未上場株市場は個人投資家にも広がるのか プロ中心の市場から先に何が起きるのか編

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未上場株の2次流通市場が整備されると、個人投資家にとっても新しい投資機会になるのでしょうか。

上場前の有望なスタートアップへ投資し、企業が大きく成長すれば、その成長利益を享受できる可能性があります。

特に企業が未上場のまま長期間成長するようになれば、IPOしてから株式を買う個人投資家は、成長のかなり後半から参加することになります。

それなら個人にもIPO前から投資できる機会を広げた方がよいという考え方が出てきます。

一方、未上場株は上場株とは性質が大きく異なります。

市場価格がありません。

公開される情報も限られます。

買った株式を自由に売却できるとも限りません。

そのため未上場株市場の拡大では、投資機会を広げることと投資家を保護することを同時に考える必要があります。

現在の未上場株投資はなぜ難しいのか

上場株なら、個人投資家は証券会社に口座を開設して市場で売買できます。

例えば100万円の資金があれば、複数の上場会社へ分散投資できます。

現在の株価も確認できます。

決算情報も公表されています。

売却したければ市場で売却注文を出せます。

未上場株には、こうした環境がそのまま存在するわけではありません。

そもそも株式をどこで購入できるのか分からない場合があります。

買い手と売り手を結び付ける市場も限定されています。

これまで未上場株への投資がVCや一部の投資家を中心としてきた理由の一つです。

未上場株には市場価格がない

個人投資家にとって大きな問題になるのが価格です。

上場株なら証券取引所で株価を見ることができます。

例えば一株2000円と表示されていれば、その時点で市場参加者が形成している価格を確認できます。

未上場株には通常、このような連続的な市場価格がありません。

直近の資金調達で一株1万円だったとしても、現在も1万円の価値があるとは限りません。

事業が成長していれば1万5000円の価値があるかもしれません。

反対に業績が悪化していれば5000円でも高い可能性があります。

投資家自身が企業価値を判断する必要があります。

情報の非対称性も大きい

未上場株では情報の非対称性が大きくなりやすいという問題があります。

会社の経営者や既存株主は、会社の状況を詳しく知っています。

現在の売上高。

主要顧客との契約。

研究開発の進捗。

資金繰り。

次回の資金調達計画。

一方、新しく株式を購入する個人投資家が同じ情報を持っているとは限りません。

売り手の方が買い手より会社について詳しいという状況になりやすいのです。

十分な情報がなければ、提示された価格が高いのか安いのか判断することも難しくなります。

上場企業と同じ情報開示ではない

上場企業には幅広い情報開示が求められます。

投資家は企業の財務情報や事業上のリスクなどを確認できます。

未上場企業にも会社法などに基づく情報作成や開示の仕組みはありますが、一般の投資家が上場企業と同じように豊富な公開情報へ容易にアクセスできるとは限りません。

特にスタートアップでは現在の利益だけで企業価値を判断することも困難です。

将来の事業計画や技術力、市場規模などを評価する必要があります。

個人投資家へ市場を広げるなら、どの程度の情報を投資家へ提供するのかが重要になります。

特定投資家制度とは何か

そこで重要になるのが特定投資家という考え方です。

特定投資家とは、金融商品取引について一定の知識や経験、財産などを持つと考えられる投資家を、一般投資家と区別して扱う仕組みです。

金融機関などが代表例ですが、一定の条件を満たす個人などが手続きを経て特定投資家として扱われる場合もあります。

一般にプロ成りと呼ばれる仕組みです。

未上場株のように価格評価が難しく、流動性も低い商品では、まずリスクを自分で判断できる投資家を中心として市場を育てる考え方があります。

個人投資家とプロ投資家の境界は単純ではない

個人だから投資知識が少なく、法人だから専門家というわけではありません。

個人の中にも長年金融商品へ投資し、大きな金融資産を持つ人がいます。

一方、資産が多くても未上場企業の評価経験が十分とは限りません。

