性別役割分業とは何か 男性は仕事で女性は家庭という考え方が共働き時代にも残る理由編

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夫が外で働き、妻が家庭を守る。

かつて日本では、このような家族の姿が広く見られました。

ところが現在は、夫婦ともに働く共働き世帯が一般的になっています。

それなら家庭の役割も同じように変わったかというと、必ずしもそうではありません。

夫婦ともに働いているのに、料理、洗濯、掃除、育児などは主に妻が担当する。

一方、夫は長時間労働を前提として働く。

こうした家庭もあります。

働き方が変わっても、家庭や職場に残っている役割意識はすぐには変わらないからです。

この問題を考えるうえで重要なのが、性別役割分業という考え方です。

性別役割分業とは何か

性別役割分業とは、男性と女性という性別によって、仕事や家庭で担う役割を分ける考え方です。

代表的なのが、

男性は仕事。

女性は家庭。

という分担です。

夫が主に家計を支えるために働き、妻が家事や育児を担当する家庭像です。

もちろん、夫婦が話し合ったうえでこのような役割分担を選ぶこと自体が問題なのではありません。

問題になるのは、

男性なのだから仕事を優先するべきだ。

女性なのだから家事や育児を担当するべきだ。

というように、本人の希望や能力ではなく性別によって役割が決まってしまうことです。

前回取り上げたアンコンシャスバイアスとも深く関係しています。

専業主婦世帯が一般的だった時代

性別役割分業が広がった背景には、かつての雇用や家族の仕組みがあります。

夫が企業で長時間働き、安定した給与を得る。

妻が家庭で家事や育児を担う。

こうした分担で生活を成り立たせる家庭が多く存在しました。

夫が家庭の外で働く時間が長くても、妻が家庭内の仕事を担当することで生活を維持できます。

企業側から見ても、

家事や育児を主に担当する家族が家庭にいる社員。

は、会社の都合に合わせて働きやすい存在でした。

残業。

転勤。

出張。

休日出勤。

こうした働き方にも対応しやすかったからです。

家庭内の役割分担と企業の働き方は、別々に存在していたわけではありません。

互いに支え合っていた面があります。

共働き世帯が増えると前提が変わる

ところが夫婦ともに働くようになると、この仕組みの前提が変わります。

夫が一日8時間働く。

妻も一日8時間働く。

それでも家庭内では妻が主に家事と育児を担当する。

これでは妻側に、

仕事。

家事。

育児。

という複数の役割が集中します。

片働き世帯を前提としていた家庭内の役割だけを残したまま、共働きへ移行すれば負担に偏りが生まれます。

働く人が一人から二人になったのであれば、家庭の運営方法も変える必要があります。

しかし、生活習慣や価値観は雇用環境ほど急には変わりません。

ここに共働き時代のギャップが生まれます。

共働きでも主担当者が残る

夫婦で家事を分担している家庭でも、

家庭全体の主担当者。

が一人に固定されている場合があります。

例えば夫が、

ゴミ出し。

食器洗い。

子どもの入浴。

を担当しているとします。

かなり家事を分担しているように見えます。

しかし妻が、

献立を考える。

食材を管理する。

学校からの連絡を確認する。

子どもの予定を管理する。

日用品を補充する。

予防接種を予約する。

といった家庭全体の管理をしているかもしれません。

この場合、作業は分担されていても、家庭運営の責任者は一人のままです。

性別役割分業は、

夫は何もしない。

妻がすべて行う。

という分かりやすい形だけで残るわけではありません。

目に見えない管理責任として残ることもあります。

職場の働き方ともつながっている

家庭で家事や育児を公平に分担したくても、職場の働き方がそれを難しくすることがあります。

例えば夫の会社では、

午後6時から会議。

急な残業。

全国転勤。

休日の接待。

などが当然のように求められるとします。

一方、妻の会社では比較的勤務時間を調整しやすいとします。

すると家庭では、

迎えに行ける方が行く。

病院へ連れて行ける方が行く。

学校行事へ参加できる方が参加する。

という選択になります。

結果として勤務時間を調整しやすい側へ家庭の仕事が集中します。

そして家庭負担が増えた側は、さらに仕事を抑えざるを得なくなります。

家庭の役割分担は、夫婦だけの話し合いで完全に解決できるものではありません。

企業の働き方にも影響されます。

家事育児負担がキャリアにも影響する

家事や育児の負担が一方へ集中すると、家庭生活だけでなくキャリアにも影響します。

例えば保育園の迎えを担当する人は、毎日決まった時間までに会社を出なければなりません。

子どもが発熱すれば仕事を休む必要があります。

その結果、

残業できない。

夕方の会議に参加しにくい。

急な出張を引き受けにくい。

