デュレーションとは何か 金利が1%上がったとき債券価格がどれだけ下がるかを考える仕組み編

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企業年金が国内債券への投資を増やすとき、利回りと同じくらい重要になるのが金利上昇による価格下落リスクです。

金利が上昇すると、すでに発行されている債券の市場価格は下落します。

しかし、すべての債券が同じ割合で下落するわけではありません。

金利が1%上昇したとき、価格が大きく下がる債券もあれば、比較的小さな下落で済む債券もあります。

この金利変動に対する債券価格の動きやすさを考えるうえで重要になるのがデュレーションです。

デュレーションを理解すると、なぜ金利上昇局面で長期債ほど価格変動に注意する必要があるのかが見えてきます。

デュレーションとは何か

デュレーションは、債券投資における金利リスクを測る代表的な指標です。

もともとは、債券から受け取る利息や元本などのキャッシュフローを考慮して、投資資金を平均的に何年で回収するのかを示す考え方です。

そこから発展して、金利が変化したときに債券価格がどの程度動くのかを測る指標としても利用されています。

企業年金の運用では、

この債券は利回りが何%なのか

だけを見るのではありません。

金利がさらに上昇した場合、

この債券の価格はどの程度下落する可能性があるのか

というリスクも考える必要があります。

その判断に使われるのがデュレーションです。

デュレーションが長いほど価格が動きやすい

基本的な関係は比較的単純です。

デュレーションが長い債券ほど、金利変動による価格変動が大きくなります。

反対にデュレーションが短ければ、金利が変化しても債券価格の変動は比較的小さくなります。

例えば、単純化してデュレーションが5年程度の債券があるとします。

金利が1%上昇した場合、その債券価格はおおむね5%程度下落するという目安になります。

デュレーションが10年程度なら、おおむね10%程度下落するというイメージです。

実際の価格変動は金利の動きや債券の条件などによって異なるため、必ずこの通りになるわけではありません。

それでも金利リスクを把握する目安として非常に重要です。

なぜ長期債ほど価格が大きく動くのか

例えば1年後に100万円が戻ってくる債券と、30年後に100万円が戻ってくる債券を考えてみます。

市場金利が変化したとき、その影響を長期間受けるのは30年債です。

30年間にわたって以前の低い金利条件に縛られることになるからです。

例えば利回り1%の30年債を購入した直後に、市場金利が3%へ上昇したとします。

新しく購入する人からすると、30年間1%程度の収益しか得られない債券より、3%程度を期待できる新しい債券の方が魅力的です。

古い30年債を買ってもらうには、その市場価格を大きく下げる必要があります。

一方、満期まであと1年しかない債券なら、低い金利条件に縛られる期間は短くなります。

1年後には元本が戻り、その時点の高い金利で再投資できるからです。

この違いが長期債ほど金利変動に敏感になる理由です。

残存期間とデュレーションは同じではない

ここで注意したいのが、債券の残存期間とデュレーションは完全に同じものではないということです。

例えば満期まで10年の債券があったとしても、デュレーションが必ず10年になるわけではありません。

債券では満期に元本を受け取るだけでなく、途中で利息を受け取ることがあります。

その利息も含めて、いつ資金を回収するのかを考えるためです。

途中で多くの利息を受け取れる債券ほど、資金の一部を早く回収できます。

そのため一般的には、利息を支払う通常の債券のデュレーションは満期までの期間より短くなります。

ただし残存期間が長い債券ほどデュレーションも長くなりやすいという基本的な関係があります。

金利1%上昇の影響を考える

企業年金が100億円の債券を保有しているとします。

その債券ポートフォリオのデュレーションが5年程度だったとします。

金利が1%上昇した場合、単純化すれば債券価格はおおむね5%程度下落する可能性があります。

100億円なら約5億円です。

一方、デュレーションが10年程度なら、同じ1%の金利上昇でもおおむね10%程度の価格下落となる可能性があります。

100億円なら約10億円です。

企業年金のように運用資産が大きい投資家では、デュレーションの違いが数億円、数十億円という評価額の差につながることがあります。

だからこそ債券の利回りだけでなくデュレーション管理が重要になります。

金利が下がれば反対に価格は上がる

デュレーションによる価格変動は、金利上昇だけの問題ではありません。

金利が低下すれば反対のことが起こります。

例えばデュレーションが10年程度の債券なら、金利が1%低下すると価格が大きく上昇する可能性があります。

つまりデュレーションが長い債券は、

金利上昇時には大きく値下がりしやすい

金利低下時には大きく値上がりしやすい

という特徴があります。

デュレーションが長いこと自体が悪いわけではありません。

