土地を所有している方の中には、
「境界標なんて見たことがない。」
「どこが境界なのか分からない。」
という方も少なくありません。
実際、何十年も前から所有している土地では、境界標が見当たらないケースは珍しくありません。しかし、境界標がないことは、相続や売買、建物の建替えなどで大きな問題になる可能性があります。
今回は、境界標の役割と、見当たらない場合の対応について解説します。
境界標とは何か
境界標とは、土地の境界点を現地で示すための目印です。
材質はさまざまで、
・コンクリート杭
・金属プレート
・金属鋲
・石杭
・プラスチック杭
などが使用されています。
境界標は、土地の境界線そのものではありません。
正確には、境界線の起点や終点となる「境界点」を示す重要な目印です。
そのため、土地家屋調査士が測量を行う際にも、境界標の有無は重要な確認事項となります。
境界標がなくなる理由
境界標は一度設置すれば永久に残るものではありません。
長年の間には、
道路工事や上下水道工事によって撤去されることがあります。
また、
建物の建替えや外構工事の際に誤って撤去されてしまうケースもあります。
さらに、
舗装によって埋まってしまったり、風化や自然災害によって失われたりすることもあります。
土地そのものは動かなくても、境界標だけが失われることは決して珍しいことではありません。
境界標がないからといって境界が消えるわけではない
境界標が見当たらないと、
「境界そのものがなくなった。」
と思われることがあります。
しかし、それは誤解です。
境界標はあくまで境界を示す目印であり、境界そのものではありません。
仮に境界標が失われても、登記資料や測量図、現地調査などを総合的に確認することで、本来の境界を明らかにできる場合があります。
つまり、境界標がないことと、境界が存在しないことはまったく別の問題なのです。
自己判断で境界標を設置してはいけない
境界標が見当たらないからといって、自分で勝手に杭を打つことは避けなければなりません。
仮に位置が少しでも違っていれば、
後日、大きな境界紛争へ発展する可能性があります。
隣地所有者との信頼関係を損なうだけでなく、売買や相続の際にも問題が長期化することがあります。
境界標の復元や新たな設置は、十分な調査と関係者の確認を踏まえて行うことが重要です。
土地家屋調査士が果たす役割
境界標がない場合には、土地家屋調査士が中心となって調査を行います。
例えば、
・法務局に備え付けられた資料を確認する
・地積測量図や公図を調査する
・現地を測量する
・隣接地所有者と立ち会いを行う
など、さまざまな資料と現地の状況を総合的に判断しながら境界を確認していきます。
単に杭を設置するだけではなく、その位置に合理的な根拠があることが重要なのです。
相続や売買では早めの確認が安心につながる
境界標の問題は、土地を利用している間は気にならなくても、
相続や売却が決まって初めて表面化することがあります。
売却直前になって、
「境界標がありません。」
「境界確認が必要です。」
となれば、取引が予定どおり進まないこともあります。
また、相続人が複数いる場合には、境界が不明確であることが遺産分割協議にも影響することがあります。
時間的な余裕があるうちに確認しておくことが、将来の安心につながります。
税理士が気を付けたい視点
税理士は土地の境界を判断する立場ではありません。
しかし、
相続税申告や生前対策の相談では、
「昔から境界が分からない。」
「境界標を見た記憶がない。」
という話を耳にすることがあります。
こうした場合には、
境界問題が税務以外の重要な課題になる可能性を依頼者へ伝え、必要に応じて土地家屋調査士への相談を勧めることが望ましいでしょう。
税理士が早い段階で気付き、適切な専門家につなぐことが、依頼者の大きな安心につながります。
結論
境界標は土地の境界を現地で示す大切な目印ですが、工事や災害、経年変化などによって失われることがあります。
ただし、境界標が見当たらないからといって、境界そのものがなくなるわけではありません。
自己判断で対応するのではなく、必要に応じて土地家屋調査士による調査や確認を受けることが、将来のトラブル防止につながります。
相続や土地売買を円滑に進めるためにも、境界標の有無を一度確認しておくことは、大切な財産管理の第一歩といえるでしょう。
参考
近畿税理士会「周辺専門講座 税理士が知っておくと損しない土地家屋調査士の業務【第1部】『境界について』」