育児などのために、1日8時間勤務から6時間勤務へ変更したとします。
勤務時間は2時間減ります。
割合で見ると25パーセントの減少です。
では、月給30万円だった人の給料も25パーセント減って22万5000円になるのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
時短勤務をした場合にどの賃金がどのように減るのかは、会社の就業規則や賃金規程などによって異なります。
基本給を勤務時間に応じて減額する会社もあれば、一部の手当についてはそのまま支給する会社もあります。
さらに、時短勤務によって残業が減れば、時間外労働に対する賃金も減ります。
時短勤務による収入への影響を考えるときは、単純に「8時間が6時間になったから給料も25パーセント減る」と考えるのではなく、給与の中身を分けて見る必要があります。
基本給はどうなるのか
まず確認したいのが基本給です。
例えば、フルタイム勤務時の基本給が月30万円だったとします。
勤務時間は、
1日8時間
週5日
だったとします。
育児のために、
1日6時間
週5日
へ変更しました。
勤務時間だけで考えると、
6時間割る8時間
なので、フルタイム勤務の75パーセントです。
会社が基本給を勤務時間に比例して減額する制度を採用している場合、
30万円掛ける75パーセント
で、
22万5000円
という計算になることがあります。
この場合、基本給は7万5000円減ります。
ただし、これはあくまで分かりやすく単純化した例です。
実際の計算方法は会社ごとに確認する必要があります。
ノーワークノーペイという考え方
賃金には基本的に、
働かなかった時間について賃金を支払わない
という考え方があります。
いわゆるノーワークノーペイの原則です。
時短勤務によって所定労働時間そのものが短くなれば、その短くなった時間に相当する賃金を支払わない制度を設けることがあります。
例えば、
通常勤務8時間
時短勤務6時間
なら、
勤務しない2時間分について賃金を減額する
という考え方です。
そのため、
時短勤務を利用できる
ことと、
時短になった時間についても従来通りの給料が保証される
ことは別問題です。
時短勤務制度を利用する前には、勤務時間だけでなく賃金の扱いも確認する必要があります。
給与は基本給だけではない
ここで重要になるのが、毎月の給与の構成です。
給与には基本給だけでなく、
役職手当
職務手当
資格手当
住宅手当
家族手当
通勤手当
など、さまざまな手当が含まれることがあります。
時短勤務をしたとき、これらがすべて基本給と同じ割合で減るとは限りません。
例えば、
基本給は勤務時間に比例して減額
資格手当は全額支給
住宅手当も全額支給
通勤手当は実際の通勤状況に応じて支給
という会社も考えられます。
すると、労働時間が25パーセント減っても、給与総額は25パーセントまでは減らないことがあります。
具体例で考える
例えばフルタイム勤務時の給与が、
基本給28万円
資格手当2万円
合計30万円
だったとします。
1日8時間勤務から6時間勤務へ変更しました。
基本給だけを勤務時間に比例して75パーセントにする制度だったとします。
すると基本給は、
28万円掛ける75パーセント
で、
21万円
になります。
資格手当2万円がそのまま支給されるなら、
21万円足す2万円
で、
時短勤務後の給与は23万円
となります。
フルタイム時の30万円から見ると7万円の減少です。
25パーセント減なら22万5000円になるはずですが、このケースでは23万円です。
給与のどの部分を時間比例で減額するかによって結果が変わるわけです。
逆に収入減が大きくなる場合もある
反対に、労働時間の減少率以上に実際の収入が減ったように感じるケースもあります。
その大きな理由の一つが残業代です。
例えばフルタイム勤務時に、
基本給30万円
残業代5万円
を毎月受け取っていたとします。
月収は35万円です。
時短勤務によって基本給が22万5000円になり、残業をしなくなったとします。
すると月収は22万5000円になります。
35万円から22万5000円なので、12万5000円の減少です。
勤務時間を8時間から6時間へ25パーセント短くしただけでも、以前受け取っていた残業代がなくなることで、実際の月収はそれ以上に大きく減ることがあります。
残業代への影響
時短勤務では、育児との両立などのため、残業をしない働き方を選ぶことがあります。
その場合、当然ながら従来受け取っていた残業代が減る可能性があります。
これは基本給の減額とは別の問題です。
例えば、
基本給の減少が5万円
残業代の減少が3万円
なら、
毎月の収入は合計8万円減る
ことになります。
時短勤務による家計への影響を考えるときは、
