外貨で海外不動産を買うとなぜ課税されるのか 円に換えていなくても為替利益が実現する理由編

税理士
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海外不動産を購入するとき、以前から保有していたドルなどの外貨を購入資金に使うことがあります。

この場合、円を使わず外貨のまま不動産を購入しているため、為替についての利益はまだ確定していないように感じるかもしれません。

しかし税務上は、保有していた外貨で外貨建て不動産を購入した時点で、それまで外貨に生じていた為替差益が課税対象になる場合があります。

外貨が不動産という別の資産に変わった時点で、それまでの為替変動による利益が実現したと考えるからです。

外貨建て不動産の購入とは何か

例えば、1ドル100円のときに1000万円をドルへ交換したとします。

為替手数料を考えなければ10万ドルを取得できます。

その後、円安が進んで1ドル150円になったとします。

10万ドルの円換算価値は1500万円です。

ここで、この10万ドルを使って海外の不動産を購入したとします。

本人の手元には円が戻ってきていません。

10万ドルという外貨が海外不動産という資産に変わっただけです。

しかし円換算して考えれば、1000万円相当で取得したドルを1500万円相当の価値で使用したことになります。

単純化すれば500万円の為替差益が生じていることになります。

外貨から資産への交換と考える

なぜ円に戻していないのに為替差益が生じるのでしょうか。

ポイントは、外国通貨そのものも資産として考えることです。

円でドルを取得します。

その後、円安によってドルの円換算価値が上昇します。

そして、そのドルを手放して海外不動産を取得します。

つまり、ドルという資産を不動産という別の資産へ交換しています。

円を途中で受け取っていなくても、保有していたドルを処分したことには変わりません。

このため、それまでドルに生じていた為替差益が実現したと考えられるわけです。

一度円へ戻して考えると分かりやすい

先ほどの例を、一度円へ戻す取引に置き換えてみます。

1ドル100円のときに1000万円で10万ドルを取得します。

その後1ドル150円になったところで、10万ドルを円へ戻します。

1500万円になります。

ここで500万円の為替差益が生じます。

そして、その1500万円を再びドルへ交換して海外不動産を購入したとします。

この場合、途中で500万円の為替差益が実現したことは分かりやすいでしょう。

実際には、ドルを円へ戻してから再びドルに替えるという手続きをする必要はありません。

ドルをそのまま不動産の購入代金として使うことができます。

しかし、円への交換を省略したからといって、それまでに生じていた為替差益がなくなるわけではありません。

不動産自体の値上がり益とは別に考える

さらに重要なのが、外貨についての為替差益と、不動産そのものについての損益を分けることです。

例えば1000万円相当で取得したドルが、円安によって1500万円相当になり、そのドルで海外不動産を購入したとします。

ここまでが外貨についての為替差益の問題です。

その後、不動産価格が上昇して売却すれば、今度は不動産の譲渡による損益を考えることになります。

逆に不動産価格が下落することもあります。

外貨を取得してから不動産を購入するまでの為替損益と、不動産を取得してから売却するまでの不動産自体の損益は、税務上それぞれ検討する必要があります。

不動産が値下がりしても為替差益が消えるとは限らない

例えば大幅な円安によって500万円の為替差益が生じた時点で海外不動産を購入したとします。

その後、現地の不動産市場が悪化し、不動産価格が下落したとします。

投資家から見れば、一連の海外投資全体としては利益が少なくなった、あるいは損失になったと感じるかもしれません。

しかし、外貨を不動産購入に使用した時点の為替差益と、その後の不動産の値下がりは別の取引です。

投資全体で損をしているから、先に生じた為替差益への課税も自動的になくなるとは限りません。

ここが海外資産投資の税務を難しくするポイントです。

購入時の為替レートが重要になる

海外不動産では、購入時の円換算額も重要です。

日本の税務では、海外にある不動産について所得や譲渡損益を計算するときにも円換算が必要になる場面があります。

そのため、購入代金が何ドルだったかだけではなく、その取引時点で円換算するといくらだったのかという情報を残しておく必要があります。

外貨そのものの取得時レートと、不動産を購入した時点のレートは同じとは限りません。

何年も前に取得したドルを使うのであれば、その差が大きくなっていることもあります。

海外不動産は取引金額が大きい

海外旅行で使う数万円程度の外貨とは異なり、不動産は取引金額が大きくなります。

そのため、為替レートが少し変わっただけでも円換算した金額には大きな差が生じます。

例えば10万ドルなら、為替レートが1ドル100円から150円になるだけで円換算額は1000万円から1500万円へ変わります。

100万ドルなら1億円から1億5000万円です。

長期間保有していた外貨を海外不動産の購入資金に使う場合には、為替差益が想像以上に大きくなっている可能性があります。

納税資金にも注意する

外貨で不動産を購入すると、もう一つ問題があります。

円の現金を受け取っていないことです。

外貨は不動産に変わっています。

それでも為替差益について税金が発生すれば、日本で納税するための資金を別に用意する必要があります。

不動産を購入するために手元資金の多くを使ってしまうと、後から税負担が判明して資金繰りに困ることも考えられます。

高額な海外資産を外貨で購入するときは、購入代金だけではなく税金まで含めた資金計画が重要です。

外貨の取得記録を残しておく

海外不動産を購入する場合、外貨の取得履歴を残しておくことも欠かせません。

いつドルを取得したのか。

何ドル取得したのか。

取得時の為替レートはいくらだったのか。

円換算した取得価額はいくらだったのか。

そのドルをいつ不動産購入に使ったのか。

購入時の為替レートはいくらだったのか。

こうした情報があれば、為替差益を確認しやすくなります。

長期間の海外投資では、数年前や十数年前の取引を後から確認しなければならないこともあります。

取引時点から記録を保存しておくことが重要です。

結論

保有している外貨を使って外貨建て不動産を購入した場合、円へ交換していなくても、それまで外貨について生じていた為替差益が課税対象になる場合があります。

重要なのは、円を受け取ったかどうかではありません。

外貨という資産を手放し、不動産という別の資産を取得したという点です。

さらに、外貨についての為替差益と、その後に生じる不動産自体の譲渡損益は分けて考える必要があります。

海外不動産は取引金額が大きいため、為替変動による利益も大きくなりやすくなります。

海外資産へ投資するときには、購入価格だけではなく、外貨をいつ、いくらで取得したのかまで管理しておくことが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年9月12日朝刊 外貨預金、課税場面広く

日本経済新聞 2026年9月12日朝刊 所得大きいほど税率高く

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