が鉱石のような存在になる

天然の金鉱山では、地下から掘り出した鉱石を処理して金を取り出します。

焼却灰の場合も考え方は似ています。

日本製鉄系で鉄鋼原料を手がける新日本電工は、自治体が焼却したゴミの灰を茨城県鹿嶋市の工場に集めています。

その灰を専用の炉で溶かし、有価金属を取り出します。

つまり、

一般ゴミ

焼却

焼却灰

溶融処理

有価金属回収

という流れです。

天然鉱山では山から鉱石を運びますが、都市鉱山では自治体の焼却施設から灰を運びます。

焼却灰が都市鉱山における「鉱石」のような役割を果たしているわけです。

なぜ一般的な金鉱石より高品位になるのか

元記事で興味深いのが、焼却灰から取り出した金属には、一般的な金鉱石の含有量の10倍程度に相当する金が含まれているという点です。

天然の金鉱石では、岩石の中にごく少量の金が分散しています。

一方、都市で使われている電子製品では、人間が必要な場所に意図的に金を使用しています。

それらが廃棄され、焼却され、さらに金属分が集約されることで、天然鉱石とは違う形で金が濃縮されます。

もちろん、焼却灰そのもののすべてが高濃度の金でできているわけではありません。

それでも都市で使用された製品を大量に集めて処理することで、天然鉱石とは異なる高品位の資源が生まれる可能性があります。

品位が高くても簡単に利益が出るわけではない

ただし「一般的な金鉱石の10倍程度」と聞いて、天然鉱山より圧倒的に利益が出ると考えるのは早計です。

都市鉱山には都市鉱山特有のコストがあります。

焼却灰を集める。

工場まで運ぶ。

専用設備で処理する。

複数の金属を分離する。

金を精製する。

こうした工程に費用がかかります。

天然鉱山では採掘費用が必要ですが、都市鉱山では回収や運搬、選別、処理などの費用が重要になります。

したがって比較すべきなのは金品位だけではありません。

最終的に金1グラムをいくらで回収できるかを見る必要があります。

金だけを回収するわけではない

焼却灰を資源として考える場合、金だけに注目する必要もありません。

焼却灰には複数の金属が含まれています。

金以外の有価金属も同時に回収できれば、事業全体の採算性を高められる可能性があります。

これは天然鉱山でも同じです。

一つの鉱石から複数の有価金属を回収できれば、それぞれの販売収入を得られる可能性があります。

都市鉱山の価値を考えるときも、

金が何グラムあるか

だけではなく、

どのような金属をどれだけ回収できるか

という視点が重要になります。

金価格上昇が焼却灰の価値を高める

そして現在、この事業を後押ししているのが金価格の上昇です。

同じ焼却灰でも、含まれている金の量そのものは金価格によって変わりません。

しかし金価格が2倍になれば、回収した金の経済的価値も大きくなります。

以前なら回収コストに見合わなかったものでも、金価格が上昇すれば事業化できる可能性があります。

さらに設備の大型化や技術革新によって処理コストを下げることができれば、採算性は一段と改善します。

天然鉱山と同じように都市鉱山でも、

資源価格上昇

回収技術向上

処理コスト低下

によって、資源として利用できる範囲が広がります。

処理設備も拡張される

新日本電工は焼却灰から有価金属を回収する設備を拡張しています。

元記事によると、炉は現在4基ですが、2030年までに7基へ増やす計画です。

これは都市鉱山が単なる研究段階ではなく、実際の事業として規模を拡大する動きが出ていることを示しています。

大量の焼却灰を継続的に処理できれば、それだけ回収できる金属量も増える可能性があります。

都市には毎日大量のゴミが発生します。

つまり焼却灰という都市鉱山の原料も、継続的に生まれていることになります。

ゴミ処理と資源回収を同時に考えられる

焼却灰からの金属回収には、もう一つ重要な視点があります。

もともと焼却灰はゴミ処理の結果として発生するものです。

これを単純に廃棄するだけでなく、そこから価値のある金属を取り出すことができれば、

廃棄物処理

と

資源回収

を組み合わせることができます。

日本は多くの鉱物資源を海外から輸入しています。

一方で国内では、過去に輸入した金属が製品として使われ、使用後に廃棄されています。

その一部を再び回収できれば、資源を国内で循環させることにつながります。

都市鉱山は、新しい資源を生み出しているのではありません。

すでに日本国内へ入ってきた資源を、捨てずにもう一度使う仕組みなのです。

本来は適切に回収することも重要

ただし、一般ゴミから金が回収できるからといって、電子機器を燃えるゴミとして捨ててよいという意味ではありません。

小型家電などには、それぞれ適切な回収ルートがあります。

都市鉱山を効率的に活用するには、製品段階で適切に回収し、資源を分別することも重要です。

焼却灰からの金属回収は、一般ゴミに紛れ込んでしまった資源まで回収できるという意味があります。

資源循環では、

製品として回収する仕組み

と

最終的な焼却灰から回収する仕組み

の両方を組み合わせることが重要になります。

結論

燃えるゴミから金が採れるのは、ゴミそのものが大量の金を含んでいるからではありません。

小型電子機器などに使われている微量の金属が一般ゴミに混ざり、焼却によって燃える成分が減少することで、金属分が灰に集まるためです。

その焼却灰をさらに処理すると、金などの有価金属を回収できます。

新日本電工が回収する金属には、一般的な金鉱石の含有量の10倍程度に相当する金が含まれているとされています。

これは「鉱山とは山にあるもの」という常識を変える動きです。

都市で大量に発生する廃棄物も、集め方と処理技術次第では鉱石になります。

さらに金価格が上昇すれば、これまで廃棄物として扱われていたものの経済的価値も高まります。

現代の「黄金の国ジパング」は、山を掘るだけではありません。

私たちが捨てたゴミの中から金を取り戻す技術によってもつくられようとしているのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月21日 朝刊 「黄金の国ジパング」再興へ

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