そのため単純に個人か法人かだけで線を引くことはできません。

未上場株市場を広げるうえでは、投資家の資産、知識、経験などをどのように考えるかが重要になります。

個人にも未上場株投資のメリットはある

個人投資家へ未上場株投資を広げることにはメリットがあります。

最大の魅力は、企業の成長の早い段階から投資できる可能性があることです。

例えば企業価値100億円の段階で投資した会社が、10年後に企業価値1000億円へ成長したとします。

単純化すれば企業価値は10倍です。

IPO後に初めて投資するより、早い段階から成長に参加できる可能性があります。

またスタートアップ側から見れば、投資家層が広がることで資金の供給源を増やせます。

大きな利益の可能性は大きなリスクと表裏一体

ただし、企業価値が10倍になる会社だけを事前に選べるわけではありません。

企業価値100億円で投資した会社が、将来1000億円になる可能性があります。

一方で50億円になるかもしれません。

倒産すれば株式価値が大きく失われる可能性もあります。

スタートアップ投資では成功企業が大きなリターンを生む一方、多くの投資先が期待通り成長しないこともあります。

VCは複数のスタートアップへ分散投資することで、こうしたリスクに対応します。

個人投資家が一社だけへ大きな資金を投じれば、損失リスクが集中します。

少額分散投資できる仕組みが重要になる

個人へ未上場株市場を広げるなら、分散投資のしやすさも重要になります。

例えば投資資金1000万円の個人が、一社の未上場企業へ1000万円すべてを投資したとします。

その企業が失敗すれば大きな損失になります。

100万円ずつ10社へ投資できれば、一社への集中リスクを下げられます。

さらに少額で多数の企業へ投資できれば、より分散できます。

ただし未上場株は一件ごとの企業調査や契約手続きにコストがかかります。

少額取引をどのように経済的に成立させるかという問題もあります。

買った後に売れない問題がある

個人投資家にとって特に理解が必要なのが流動性です。

上場株なら、株価が下落していても市場に買い手がいれば売却できます。

未上場株では、売りたいと思っても買い手が見つからない可能性があります。

例えば老後資金として1000万円必要になったとしても、保有する未上場株をその時点で1000万円に換金できる保証はありません。

企業価値が高くても現金化できないことがあります。

未上場株を個人へ広げる場合、この流動性リスクを十分に理解できる仕組みが必要です。

譲渡制限にも注意が必要

未上場株には契約上の売却制限がある場合もあります。

会社の承認がなければ株式を譲渡できないことがあります。

株主間契約によって既存株主に先買権が与えられている場合もあります。

つまり証券会社が2次流通を仲介するようになっても、上場株のように好きな日に自由に売却できるとは限りません。

個人投資家へ市場を広げるなら、こうした権利や制限を分かりやすく示すことも重要になります。

価格が妥当かを誰が判断するのか

個人投資家への市場拡大で難しいのが価格形成です。

例えば直近の増資価格が一株1万円だった未上場株を、一株1万2000円で販売するとします。

なぜ2000円高いのでしょうか。

その後会社が成長したからかもしれません。

単に売り手が高い価格を希望しているだけかもしれません。

反対に一株7000円なら割安とは限りません。

会社の業績が悪化している可能性があります。

未上場株では価格だけを見ても投資判断できません。

価格の根拠となる企業情報が必要です。

証券会社の役割がより重要になる

個人投資家が参加するようになれば、仲介する証券会社の役割はさらに重要になります。

単に売り手と買い手を紹介するだけではありません。

どのような会社なのか。

どの種類の株式なのか。

どのような売却制限があるのか。

どのようなリスクがあるのか。

投資家が判断するための情報を適切に提供する仕組みが必要になります。

未上場株市場の拡大は、証券会社にとっても新しいノウハウの蓄積が必要な分野になります。

投資家保護とは投資を禁止することではない

投資家保護というと、危険な商品を個人に買わせないことだと思われがちです。

しかし投資家保護には別の考え方もあります。

