海外赴任や海外移住、外国人による不動産投資の増加により、日本のマンションを所有しながら海外で生活する区分所有者が増えています。所有者が海外に住んでいても、マンションの管理や維持に関する責任がなくなるわけではありません。
2026年の区分所有法改正では、こうした状況を踏まえ、海外居住者に対応するための「国内管理人制度」が創設されました。しかし、国内管理人を選任すれば、所有者自身の責任までなくなるわけではありません。
今回は、海外居住区分所有者が負う義務や国内管理人との関係、管理組合との適切な関わり方について解説します。
海外に住んでも区分所有者であることは変わらない
区分所有者は、居住地にかかわらずマンションの所有者としての権利と義務を負います。
海外へ転勤した場合や外国へ移住した場合でも、
・専有部分の所有権
・共用部分の持分
・議決権
などは引き続き保有します。
そのため、日本国内に住んでいないことだけを理由に、管理組合との関係がなくなることはありません。
管理費と修繕積立金の支払い義務
海外居住者であっても、管理費や修繕積立金を支払う義務があります。
これらは建物全体の維持管理に必要な費用であり、実際に住んでいるかどうかとは関係ありません。
例えば、
・空室になっている場合
・賃貸に出している場合
・海外へ長期間赴任している場合
でも、支払い義務は継続します。
滞納が続けば、管理組合から督促や法的手続きが行われる可能性があります。
総会への参加と議決権
海外居住者にも総会へ参加し、議決権を行使する権利があります。
もっとも、実際には海外から総会へ出席することは容易ではありません。
そのため、
・議決権行使書を提出する
・代理人へ委任する
・国内管理人を選任する
などの方法を利用して、自らの意思を管理組合へ反映させることが重要になります。
議決権を行使しない状態が続くと、管理組合全体の意思決定にも影響を及ぼす可能性があります。
国内管理人との関係
2026年の区分所有法改正では、海外居住者への対応として国内管理人制度が導入されました。
国内管理人は、
・管理組合からの通知を受ける
・総会で議決権を行使する
・管理組合との連絡窓口となる
などの役割を担います。
ただし、国内管理人はあくまで所有者を補佐・代理する存在です。
管理費を支払う義務や管理規約を守る義務など、区分所有者本人の責任まで引き継ぐものではありません。
最終的な責任は、あくまでも区分所有者本人にあります。
管理組合との連絡体制が重要
海外居住者で最も重要なのは、管理組合と確実に連絡が取れる体制を整えておくことです。
例えば、
・海外の住所
・電子メールアドレス
・電話番号
・日本国内の連絡先
などを管理組合へ届け出ておくことが望まれます。
大規模修繕工事や管理規約の変更など、重要な連絡が届かなければ、自身の権利を十分に行使できなくなるおそれがあります。
国内管理人を選任する場合でも、所有者本人との連絡体制を維持することが大切です。
所有者としての責任を果たすことが資産価値を守る
マンションは区分所有者全員で管理する共同財産です。
海外に住んでいても、
・管理費を適切に負担する
・総会へ関心を持つ
・必要な議決権を行使する
・管理組合と連絡を取り合う
といった姿勢が求められます。
所有者の無関心が広がれば、修繕計画や管理運営にも支障が生じ、結果としてマンション全体の資産価値にも影響を及ぼします。
海外居住者だからこそ、国内管理人制度などを活用しながら、継続的に管理へ参加することが重要です。
結論
海外居住区分所有者であっても、管理費や修繕積立金の支払い、管理規約の遵守、議決権の行使など、区分所有者としての基本的な権利と義務は変わりません。2026年に導入された国内管理人制度は、管理組合との連絡や議決権行使を円滑にするための仕組みですが、所有者本人の責任まで免除するものではありません。
海外居住者が適切に管理組合と連携し、主体的にマンション管理へ関わることは、自身の資産を守るだけでなく、マンション全体の健全な管理と資産価値の維持にもつながります。
参考
日本経済新聞朝刊(2026年8月1日)
「<ステップアップ>『議決代理』、利益誘導の恐れ マンション新制度に課題」
日本経済新聞朝刊(2026年8月1日)
「マンション管理規約のひな型」
国土交通省
「マンション標準管理規約」
建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)