2027年4月から食料品の消費税率を8パーセントから1パーセントへ引き下げることで、政府の税収は年間約4.3兆円減少する見通しです。
家計にとっては減税ですが、国の財政から見れば大きな収入減です。
しかも政府は、この減税の財源について特例公債に頼らず確保する方針を示しています。
つまり、減税によって足りなくなった4.3兆円を単純に借金で穴埋めするのではなく、別の歳出を減らしたり、他の収入を確保したりする必要があります。
今回は、4.3兆円という減税財源をどのように確保しようとしているのかを考えてみます。
年間4.3兆円の税収が減る
消費税は国にとって大きな税収源です。
食料品については現在8パーセントの軽減税率が適用されています。
これを1パーセントまで引き下げるため、税収は大きく減少します。
政府の見通しでは年間約4.3兆円です。
2年間の減税であれば、単純計算で相当大きな規模の財源が必要になります。
減税とは、国民から見れば支払う税金が減ることですが、政府から見れば入ってくるお金が減ることです。
したがって減税を決めるときには、税率だけではなく、減った税収をどう補うのかも同時に考える必要があります。
国債で穴埋めすればよいわけではない
国の支出が税収などの収入を上回れば、国債を発行して資金を調達する方法があります。
しかし今回の大綱では、食料品の消費税減税と先行給付に必要な財源について、特例公債に頼らず確保する方針が示されています。
国債を発行すれば、その年の財源を用意することはできます。
ただし国債は将来返済する必要があり、利払いも発生します。
減税によって税収を減らし、その穴を国債で埋めれば、現在の負担を軽くする一方で政府債務を増やすことになります。
今回、政府が財源確保を重視している背景には、財政に対する市場の信認への配慮もあります。
まず考えられるのが補助金の見直し
財源確保の方法の1つが補助金の見直しです。
政府は企業や地方自治体、個人などにさまざまな補助金を支出しています。
政策目的を達成するために必要な補助金がある一方、社会や経済の変化によって役割が小さくなったものも考えられます。
そこで政策効果を検証し、必要性の低い補助金を縮小したり廃止したりすれば歳出を減らせます。
例えば1000億円の補助金を廃止すれば、その1000億円を別の政策に回せる余地が生まれます。
ただし補助金にはそれぞれ受益者がいます。
削減すれば企業や自治体などの負担が増える可能性があります。
減税のための歳出削減であっても、別の場所では負担増になることがあります。
租税特別措置の見直しも財源になる
もう1つが租税特別措置です。
租税特別措置とは、特定の政策目的のために通常より税負担を軽くする仕組みです。
例えば一定の設備投資をした企業に税額控除を認める制度などがあります。
一般的な税率をそのまま適用した場合と比べれば、国の税収は少なくなります。
そこで政策効果が小さくなった租税特別措置を廃止したり縮小したりすれば税収を増やすことができます。
新しい税金をつくるのではなく、既存の税制優遇を見直して財源を確保する考え方です。
ただし、租税特別措置にも投資促進や研究開発、地域振興など、それぞれ政策目的があります。
単純に廃止すればよいわけではありません。
税外収入とは何か
政府の収入は税金だけではありません。
税金以外から得る収入を税外収入といいます。
国が保有する資産から得る収入や政府関係機関からの納付金など、さまざまなものがあります。
こうした税外収入を確保することも、今回の財源対策として掲げられています。
税外収入を活用できれば、新しい増税をしなくても財源を確保できます。
一方で注意したいのは、その収入が毎年安定して得られるとは限らないことです。
一時的に得られる収入であれば、期間限定の政策には使いやすくても、恒久的な給付制度の財源としては使いにくくなります。
歳出削減は簡単ではない
財源を確保するうえで最も分かりやすい方法の1つが歳出削減です。
例えば政府全体で4.3兆円の支出を減らすことができれば、理屈のうえでは同規模の減税財源を確保できます。
しかし現実の予算には社会保障、防衛、教育、公共事業、地方への支出など、多くの政策が含まれています。
どこかの支出を削れば、その政策によって支援を受けていた人や企業、自治体に影響します。
歳出削減とは単なる数字の削減ではありません。
政府が何にお金を使うのかという優先順位を変更することでもあります。
4.3兆円という金額の大きさが問題になる
財源論で重要なのは金額の規模です。
数百億円程度であれば、複数の制度見直しを積み重ねることで確保できる場合があります。
しかし今回は年間約4.3兆円です。
1つの補助金を廃止するだけで簡単に生み出せる規模ではありません。
補助金を見直す。
租税特別措置を見直す。
税外収入を確保する。
その他の歳出を削減する。
こうした複数の方法を組み合わせる必要があります。
しかも減税開始は2027年4月です。
財源をどこから捻出するのかを予算編成のなかで具体化する必要があります。
減税の財源と給付の財源は別に考える必要がある
さらに難しいのは、今回必要になる財源が食料品減税だけではないことです。
2027年度と2028年度には中低所得者を中心とした先行給付も予定されています。
そして2029年度からは所得連動型給付が本格導入されます。
食料品減税は2年間限定なので、必要な財源も期間限定です。
一方、2029年度以降の所得連動型給付は継続する制度として設計されます。
こちらには毎年安定して確保できる恒久財源が必要です。
同じ財源という言葉でも、2年間だけ必要なお金と毎年必要なお金では性格が違います。
財源をどこから取るかで政策の効果も変わる
減税では、誰の負担が軽くなるのかに注目しがちです。
しかし財源まで考えると見方が変わります。
例えば食料品の消費税を減税して家計の負担を軽くしても、その財源を別の家計支援策の削減によって確保すれば、家計全体では効果が小さくなる可能性があります。
企業向けの税制優遇を縮小すれば、企業側の負担が増えます。
別の歳出を削減すれば、その政策の受益者に影響します。
減税の経済効果を考える場合には
誰の税負担が減るのか
だけではなく
その財源を誰が負担するのか
まで見る必要があります。
市場も財源を見ている
政府が財源確保を重視する理由には金融市場もあります。
財源を確保しないまま大規模な減税や歳出拡大を続ければ、国債発行が増える可能性があります。
国の財政運営に対する市場の見方は、国債価格や長期金利などにも関係します。
今回の大綱でも、市場の信認を得られるよう特例公債に頼らず財源を確保する方針が示されています。
つまり4.3兆円の財源問題は、税制だけの問題ではありません。
日本の財政運営全体にも関係しています。
結論
2027年4月から食料品の消費税率を8パーセントから1パーセントへ引き下げることで、年間約4.3兆円の税収減が見込まれています。
政府はこの財源を特例公債に頼らず確保する方針です。
候補となるのが補助金の見直し、租税特別措置の適正化、税外収入の確保、そして歳出削減です。
しかし4.3兆円は非常に大きな金額です。
どこか1つの制度を見直せば簡単に確保できるものではありません。
そして財源を確保するということは、別の政策への支出を減らしたり、これまで受けられた税制優遇を縮小したりする可能性があるということでもあります。
減税を考えるときには、税金がいくら安くなるのかだけを見るのでは十分ではありません。
減った税収を誰が、どのような形で負担するのかまで考える必要があります。
食料品の消費税1パーセントを実現するうえで、本当の難題の1つが年間約4.3兆円の財源確保なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 食品消費税、2年限り1% 税制大綱決定
日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 財源1.8兆円なら3700万人に最大5万円