必要な情報を提供する。

リスクを分かりやすく示す。

不公正な価格形成を防ぐ。

利益相反を管理する。

投資家が自分で判断できる環境を整える。

こうした仕組みも投資家保護です。

未上場株市場を個人へ広げる場合、単純に投資できるかできないかだけではなく、どのような条件なら投資できるのかという制度設計が重要になります。

まずプロ中心で取引実績を積む意味がある

未上場株の2次流通市場が立ち上がってすぐ、幅広い個人投資家へ開放する必要はありません。

まず機関投資家やVC、CVC、特定投資家などを中心に取引を増やす方法があります。

取引事例が増えれば、どのように企業価値を評価するのかというノウハウが蓄積されます。

証券会社の仲介実務も成熟します。

情報開示の方法も整っていきます。

実際の取引価格も蓄積されます。

こうした市場インフラを整えた後に、個人投資家へどこまで対象を広げられるかを検討する方が現実的です。

未上場市場が大きくなるほど個人投資家にも関係する

未上場株を直接買わない個人投資家にも、この問題は関係します。

企業が未上場のまま長期間成長するようになると、企業価値の大きな上昇がIPO前に起きる可能性があるからです。

例えば企業価値100億円だった会社が、未上場のまま5000億円まで成長してからIPOしたとします。

初期から未上場株へ投資した投資家は大きな成長に参加できました。

一方、一般の個人投資家が上場後に買えるのは5000億円から先の成長部分です。

巨大企業が未上場でいる期間が長くなるほど、誰が未上場段階の成長利益へアクセスできるのかという問題が重要になります。

投資機会の公平性という論点も出てくる

未上場市場が発達すれば、プロ投資家だけが高成長企業へ早期投資できる状況について議論が生まれる可能性があります。

投資家保護を重視して一般個人を市場から遠ざければ、損失リスクから守ることはできます。

しかし同時に、大きな成長機会にも参加できなくなります。

反対に市場を広く開放すれば投資機会は増えますが、大きな損失を受ける個人も出る可能性があります。

投資機会と投資家保護のどこに線を引くか。

未上場株市場が成長するほど、この問題は重要になっていきます。

結論

未上場株市場が個人投資家へ広がる可能性を考えるうえでは、投資機会と投資家保護の両方を見る必要があります。

未上場企業には、IPO前に企業価値が大きく上昇する会社があります。

未上場期間が長期化すれば、その成長利益の多くをVCや機関投資家などが享受し、一般の個人投資家が参加できるのはIPO後になる可能性があります。

個人にも未上場株投資を広げれば、企業の早い成長段階から投資できる機会が生まれます。

一方で未上場株には市場価格がなく、情報開示も上場株とは異なります。

買った株式を自由に売却できるとは限りません。

企業が失敗すれば大きな損失を受ける可能性もあります。

そのため、まず重要になるのが機関投資家や特定投資家などプロを中心とした市場の育成です。

取引事例を増やす。

価格評価のノウハウを蓄積する。

情報開示を整える。

証券会社の仲介実務を成熟させる。

その先に、一般の個人投資家へどこまで市場を広げられるかという議論があります。

未上場株市場を個人へ開くかどうかは、単に新しい投資商品を増やす問題ではありません。

日本の成長企業が生み出す利益を誰が享受できるのかという問題でもあります。

プロ投資家による市場形成と個人投資家の保護を両立しながら、成長企業への投資機会をどこまで広げられるか。

それが日本の未上場株市場が成熟した先に待つ、次の大きな課題になるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 未上場株、初の売買仲介 専業証券が年内に事業開始

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 未上場株式の売買 流動性乏しく小粒上場招く

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 未上場株の2次流通、買い手広がる フェアな価格形成課題

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