長期間の研修へ参加しにくい。

といった制約が生まれます。

一つ一つは小さな違いでも、何年間も続けば経験の差につながる可能性があります。

経験の差が昇進や給与の差につながれば、夫婦の収入差がさらに広がります。

すると家庭では、

収入の高い方が仕事を優先した方が合理的だ。

という判断が行われやすくなります。

こうして役割分担が固定されることがあります。

男性側も役割に縛られる

性別役割分業というと、女性の家事負担の問題として語られがちです。

しかし男性も、

男性は仕事を優先するべきだ。

という役割に縛られることがあります。

例えば男性が育児休業を取りたいと思っていても、

同僚に迷惑をかけるのではないか。

男性管理職が長期間休むのは難しい。

出世に影響するのではないか。

と考えて取得をためらうことがあります。

子どもの迎えのために早く帰りたいと思っても、周囲の男性社員が全員残業していれば帰りにくいこともあります。

男性は家庭より仕事を優先するという考え方が強ければ、男性自身も働き方を選びにくくなります。

その結果、家庭の負担がもう一方へ集中します。

性別役割分業は、男女双方の選択肢を狭める問題でもあるのです。

収入差が役割分担を固定することもある

夫婦の収入に大きな差がある場合、

収入の低い方が家事や育児を多く担当する。

という判断には経済的な合理性がある場合があります。

例えば子どもの病気でどちらかが仕事を休まなければならないとき、収入への影響が小さい方が休むという判断です。

しかし、この選択を繰り返すと、収入の低い側が仕事の経験を積みにくくなる可能性があります。

昇進機会が減る。

責任のある仕事を担当しにくくなる。

勤務時間を短くする。

場合によっては退職する。

すると収入差はさらに広がります。

そして、

これだけ収入差があるのだから、収入の低い方が家庭を担当した方がよい。

という判断がさらに合理的に見えるようになります。

現在の収入差が将来の役割分担を決め、その役割分担がさらに収入差を生むという循環が起こる可能性があります。

家庭のOSも更新する必要がある

参考記事では、無意識の価値観や思い込みを心のOSと表現しています。

この考え方は性別役割分業にも当てはまります。

例えば結婚当初、

夫は長時間働く。

妻が家庭を多く担当する。

という分担が合理的だったとします。

その後、妻もフルタイムで働くようになりました。

それでも家庭内の役割が変わらなければ、働き方だけ新しくなり、家庭のOSは古いままという状態になります。

環境が変わったのであれば、

誰が料理するのか。

誰が子どもの予定を管理するのか。

誰が急な呼び出しに対応するのか。

誰が仕事を調整するのか。

といった家庭の仕組みも見直す必要があります。

一度決めた役割分担を永久に続ける必要はありません。

男女ではなく家庭全体で考える

これからの家事や育児分担では、

男性だから。

女性だから。

ではなく、

家庭全体としてどうすれば持続できるか。

という視点が重要になります。

勤務時間。

通勤時間。

収入。

得意不得意。

仕事の繁忙期。

子どもの年齢。

本人の希望。

こうした条件を踏まえて役割を決めます。

さらに夫婦だけで解決する必要もありません。

保育サービス。

家事代行。

宅配サービス。

便利な家電。

家族や地域の支援。

などを利用して、家庭内で処理する仕事そのものを減らすこともできます。

誰が家事をするべきかではなく、家庭をどう運営すれば全員が無理なく生活できるかを考えるのです。

結論

性別役割分業とは、男性と女性という性別によって仕事や家庭で担う役割を分ける考え方です。

代表的なのが、

男性は仕事。

女性は家庭。

という分担です。

かつて専業主婦世帯が多かった時代には、こうした役割分担と企業の長時間労働型の働き方が組み合わさっていました。

しかし、共働き世帯が一般的になれば前提が変わります。

夫婦ともに働いているのに、家庭内の役割だけ以前のままであれば、一方に仕事と家事、育児の負担が集中します。

その負担は生活上の問題だけではありません。

仕事を調整する回数が増えれば、経験、昇進、収入などキャリアにも影響する可能性があります。

また男性側も、仕事を優先すべきだという役割に縛られれば、育児や家庭へ参加する選択をしにくくなります。

重要なのは、

男性だから仕事。

女性だから家庭。

という固定的な役割から考え始めないことです。

家族の状況が変われば、役割分担も変えてよいのです。

共働き時代に必要なのは、働き方だけを変えることではありません。

家庭や職場に残っている古い前提も一緒に更新することなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 働き続けるため「手放す」選択も

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