築古マンションを購入してリノベーションする魅力の一つは、自分の生活に合わせて間取りを変更できることです。
細かく区切られた古い間取りを広いリビングにしたり、独立していたキッチンをリビングと一体化したりすれば、築年数の古いマンションでも現代的な住空間につくり替えることができます。
しかし、マンションならどの壁でも自由に取り払えるわけではありません。
特に注意したいのが壁式構造のマンションです。
壁式構造では、室内にある壁の一部が単なる間仕切りではなく、建物そのものを支える重要な役割を担っています。そのため、リノベーションで撤去できない壁が存在します。
築古マンションを購入して大胆な間取り変更を考えている場合には、まず建物がどのような構造で造られているのかを確認することが重要です。
壁式構造とは何か
鉄筋コンクリート造のマンションには、建物を支える方法によっていくつかの構造があります。
その一つが壁式構造です。
壁式構造では、柱と梁を中心として建物を支えるのではなく、鉄筋コンクリートで造られた壁や床などを一体化して建物を支えます。
箱を組み合わせたような構造をイメージすると分かりやすいでしょう。
建物を支えている壁は耐力壁などと呼ばれ、建物にかかる重さや地震などによって加わる力を受け止めています。
このため壁式構造では、室内から見れば普通の壁に見えても、建物全体にとって重要な構造部分になっている場合があります。
比較的低層の鉄筋コンクリート造マンションなどで採用されてきた構造で、築年数の古い中古マンションを探していると出会うことがあります。
ラーメン構造とは何が違うのか
マンションで広く使われているもう一つの代表的な構造がラーメン構造です。
ここでいうラーメンは食べ物のラーメンではありません。
ドイツ語で枠や骨組みを意味する言葉に由来しています。
ラーメン構造では、柱と梁を強固につなぎ合わせた骨組みによって建物を支えます。
建物の重さや地震などによる力を主に柱と梁が受け止めるため、住戸内部の壁には建物を支える役割を持たない間仕切り壁を設けやすくなります。
そのため、間仕切り壁を撤去したり、新しい位置に壁を設けたりすることで、比較的自由に間取りを変更できる場合があります。
一方、壁式構造では壁そのものが建物を支えています。
つまり、ラーメン構造と壁式構造では「建物を何で支えているのか」が大きく違うのです。
壁式構造には柱や梁が目立ちにくい特徴があります
壁式構造にはメリットもあります。
柱と梁による大きな骨組みを室内に設ける必要がないため、住戸内に柱や梁が大きく張り出しにくく、室内をすっきりと使える場合があります。
家具を壁際に置きやすいこともメリットです。
また、鉄筋コンクリートの壁によって建物を支えるため、構造として高い剛性を確保しやすいという特徴があります。
したがって、壁式構造だから建物として劣っているということではありません。
問題になるのは、購入者が大規模な間取り変更を希望するときです。
完成した状態の室内だけを見ていると、どの壁が構造上重要なのか判断することは難しいためです。
構造壁はなぜ撤去できないのか
マンションの室内にある壁には、大きく考えると、部屋を区切るだけの壁と建物を支える壁があります。
部屋を区切るだけの間仕切り壁であれば、一定の条件のもとで撤去できる場合があります。
しかし、建物を支えている構造壁はそうはいきません。
構造壁を撤去すると、建物が設計されたときに想定していた力の伝わり方が変わってしまいます。
特に地震が発生した場合には、建物に横方向から大きな力が加わります。
壁式構造では、その力を耐力壁などによって受け止めています。
一つの住戸の所有者が自分の都合だけで構造壁を撤去すれば、自分の部屋だけではなく建物全体の安全性に影響する可能性があります。
そのため、区分所有者が自由に撤去できるものではありません。
自分の部屋にある壁でも自分のものとは限りません
マンションのリノベーションを考えるときに重要なのが、専有部分と共用部分という考え方です。
マンションを購入すると、住戸の内部は自分の所有する専有部分になります。
しかし、住戸を囲んでいる構造躯体まで自由に変更できるわけではありません。
建物の安全性に関係する柱、梁、耐力壁などは、一般的に共用部分として扱われます。
つまり、自分が購入した住戸の中から見える壁であっても、そのすべてを自分の判断だけで壊せるわけではないのです。
この点は戸建て住宅とは大きく異なります。
