キャリア継続とは何か 育児期に仕事を減速しても長期では不利とは限らない理由編

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子どもが生まれたので残業を減らす。

育児短時間勤務を利用する。

転勤のない仕事へ一時的に移る。

こうした働き方をすると、

同期から遅れてしまう。

キャリアに傷がつく。

と不安になる人もいるでしょう。

確かに、短期的に見れば仕事の量や昇進の速度が落ちることはあります。

しかし、キャリアが30年、40年と続く時代には、数年間の速度だけで判断する必要はありません。

無理をして働き続けた結果、仕事そのものを辞めてしまえば、その後のキャリアは大きく変わります。

一時的に速度を落としてでも仕事とのつながりを維持する。

これがキャリア継続という視点です。

キャリア継続とは何か

キャリア継続とは、働き方や仕事量を変えながらでも、職業生活そのものを長期間続けていくことです。

ここで重要なのは、

常に同じ速度で働くこと。

と、

働き続けること。

は違うという点です。

例えば20代では仕事を優先して長時間働く。

30代の育児期には勤務時間を短くする。

40代になって再び仕事量を増やす。

50代では管理職や専門職として経験を生かす。

60代以降は勤務日数を減らしながら働く。

このように人生の段階に合わせて働き方を変えても、キャリアそのものは続いています。

長い職業人生では、一定の速度を維持することより、途中で完全に途切れないようにすることが重要になる場合があります。

一時的な減速とは何か

キャリアの減速とは、退職することではありません。

例えば、

残業を減らす。

短時間勤務を利用する。

責任の重い仕事を一時的に減らす。

出張の少ない仕事へ移る。

転勤を避ける。

管理職への昇進時期を遅らせる。

といった方法があります。

仕事そのものをやめるのではなく、仕事への投入時間や責任を一時的に調整するのです。

自動車でいえば、目的地へ向かうことをやめるのではなく、道路状況に合わせて速度を落とすようなものです。

育児や介護など生活上の負担が大きい時期に、仕事だけ以前と同じ速度で走ろうとすれば無理が生じることがあります。

そこで速度を調整します。

減速と離職は大きく違う

例えば育児のために1日8時間勤務から6時間勤務へ変更したとします。

勤務時間は25パーセント減ります。

給与や仕事量が減る場合もあります。

それでも会社との雇用関係は続いています。

仕事を通じて経験を積みます。

職場との人間関係も維持できます。

業界の変化にも触れ続けられます。

一方、退職すると職場とのつながりはいったん切れます。

数年後に再就職しようとしたときには、

求人を探す。

採用選考を受ける。

新しい会社の仕事を覚える。

新しい人間関係をつくる。

といったことが必要になります。

同じ数年間でも、勤務時間を減らしながら働くことと、仕事から完全に離れることでは、その後のキャリアへの影響が異なります。

短期では同期より遅れることがある

もちろん、キャリアを減速しても何も影響がないわけではありません。

例えば同期がフルタイムで働き続けている間に、自分は短時間勤務を利用しているとします。

同期は、

大きなプロジェクトを担当する。

海外勤務を経験する。

管理職になる。

新しい専門分野を身につける。

といった経験を積むかもしれません。

自分との間に経験の差が生まれる可能性があります。

そのため、

同期より昇進が遅れた。

給与差が広がった。

ということも起こり得ます。

短期的なキャリアだけを見れば、減速にはコストがあります。

しかし、ここで比較すべき相手は同期だけではありません。

減速せず無理を続けた場合の自分とも比較する必要があります。

無理を続けて離職する場合と比較する

例えば育児期の5年間について二つの選択肢があるとします。

一つはフルタイムで働き続けることです。

もう一つは短時間勤務を利用することです。

フルタイムを続けられるのであれば、仕事の経験を多く積める可能性があります。

しかし、仕事と家庭の負担が大きすぎて3年目に退職してしまったらどうでしょうか。

一方、短時間勤務を5年間利用し、その後フルタイムへ戻ることができれば、仕事とのつながりは維持されます。

つまり比較するべきなのは、

フルタイムと短時間勤務。

だけではありません。

無理なく続けられる働き方と、無理をした結果として離職する可能性。

も比較する必要があります。

長期で考えると、一時的な減速の方がキャリアを維持できる場合があります。

キャリアを長期で考える

例えば25歳から65歳まで働くとすれば、職業人生は40年間あります。

育児負担が特に大きい期間が5年間あったとしても、職業人生全体から見れば一部分です。

その5年間だけを取り出せば、

昇進が遅れた。

勤務時間が短かった。

給与が少なかった。

ということがあるかもしれません。

しかし、その後30年以上働く可能性があります。

40代や50代になってから重要な仕事を担当することもできます。

