2027年4月から食料品の消費税率を8パーセントから1パーセントへ引き下げることで、年間約4.3兆円の税収減が見込まれています。
さらに2029年度からは、中低所得の勤労者を主な対象とする所得連動型給付を本格導入する予定です。
どちらにも財源が必要です。
しかし、2年間だけ実施する減税の財源と、毎年続ける給付制度の財源は同じではありません。
ここで重要になるのが恒久財源という考え方です。
今回は、一時的な財源と恒久財源の違いから、なぜ継続的な給付制度には安定した財源が必要なのかを考えてみます。
恒久財源とは何か
恒久財源とは、継続的に必要となる政策の支出に対して、毎年度安定して確保できる財源のことです。
例えば毎年1兆円必要になる制度をつくるのであれば、基本的には翌年も、その翌年も1兆円を確保する必要があります。
最初の1年間だけ財源を用意しても制度を続けることはできません。
そのため恒久的な政策には恒久的な財源を組み合わせることが重要になります。
一方、期間限定の政策であれば事情が違います。
必要な期間だけ財源を確保できれば、制度終了後はその財源がなくても政策を続ける必要はありません。
この違いが今回の食料品減税と所得連動型給付を理解するポイントです。
食料品減税は2年間限定
食料品の消費税率を1パーセントへ引き下げる措置は、2027年4月から2029年3月までの2年間とされています。
2029年4月には8パーセントへ戻す予定です。
つまり減税による税収減は大きいものの、制度上は期間が決まっています。
政府は年間約4.3兆円の税収減を見込んでいます。
この財源については補助金や租税特別措置の見直し、税外収入の確保など、歳出と歳入の両面から捻出する方針です。
期間限定の政策であるため、一時的な財源を組み合わせる余地があります。
一時的な財源とは何か
一時的な財源とは、毎年継続して得られるとは限らない収入などを指します。
例えば国が保有する資産を売却して得た収入があったとします。
その年には大きなお金が入ります。
しかし資産は一度売却すれば、同じ資産を翌年もう一度売ることはできません。
政府関係機関などから通常より多くの納付金を受け取れる年があったとしても、それが毎年同じ金額になるとは限りません。
こうした財源は期間限定の政策には利用しやすい一方、恒久的な制度を支える財源としては不安定です。
2029年度から給付制度は本格化する
2029年度には食料品の消費税率を8パーセントへ戻す一方で、所得連動型給付を本格導入する予定です。
就業者負担軽減支援金です。
この制度では所得に応じて給付額を変え、中低所得の勤労者を中心に支援することが想定されています。
食料品減税との大きな違いは、2年間で終了することを前提とした制度ではない点です。
2029年度だけ給付して終わるのであれば一時的な財源でも対応できます。
しかし2030年度、2031年度と制度を継続するのであれば、毎年度財源が必要になります。
そこで恒久財源が重要になります。
1兆円の給付なら毎年1兆円が必要になる
単純な例で考えてみます。
仮に所得連動型給付に年間1兆円必要だとします。
初年度の2029年度に1兆円を確保するだけでは足りません。
2030年度にも1兆円が必要です。
2031年度にも必要です。
10年間続けば、単純計算では10兆円規模になります。
給付制度は毎年対象者が存在するため、制度を続ける限り支出も続きます。
だからこそ一時的な余剰金などを使って制度を開始するだけではなく、毎年安定して入ってくる財源をあらかじめ考えておく必要があります。
恒久財源にはどのようなものがあるのか
恒久財源を確保する方法はいくつか考えられます。
税収を増やす方法があります。
既存の税制優遇を恒久的に縮小する方法もあります。
毎年度行っている歳出を恒久的に削減し、その分を給付へ振り替える方法も考えられます。
重要なのは、1回だけお金を生み出すことではありません。
毎年度繰り返し財源を生み出せる仕組みにすることです。
例えば毎年5000億円の歳出を恒久的に削減できれば、理屈のうえでは毎年5000億円を別の政策へ回せます。
一方、国有資産の売却で5000億円を得ても、その5000億円は基本的には1回限りです。
同じ5000億円でも財源としての性質が違います。
なぜ国債を恒久財源にしにくいのか
不足する財源を国債で調達する方法もあります。
しかし毎年続く制度の財源を毎年国債発行で賄えば、制度を続けるほど政府債務が積み上がっていきます。
さらに国債には利払いが必要です。
金利が上昇すれば、既存債務の借り換えなどを通じて国の利払い費が増えていく可能性があります。
そのため恒久的な給付制度をつくる場合には、毎年の借金を前提にするのではなく、安定した歳入や歳出改革によって財源を確保することが重要になります。
今回の大綱でも、2029年度以降の所得連動型給付について恒久財源を確保する必要があるとされています。
財源の安定性が制度への信頼につながる
恒久財源は単なる会計上の問題ではありません。
給付を受ける人にとっても重要です。
制度が毎年続くと思って生活設計をしていたのに、財源不足によって数年後に給付額が大幅に減れば家計に影響します。
政府が継続的な制度をつくる場合には、その制度を長く維持できる財政的な裏付けが必要です。
財源が安定しているほど、制度の予見可能性も高まります。
税や社会保障の制度では、将来も続けられる仕組みになっているかという視点が欠かせません。
財政の持続可能性とは何か
ここで出てくるのが財政の持続可能性という考え方です。
政府は税収などを集め、それを社会保障や教育、防衛、公共事業などに使っています。
支出が収入を大幅に上回る状態が続けば、その差を国債などで補う必要があります。
一時的に赤字になることと、恒久的な政策のために毎年赤字が拡大することでは意味が違います。
恒久的な制度をつくる場合には、その制度を将来にわたって無理なく続けられるかを考える必要があります。
所得連動型給付について恒久財源が重視されるのはこのためです。
2年間の減税と恒久給付を分けて考える
今回の政策は2つの財源問題が同時に存在するため、少し分かりにくくなっています。
2027年度と2028年度には、食料品の消費税減税と先行給付の財源が必要です。
こちらは期間限定です。
一方、2029年度以降は所得連動型給付の財源が必要になります。
こちらは制度を続ける限り毎年必要になります。
前者では一時的な財源を含めた対応が可能です。
後者では毎年度安定して確保できる恒久財源が重要になります。
同じ給付や減税でも、何年間続ける政策なのかによって適した財源は変わるのです。
結論
恒久財源とは、毎年続く政策を支えるために継続的に確保できる財源です。
2027年4月からの食料品消費税1パーセントは2年間限定であるため、期間限定の財源を組み合わせる余地があります。
一方、2029年度から本格導入する所得連動型給付は継続的な制度として想定されています。
そのため1年だけ財源を用意すればよいわけではありません。
2030年度にも2031年度にも給付を続けられる財源が必要です。
新しい制度を考えるときには、いくら給付するのかだけではなく、そのお金を毎年どこから確保するのかを見ることが重要です。
一時的な政策には一時的な財源を使うことができます。
恒久的な政策には恒久的な財源が必要です。
この違いを理解すると、なぜ2029年度からの所得連動型給付で恒久財源が大きな論点になっているのかが分かります。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 食品消費税、2年限り1% 税制大綱決定
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 財源1.8兆円なら3700万人に最大5万円