電子帳簿保存法への対応で最も重要なポイントは何かと聞かれたら、多くの専門家は「改ざん防止措置」と答えるでしょう。
電子データは紙と違って簡単に書き換えや削除ができます。そのため、電子帳簿保存法では「保存すること」だけではなく、「保存したデータが後から勝手に変更されていないこと」を証明できる仕組みを求めています。
令和7年度税制改正でも、一定の要件を満たしたシステムを利用している事業者については、重加算税の加重措置の対象外となる制度が設けられました。電子データの信頼性を確保することが、これまで以上に重要になっています。
今回は、改ざん防止措置の基本的な考え方と実務上のポイントを解説します。
改ざん防止措置が求められる理由
電子データは、紙の書類とは異なり、パソコンやスマートフォンで簡単に修正できます。
例えば、
- 金額を書き換える
- 日付を変更する
- データを削除する
- 新しいデータと差し替える
ことも技術的には難しくありません。
もし自由に変更できる状態であれば、税務上の証拠としての信頼性が失われてしまいます。
そのため電子帳簿保存法では、データが改ざんされていないことを確認できる仕組みを求めています。
タイムスタンプとは何か
改ざん防止措置として代表的なのがタイムスタンプです。
タイムスタンプとは、
「この日時にこのデータが存在していた」
ことを第三者機関が証明する仕組みです。
後から内容を書き換えるとタイムスタンプとの整合性が取れなくなるため、不正な変更を防止できます。
以前はタイムスタンプの利用が中心でしたが、現在はクラウドサービスの普及により、別の方法で要件を満たすケースも増えています。
訂正削除履歴が残るシステム
現在、多くのクラウド会計ソフトや請求書管理システムでは、訂正や削除の履歴を自動で記録する機能が備わっています。
例えば、
- 誰が
- いつ
- 何を
- どのように変更したか
が記録される仕組みです。
履歴が残ることで、不正な修正があった場合にも確認できるため、改ざん防止措置として認められています。
近年は、このような機能を備えたクラウドサービスを利用する企業が増えています。
事務処理規程という方法もある
改ざん防止措置はシステムだけではありません。
事務処理規程を整備して運用する方法も認められています。
例えば、
- データ受領後は速やかに保存する
- 保存後は勝手に削除しない
- 修正が必要な場合は責任者の承認を受ける
- 修正内容を記録する
など、社内ルールを文書化して適切に運用します。
重要なのは、規程を作るだけではなく、実際にそのルールどおり運用されていることです。
システム任せでは十分ではない
「クラウド会計を使っているから安心」と考える人もいます。
しかし、すべてのクラウドサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているとは限りません。
また、システムが対応していても、
- 利用設定
- 保存方法
- データ管理
が適切でなければ要件を満たさない場合があります。
システムを導入しただけで安心せず、自社の運用方法まで確認することが大切です。
税務調査でも重要な確認項目になる
税務調査では、電子データの保存状況だけではなく、改ざん防止措置が適切に講じられているかも確認されます。
例えば、
- どのシステムを利用しているか
- 訂正履歴は確認できるか
- 社内規程は整備されているか
- 実際の運用は規程どおりか
などが確認される可能性があります。
制度を理解するだけでなく、日頃から適切に運用しておくことが重要です。
結論
改ざん防止措置は、電子帳簿保存法の中でも最も重要なポイントの一つです。
タイムスタンプや訂正削除履歴が残るシステム、事務処理規程など、法律では複数の方法が認められていますが、共通して求められるのは「電子データの信頼性を確保すること」です。
令和7年度税制改正では、一定の要件を満たすシステムを利用している事業者について重加算税の加重措置の除外制度も創設されました。今後は制度への形式的な対応だけではなく、自社の運用体制まで含めて見直すことが、税務リスクを減らすうえでますます重要になるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年7月27日
電子帳簿保存法Q&Aを更新、7年度改正を踏まえ電子取引関係は10問追加