専門性を高めることもできます。

管理職になることもできます。

若い時期の数年間だけでキャリア全体が決まるとは限りません。

短期の速度ではなく、長期の走行距離を見るという考え方が必要になります。

キャリアにはアクセルとブレーキがあってよい

私たちはキャリアというと、

毎年成長する。

毎年責任が増える。

毎年給与が上がる。

という右肩上がりの姿を想像しがちです。

しかし人生には仕事以外の出来事があります。

出産。

育児。

介護。

本人や家族の事情。

学び直し。

転居。

こうした出来事がある以上、40年間ずっと同じペースで働くことは現実的ではありません。

ある時期にはアクセルを踏む。

ある時期には速度を落とす。

そして環境が変わったら再び加速する。

このようにキャリアの速度を変えることができれば、仕事を続けられる可能性が高まります。

減速している間にも経験は蓄積する

短時間勤務などを利用すると、

キャリアが止まっている。

と感じることがあります。

しかし、働き続けている限り経験は蓄積します。

例えば勤務時間が短くても、

顧客対応をする。

専門知識を使う。

社内の仕事を理解する。

後輩を指導する。

新しい制度を学ぶ。

といった経験は続きます。

また育児そのものから、

時間管理。

優先順位付け。

突発対応。

他者との調整。

限られた時間で仕事を終える力。

などが鍛えられる場合もあります。

キャリアは役職や勤務時間だけで形成されるものではありません。

経験の蓄積という視点も重要です。

会社側には再加速できる仕組みが必要になる

一時的にキャリアを減速できても、その後ずっと低速のまま固定されてしまえば問題があります。

例えば育児短時間勤務を利用した社員について、

この人は仕事より家庭を優先する人。

と決めつけてしまうと、その後フルタイムへ戻っても重要な仕事が回ってこない可能性があります。

本人が、

もう一度責任のある仕事をしたい。

管理職を目指したい。

と思っても機会が与えられなければ、キャリアの再加速は難しくなります。

企業には、

減速できる制度。

だけでなく、

再び加速できる仕組み。

も必要です。

育児期の働き方だけで、その後20年、30年のキャリアまで決めないことが重要になります。

同期との競争だけで考えない

キャリアを減速すると不安になる理由の一つが、同期との比較です。

同期が課長になった。

同期が海外赴任した。

同期の給与が上がった。

こうした違いを見ると、自分だけ遅れているように感じます。

しかし、キャリアの目的は同期と同じ時期に同じ役職へ到達することだけではありません。

働く期間が長くなれば、それぞれ違う時期にさまざまな出来事が起こります。

30代で育児に時間を使う人もいます。

40代で介護が始まる人もいます。

50代で学び直す人もいます。

キャリアの速度は人によって違って当然です。

一時的に前後することより、自分が働き続けられる状態を維持する方が重要になる場合があります。

長く働くなら持続可能性が重要になる

短距離走なら、最初から最後まで全力で走ることができます。

しかし、長距離走では同じ走り方はできません。

キャリアも同じです。

20代から60代、さらに70代まで働く人が増えれば、職業人生は非常に長くなります。

その間には仕事だけでなく、家庭や生活環境も変わります。

常に最大出力で働こうとすると、どこかで無理が生じる可能性があります。

だからこそ、

今どれだけ速く働けるか。

ではなく、

この働き方を何年続けられるか。

という視点が重要になります。

一時的に減速することは、キャリアから脱落することではありません。

長く走り続けるための速度調整と考えることができます。

結論

キャリア継続とは、常に同じ働き方を続けることではありません。

人生の状況に合わせて働き方を変えながら、職業生活そのものを長期間続けていくことです。

育児期には、

勤務時間を短くする。

残業を減らす。

責任の重い仕事を一時的に減らす。

転勤や出張を避ける。

といった減速が必要になることがあります。

短期的には同期より昇進が遅れたり、給与が少なくなったりする可能性があります。

しかし、比較するべきなのはフルタイムで働き続けられた理想的な自分だけではありません。

無理を続けた結果、仕事そのものを辞めることになった場合とも比較する必要があります。

職業人生が30年、40年と続くのであれば、数年間の減速だけでキャリア全体が決まるわけではありません。

環境が整えば、再び仕事量を増やすこともできます。

重要なのは、キャリアを止めないために速度を調整するという考え方です。

長く働き続けるためには、いつでも全力で走ることより、必要なときには減速し、また走れるようになったときに加速することの方が大切なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 働き続けるため「手放す」選択も

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