基本給がいくらになるか
だけを見るのでは不十分です。
フルタイム勤務時の残業代がどの程度あったのかも確認する必要があります。
手取りは額面と同じ割合では減らない
さらに、給料の額面が減った割合と、銀行口座に振り込まれる手取り額の減少割合も一致するとは限りません。
給与からは、
所得税
住民税
健康保険料
厚生年金保険料
雇用保険料
などが差し引かれます。
給与が減れば、所得税や社会保険料などにも影響します。
そのため、額面給与が7万円減ったからといって、手取りがそのまま7万円減るとは限りません。
一方、住民税は前年の所得を基に計算されるため、時短勤務を始めた直後には前年のフルタイム勤務時の所得を基にした住民税が引かれる場合があります。
時短勤務を始めた直後に、
給料は減ったのに住民税の負担が大きい
と感じることがある理由です。
社会保険料はどうなるのか
健康保険料や厚生年金保険料についても、時短勤務による給与の減少が影響する場合があります。
社会保険料は標準報酬月額を基に計算されます。
通常は一定のルールによって標準報酬月額が見直されます。
育児休業終了後に報酬が低下した場合などには、一定の要件を満たせば通常とは異なる改定の仕組みもあります。
そのため、
給与が下がった月から社会保険料も必ず同じ割合ですぐ下がる
とは限りません。
手取り額を考えるときには、社会保険料がいつどのように変わるのかも重要になります。
育児時短就業給付で一部を補える場合がある
2025年4月からは、一定の要件を満たす人を対象に育児時短就業給付が始まりました。
2歳未満の子どもを養育するために時短勤務を行い、一定の要件を満たした場合、原則として時短勤務中の賃金の10パーセント相当が雇用保険から支給されます。
例えば時短勤務後の賃金が22万円だった場合、条件を満たせば、
22万円掛ける10パーセント
で、
2万2000円
が給付額の基本になります。
時短勤務による収入減を完全に埋める制度ではありませんが、家計への影響を緩和する役割があります。
会社ごとに制度が違う
時短勤務による給与計算で最も重要なのは、
自分の会社ではどうなっているか
を確認することです。
同じ1日6時間勤務でも、
基本給を時間比例で減らす会社
一定額を減額する会社
一部の手当を維持する会社
賞与の計算にも勤務時間を反映する会社
など制度設計はさまざまです。
そのため、他社で働く知人から、
私はこれくらいしか給料が減らなかった
と聞いても、自分の会社で同じ結果になるとは限りません。
就業規則や賃金規程を確認する
時短勤務を利用する前には、会社の制度を具体的に確認することが重要です。
特に確認したいのは、
基本給
各種手当
残業代
賞与
社会保険
育児時短就業給付
などです。
例えば、
1日8時間から6時間にすると基本給はいくらになるのか
役職手当はそのままなのか
賞与はどのように計算されるのか
と具体的な金額で確認すると、家計への影響を把握しやすくなります。
「時短勤務にすると給料が減ります」という説明だけでは、実際の生活への影響は分かりません。
時短勤務は時間と収入の交換でもある
時短勤務を利用すると、収入が減る可能性があります。
一方で、
保育園へ迎えに行ける
子どもと過ごす時間を確保できる
家事の時間を確保できる
といったメリットがあります。
つまり時短勤務は、
収入
と
時間
のバランスを変える働き方ともいえます。
どちらが正しいという問題ではありません。
重要なのは、どれくらい収入が減るのかを事前に把握したうえで、自分や家族に合った働き方を選択することです。
結論
時短勤務で1日8時間から6時間へ変更すると、労働時間は25パーセント減ります。
しかし、給料まで必ず25パーセント減るとは限りません。
基本給を勤務時間に比例して減額する会社もありますが、資格手当や住宅手当などがそのまま支給される場合もあります。
一方、フルタイム勤務時に残業代を多く受け取っていた人は、時短勤務によって残業がなくなることで、労働時間の減少率以上に月収が減ることもあります。
さらに、税金や社会保険料、育児時短就業給付なども手取り額に影響します。
そのため、
8時間から6時間だから給料も25パーセント減る
と単純に考えることはできません。
重要なのは、勤務時間ではなく給与の中身を一つずつ確認することです。
時短勤務を選択するときには、何時間短くなるかだけではなく、
基本給はいくらになるのか
手当はどうなるのか
残業代はどれくらい減るのか
最終的な手取りはいくらになるのか
まで確認することで、初めて家計への本当の影響が見えてきます。
参考
日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる
厚生労働省 育児時短就業給付の内容と支給申請手続