土地は何十年、あるいは何百年という長い年月にわたって所有され続ける財産です。そのため、土地そのものは変わらなくても、所有者や利用方法、周囲の環境は少しずつ変化していきます。
こうした変化の積み重ねが、境界トラブルを引き起こす原因になります。
相続税申告や不動産売買では、「境界は当たり前に分かっているもの」と思われがちですが、実際には境界が不明確な土地は決して珍しくありません。
今回は、境界トラブルが発生する主な原因について考えてみます。
境界が分からなくなる土地がある理由
土地の境界は、登記や測量によって定められています。
しかし、現地では境界を示す目印が見当たらなかったり、古い資料しか残っていなかったりすることがあります。
長い年月の間には、
・土地の利用方法が変わる
・建物の建替えが行われる
・道路が整備される
・相続が何度も繰り返される
など、さまざまな出来事が起こります。
その結果、本来の境界が分からなくなってしまうことがあります。
所有者が変わると問題が表面化しやすい
境界トラブルが最も起こりやすいタイミングの一つが、所有者の交代です。
親の代では、
「昔からここまでがお互いの土地だから。」
という暗黙の了解で問題がなかった土地でも、相続によって世代が変わると事情が変わります。
新しい所有者は、
「正式な境界を確認したい。」
と考える一方で、隣地所有者は、
「今までどおりで十分だ。」
と思っていることがあります。
どちらも間違っているわけではありませんが、考え方の違いが対立につながることがあります。
境界標が失われているケース
本来、境界には境界標と呼ばれる目印が設置されていることがあります。
しかし、
・工事で撤去された
・自然災害で失われた
・長年の風化で見えなくなった
・舗装工事で埋まってしまった
などの理由で、現地からなくなってしまうことがあります。
境界標が確認できなければ、土地の境界を現地だけで判断することは困難になります。
そのため、改めて測量や資料調査が必要になるケースもあります。
古い資料しか残っていない場合もある
土地の境界を確認する際には、
・法14条地図
・地積測量図
・公図
などが参考になります。
しかし、地域によっては古い資料しか存在しない場合や、詳細な測量図が作成されていない土地もあります。
特に古くから市街地となっている地域では、昔の測量技術による資料しか残っていないことも珍しくありません。
そのため、資料だけで境界を確定できないこともあります。
相続が境界問題を顕在化させる
相続では、これまで住んでいた家を売却するケースが増えています。
その際、不動産会社から
「境界確認はできていますか。」
と質問されることがあります。
境界が確認できない土地は、
・売却まで時間がかかる
・買主が見つかりにくい
・測量費用が追加で必要になる
などの影響が出ることがあります。
つまり、相続が境界問題を初めて顕在化させるきっかけになることが多いのです。
トラブルは早めの対応が重要
境界問題は、時間が経つほど解決が難しくなる傾向があります。
古い資料は失われ、関係者も高齢化し、事情を知る人が少なくなるからです。
そのため、
「今は困っていないから。」
と先送りにするよりも、土地の状況を把握できるうちに確認しておくことが望ましいでしょう。
特に相続対策を進める場合には、財産評価だけでなく、境界の確認も重要な準備の一つといえます。
税理士が気付けること
税理士は土地の境界を決定する専門家ではありません。
しかし、相続税申告や生前対策の相談の中で、
・土地の面積が資料によって異なる
・売却を予定している
・隣地との関係に不安がある
・境界標が見当たらない
といった話を聞くことがあります。
このような場合には、土地家屋調査士への相談を提案することで、依頼者の将来の負担を軽減できる可能性があります。
専門家同士が適切なタイミングで連携することが、結果として依頼者の安心につながります。
結論
境界トラブルは、突然発生するものではありません。
所有者の交代、境界標の消失、古い資料、相続や売却など、さまざまな要因が重なって初めて問題として表面化します。
相続や不動産取引を円滑に進めるためには、税金だけでなく土地そのものの状態にも目を向けることが重要です。
境界について基本的な知識を持ち、必要に応じて土地家屋調査士へ相談できる体制を整えておくことが、将来の大きなトラブルを防ぐ第一歩となるでしょう。
参考
近畿税理士会「周辺専門講座 税理士が知っておくと損しない土地家屋調査士の業務【第1部】『境界について』」