大学の返礼品はどこまで認められるのか 寄付と特別な利益の境界編

税理士
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大学への寄付を増やすため、寄付者に記念品や大学独自の商品、イベントへの参加機会などを提供する取り組みがあります。

一方、ふるさと納税を利用した大学支援では、学生が生産に関わった乳製品やワイン、学生食堂の食事券などを返礼品として提供する例もあります。

ここで注意したいのは、ふるさと納税の返礼品と大学への直接寄付に対する返礼を同じように考えることはできないという点です。

税制上の寄附金として優遇を受けるためには、寄付者に寄付の対価となるような特別な利益が及んでいないことなどが重要になります。

寄付なのか、それとも商品やサービスを受け取るための支払いなのか。

大学が寄付を拡大していくうえでは、この境界を理解しておく必要があります。

寄付に返礼品を付けるという考え方

寄付は本来、対価を求めずに財産を提供する行為です。

例えば大学の奨学金制度を支援するため十万円を寄付した場合、寄付者は十万円相当の商品やサービスを受け取ることを目的としているわけではありません。

大学の教育や研究を応援するために資金を提供します。

ただ、大学側が寄付者へ感謝の気持ちを示すことはあります。

寄付者の名前を芳名録に掲載したり、大学の活動報告を送ったり、記念品を贈ったりすることがあります。

こうした取り組みには、寄付者との関係を維持する意味があります。

一度寄付して終わるのではなく、大学の活動を継続して知ってもらい、次の寄付につなげるためです。

問題になるのは、寄付者が受け取る利益が大きくなり、実質的に商品やサービスを購入しているのと変わらなくなる場合です。

ふるさと納税では返礼品が制度に組み込まれている

ふるさと納税では、多くの自治体が寄付者へ返礼品を提供しています。

大学支援型のふるさと納税でも同様です。

関西大学と大阪府吹田市の取り組みでは、学生食堂の食事券や講演の聴講権などが用意されています。

北海道江別市の酪農学園大学では、学生らが飼育した牛の乳を使った乳製品などが返礼品となっています。

信州大学では、農学部の学生が育てたヤマブドウを使ったワインなどが、長野県南箕輪村への寄付の返礼品となっています。

ただし、これらの場合、寄付を受ける主体は大学ではなく自治体です。

自治体がふるさと納税として寄付を受け、制度上のルールに従って返礼品を提供します。

そのうえで寄付金の一部を大学支援に活用します。

大学への直接寄付に大学が返礼品を付ける場合とは、制度上の仕組みが異なります。

ふるさと納税の返礼品にもルールがある

ふるさと納税であれば、どのような返礼品でも自由に提供できるわけではありません。

返礼品については、自治体が自由に競争した結果、豪華な返礼品による寄付の獲得競争が過熱した時期がありました。

そのため、現在は返礼品の調達額や地場産品であることなどについて一定の基準が設けられています。

大学と自治体が連携して返礼品をつくる場合も、このルールから外れることはできません。

大学でつくった商品だから自動的に返礼品として認められるわけではなく、ふるさと納税の返礼品として必要な条件を満たす必要があります。

そのため大学発の商品を返礼品として利用する場合には、大学だけではなく自治体との連携が重要になります。

大学への直接寄付では考え方が異なる

大学への直接寄付では、寄付者が大学や学校法人へ直接資金を提供します。

一定の学校法人などへの寄付については、所得税の寄附金控除や税額控除を利用できる場合があります。

こうした税制上の優遇を受ける寄付では、寄付者が特別な利益を受けるものではないことなどが重要になります。

例えば十万円を大学へ支払い、その見返りとして十万円相当の商品を受け取るのであれば、実質的には寄付というより商品の購入に近くなります。

商品やサービスという明確な対価を受け取る支払いまで税制上の寄付として扱えば、通常の商品購入との公平性が保てなくなります。

そのため、大学が直接寄付を募集する場合には、寄付者への返礼と税制上の寄附金の要件との関係を慎重に考える必要があります。

特別な利益とは何か

税制上の寄附金を考える際に重要になるのが、寄付によって寄付者に特別な利益が及ぶかどうかです。

寄付したことによって、寄付者自身やその関係者が経済的な利益を得るような場合には問題になる可能性があります。

分かりやすい例として、寄付額と同程度の商品やサービスを提供する場合があります。