金利変動への感応度が高いという意味なのです。

金利上昇局面では短い債券が有利なのか

これだけを見ると、金利上昇局面では短期債だけを持てばよいように思えます。

確かに短期債はデュレーションが短いため、金利上昇による価格下落を抑えやすくなります。

さらに満期が早く来るため、戻ってきた資金をより高い金利の債券へ再投資できます。

しかし企業年金には別の事情があります。

20年後や30年後まで年金を支払う必要があるからです。

長期債を利用すれば、現在の利回りを長期間確保できます。

短期債だけでは、満期になるたびにその時点の金利で再投資しなければなりません。

将来金利が低下すれば、低い利回りで再投資することになります。

これを再投資リスクと考えることができます。

長期債には現在の金利を固定する役割がある

例えば現在、長期債から3%程度の利回りを期待できるとします。

企業年金の予定利率が2%台なら、この利回りを長期間確保することには大きな意味があります。

今後金利が1%まで低下したとしても、既に購入した固定利付債券の利息条件が市場金利に合わせて1%へ下がるわけではありません。

つまり長期債には、

現在の高い金利を長期間固定する

という役割があります。

その代わり、購入後さらに金利が上昇すれば市場価格は大きく下落します。

企業年金はこの二つの特徴を比較しながらデュレーションを決める必要があります。

企業年金では負債側のデュレーションも重要になる

企業年金のデュレーション管理が一般的な債券投資と違うのは、資産だけを見ればよいわけではないことです。

企業年金には将来支払う年金という負債があります。

10年後、20年後、30年後に給付を支払うのであれば、その将来の支払いにも金利変動の影響があります。

そこで、

年金資産のデュレーション

年金債務のデュレーション

をできるだけ対応させるという考え方が重要になります。

資産と負債の金利感応度を近づければ、金利が動いたときの企業年金全体への影響を抑えやすくなります。

これは企業年金のALMやLDIという運用につながる重要な考え方です。

満期まで持つ場合でもデュレーションは重要

債券を満期まで持つなら、途中の価格変動は気にしなくてもよいのではないかと思うかもしれません。

確かに満期まで保有できれば、途中の市場価格下落がそのまま最終的な損失になるとは限りません。

しかし企業年金では、すべての債券を必ず満期まで持てるとは限りません。

年金給付のために資産を売却する可能性もあります。

政策アセットミックスの変更によって債券を売却する場合もあります。

さらに時価評価によって年金資産の状況を把握する必要もあります。

そのため満期保有を基本とする場合でも、金利が動いたときに資産価値がどの程度変化するのかを把握しておくことは重要です。

国内債券回帰では利回りとデュレーションをセットで見る

企業年金が国内債券を増やしているというニュースを見ると、どうしても国債利回り3%という数字に目が向きます。

しかし高い利回りだけを見て長期債を大量に購入すると、その後さらに金利が上昇した場合、大きな価格下落が発生する可能性があります。

反対に価格下落を恐れて短期債だけにすると、将来金利が低下したときに現在の高い利回りを長期間確保できません。

そこで重要になるのが、

どの程度の利回りを確保するのか

どの程度のデュレーションを取るのか

という二つの判断です。

企業年金の国内債券回帰は、単純に国債の購入額を増やすだけではありません。

どの年限の債券をどの程度保有するのかという設計まで含めて考える必要があるのです。

結論

デュレーションとは、債券の金利変動に対する価格の動きやすさを考えるための重要な指標です。

基本的にはデュレーションが長いほど、金利変動による債券価格の変化が大きくなります。

単純化すれば、デュレーションが5年程度なら金利が1%上昇したとき価格が約5%下落し、10年程度なら約10%下落するという目安になります。

長期債は金利上昇時の価格下落が大きい一方、現在の高い利回りを長期間固定できるというメリットがあります。

短期債は価格変動を抑えやすい一方、満期後に低い金利で再投資しなければならなくなる可能性があります。

企業年金には数十年先まで続く年金給付があります。

そのため単純にデュレーションを短くして価格変動を抑えればよいわけではありません。

将来の年金支払いの時期まで考えながら、資産側のデュレーションを設計する必要があります。

企業年金の国内債券回帰を考えるとき、利回りが何%になったのかだけでは十分ではありません。

その利回りを何年間固定し、その代わりにどの程度の金利リスクを引き受けるのか。

それを考えるための物差しがデュレーションなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月2日朝刊 企業年金、国内債に回帰 配分増加意向、過去最大 利回り回復で投資妙味

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