マンションは一つの建物を多数の所有者で共同所有しているため、一戸の工事が建物全体へ影響しないように一定の制限が設けられています。
間取り図だけでは撤去できる壁か判断できません
中古マンションの広告に掲載されている間取り図を見ながら、「この壁をなくせば広いリビングになる」と考える人もいるでしょう。
しかし、販売用の間取り図だけから、その壁を撤去できるかどうかを判断することはできません。
重要なのは建物の設計図面などです。
壁の位置や厚さ、建物の構造などを確認し、どの壁が構造上重要なのかを判断する必要があります。
また、壁そのものを撤去できても、その中に電気配線や設備配管などが通っていることもあります。
構造上撤去できることと、希望するリノベーションが簡単に実現できることは同じではありません。
ラーメン構造なら何でも自由にできるわけではありません
では、ラーメン構造のマンションを選べば自由にリノベーションできるのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
ラーメン構造では間仕切り壁を変更しやすい傾向がありますが、柱や梁は当然撤去できません。
大きな梁がキッチンの排気ダクトの経路を妨げたり、柱の位置によって希望する間取りが実現できなかったりすることがあります。
さらに、水回りの位置は給排水管の配置や床下のスペースによって制約されます。
管理規約によって床材や工事方法が制限されていることもあります。
したがって、ラーメン構造なら自由、壁式構造なら不自由という単純な二分法で考えるべきではありません。
それぞれの物件について具体的に確認する必要があります。
築古マンションではリノベーション前提の内覧が重要です
リノベーションを前提として築古マンションを購入するのであれば、一般的な住宅の内覧とは少し違った視点が必要です。
現在の壁紙が古い、キッチンが使いにくい、浴室が古いといった問題は、リノベーションによって変更できる可能性があります。
むしろ重要なのは、後から変更できない部分です。
建物の構造、柱、梁、耐力壁、天井高、配管などを確認する必要があります。
希望するリノベーションのイメージがある場合には、購入前の段階で建築士やリノベーション会社などの専門家に相談し、実現可能か確認する方法があります。
物件を購入してから「この壁は壊せません」と分かれば、住宅購入そのものの目的が達成できなくなる可能性があるからです。
リノベーションの自由度も物件価値の一つです
中古マンションを比較するときには、立地、広さ、築年数、価格などが重視されます。
しかし、リノベーションを前提とする場合には、間取りをどこまで変更できるかという自由度も物件選びの重要な条件になります。
同じ70平方メートルのマンションでも、構造や配管などによって実現できる間取りは異なります。
購入価格が安くても、希望するリノベーションができなければ、その人にとっては必ずしも割安な物件とはいえません。
逆に築年数が古くても、希望する住まい方に適した構造で、建物全体が適切に管理されていれば、魅力的な選択肢になる可能性があります。
築年数という一つの数字だけでは、築古マンションの価値を判断できないのです。
結論
壁式構造とは、柱と梁を中心として建物を支えるのではなく、鉄筋コンクリートの壁や床などによって建物を支える構造です。
柱や梁の出っ張りが少なく、室内をすっきり使いやすいという特徴がある一方、建物を支える構造壁を自由に撤去することはできません。
これに対してラーメン構造では、柱と梁によって建物を支えるため、住戸内部の間仕切り壁を変更しやすい傾向があります。
ただし、ラーメン構造であっても、柱や梁、配管などによる制約があるため、すべての間取り変更が自由にできるわけではありません。
築古マンションをリノベーションする場合に重要なのは、古いものをどこまで新しくできるかだけではありません。
最初に確認すべきなのは「変えられないものは何か」です。
特に大胆な間取り変更を目的として中古マンションを購入する場合には、購入後ではなく購入前に建物の構造を確認し、希望するリノベーションが可能かどうかを専門家に確認しておくことが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 築古物件 リノベ不可の盲点
日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 耐震性、地盤の固さも重要