形式上は寄付と呼んでいても、実態として商品を購入するための支払いであれば、通常の寄付とは性質が異なります。

一方、大学からのお礼状や活動報告など、寄付者との関係を維持するための対応まで直ちに問題になるわけではありません。

重要なのは、寄付と引き換えに寄付者がどのような利益を受けているのかという実態です。

寄付者の名前を掲載する場合

大学では、高額寄付者などの名前を芳名録や施設内に掲載することがあります。

寄付者への感謝を示すとともに、大学を支援している人を社会に紹介する意味があります。

企業が寄付した場合には企業名が掲載されることもあります。

こうした扱いについても、単純に名前が掲載されたから寄付ではなくなるというものではありません。

ただし、企業に対する広告や宣伝の提供という性格が強くなれば、純粋な寄付とは異なる問題が生じます。

大学側は寄付者への感謝と、商品やサービスの対価として提供する利益を区別して制度を設計する必要があります。

大学独自の商品を贈る場合

大学には様々な独自商品があります。

大学名が入った文房具や衣料品、研究成果を利用した食品、農学部などで生産された農産物などです。

こうした商品は寄付者にとって魅力的な返礼になり得ます。

ただし、直接寄付に対して高額な商品を提供すると、寄付と購入の境界が曖昧になります。

そこで大学にとって有力な方法となるのが、自治体のふるさと納税と組み合わせることです。

大学発の商品が地場産品基準など必要な要件を満たせば、自治体へのふるさと納税の返礼品として提供できる場合があります。

寄付者は自治体へふるさと納税を行い、返礼品を受け取ります。

自治体は寄付金の一部を大学支援に活用します。

この方法なら、大学への直接寄付とは異なる制度の中で返礼品を活用できます。

体験を返礼品にする方法もある

大学が提供できる価値は商品だけではありません。

教育や研究、キャンパスそのものも大学独自の資源です。

例えば公開講座への参加やキャンパスツアーなどを、ふるさと納税の返礼として活用する方法があります。

こうした体験型の返礼品には、単に物を受け取る以上の意味があります。

寄付者が実際に大学を訪れ、学生や研究者の活動を知るきっかけになるからです。

卒業生であれば、久しぶりに母校を訪れることで大学との関係を取り戻す機会にもなります。

返礼品を寄付者獲得のための商品としてだけではなく、大学の教育や研究を伝える手段として設計することができます。

返礼品から共感による寄付へつなげる

返礼品には寄付への心理的なハードルを下げる効果があります。

これまで大学へ寄付したことがない人でも、魅力的な返礼品があれば最初の寄付をする可能性があります。

しかし、大学にとって本当に重要なのは、その人が返礼品を受け取って終わることではありません。

寄付をきっかけに大学の教育や研究を知ってもらい、大学が社会に提供している価値に共感してもらうことです。

最初はふるさと納税の返礼品を目的として寄付した人が、その後は返礼品のない大学への直接寄付を行うかもしれません。

さらに毎年の継続寄付や大口寄付へ発展する可能性もあります。

返礼品は寄付文化の最終地点ではなく、支援者との関係を始める入口として利用することに意味があります。

結論

大学への寄付と返礼品の関係を考える場合、ふるさと納税と大学への直接寄付を区別することが重要です。

大学支援型のふるさと納税では、寄付先は自治体です。

自治体がふるさと納税のルールに従って返礼品を提供し、寄付金の一部を大学支援に活用します。

一方、大学への直接寄付では、一定の要件を満たせば所得税の所得控除や税額控除を受けられる場合があります。

そのため、寄付者に寄付の対価となるような特別な利益が及んでいないことなど、税制上の寄附金としての要件を考える必要があります。

返礼品は寄付を増やすための有効な入口になり得ます。

ただし、返礼品そのものを目的とするだけでは、大学への長期的な支援にはつながりません。

大学に求められるのは、返礼品を通じて教育や研究の価値を知ってもらい、最終的には大学そのものを応援したいと思う支援者を増やすことです。

寄付と対価の境界を守りながら、返礼品を支援者との関係づくりにどう生かすかが、これからの大学ファンドレイジングの重要な課題になります。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日 朝刊 大学、個人寄付呼び込む ふるさと納税活用し文化醸成

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