定款を見直さない会社ほど事業承継で苦労する理由 会社法実務編

経営

事業承継では、自社株評価や後継者育成、相続税対策などに多くの時間が費やされます。

しかし、それらと同じくらい重要でありながら、見落とされやすいものがあります。

それが「定款」です。

定款は会社の憲法とも呼ばれる基本ルールです。しかし、中小企業では設立以来一度も見直されていないケースも珍しくありません。

長年変更されていない定款は、現在の会社法や実際の経営状況と合わなくなっていることがあり、事業承継の場面で思わぬ障害となることがあります。

今回は、定款を定期的に見直す重要性について考えてみます。

定款は会社運営の基本ルール

定款には、会社の商号や目的、本店所在地、発行可能株式総数など、会社運営の基本事項が定められています。

また、株式譲渡制限や役員の任期、株主総会の運営方法など、会社経営に欠かせないルールも記載されています。

普段は定款を見る機会が少ないため、その存在を意識することはあまりありません。

しかし、会社の重要な意思決定では必ず確認される重要書類です。

古い定款には現在の制度と合わない内容が残っていることがある

会社法はこれまで何度も改正されてきました。

そのため、設立当時の定款をそのまま使っている会社では、現在の制度とは異なる規定が残っていることがあります。

また、会社の事業内容が変わっているにもかかわらず、目的欄が昔のままになっているケースも少なくありません。

定款と実際の会社運営に違いが生じると、事業承継や金融機関との取引、許認可申請などで見直しが必要になることがあります。

事業承継では定款の内容が大きな意味を持つ

後継者へ会社を引き継ぐ際には、株式譲渡や役員変更など、会社法上の手続きが数多く発生します。

その際、株式譲渡制限に関する規定や株主総会の決議方法などは、定款に基づいて判断されます。

定款の内容を十分に確認しないまま手続きを進めると、予定どおりに承継が進まないこともあります。

円滑な事業承継を実現するためには、早い段階で定款を確認し、必要に応じて見直しておくことが重要です。

M&Aでも定款は重要な確認資料になる

会社を第三者へ譲渡するM&Aでは、買い手企業は定款を必ず確認します。

会社の基本情報だけでなく、株式譲渡制限の有無や機関設計など、多くの重要事項が記載されているためです。

もし定款が現状に合っていなければ、買い手に管理体制への不安を与える可能性があります。

利益や財務内容だけではなく、法務面の整備状況も企業価値の一部として評価される時代になっています。

定款は一度作れば終わりではない

定款は設立時に作成するだけの書類ではありません。

会社の成長や制度改正に合わせて、定期的に見直すことが望まれます。

例えば、

・事業内容が変わったとき

・役員構成を見直したとき

・事業承継を考え始めたとき

・M&Aを検討するとき

こうしたタイミングは、定款を見直す絶好の機会です。

会社の実態に合った定款にしておくことが、将来の手続きをスムーズにします。

税理士は定款確認のきっかけをつくれる

税理士は定款を作成する専門家ではありません。

しかし、事業承継や組織再編、自社株対策の相談を受ける機会は数多くあります。

その際、

「最近、定款をご覧になりましたか」

という一言が、会社の将来を守るきっかけになることがあります。

必要に応じて司法書士や弁護士と連携しながら定款の見直しを進めることで、法務と税務を一体とした質の高い経営支援が可能になります。

結論

定款は会社設立時だけに必要な書類ではありません。

会社の成長や制度改正、事業承継に合わせて見直していくべき重要な経営資料です。

長年変更していない定款ほど、現在の会社の姿と合わなくなっている可能性があります。

事業承継を成功させるためには、自社株や税金だけではなく、定款という会社の基本ルールにも目を向けることが欠かせません。

会社の未来を円滑につないでいくためにも、この機会に一度、自社の定款を確認してみてはいかがでしょうか。

参考

企業実務 2026年7月号

株券発行会社であることのリスク

タイトルとURLをコピーしました