土地や建物を所有すると、毎年固定資産税が課税されます。しかし、その税額の基礎となる「固定資産税評価額」がどのように決まるのかを正確に理解している人は多くありません。
固定資産税評価額は、固定資産税だけではなく、不動産取得税や登録免許税など、さまざまな税金の基礎にもなる重要な価格です。
今回の講義資料では、固定資産税評価をめぐる裁判例も紹介されています。その内容を理解するためにも、まずは評価制度の基本的な仕組みを整理しておきましょう。
固定資産税評価額とは
固定資産税評価額とは、市町村が土地や家屋の価格を評価して決定する価格です。
土地や建物の売買価格とは異なり、地方税法に基づいて全国共通の評価基準に従って算定されます。
この評価額を基に、
- 固定資産税
- 都市計画税
- 不動産取得税
- 登録免許税(一部)
などの税額が決定されます。
そのため、一つの評価額が複数の税金に影響することになります。
市場価格とは異なる価格である
固定資産税評価額は、市場価格とは一致しません。
例えば、
市場で5,000万円で売買される土地であっても、
固定資産税評価額は3,500万円程度になることがあります。
これは評価制度の目的が、
市場価格を毎日反映することではなく、
全国で公平な課税を行うことにあるためです。
市場価格は景気や需要によって日々変動しますが、
固定資産税評価額は一定の基準によって安定的に算定されます。
土地は評価基準に従って評価される
土地の評価では、
まず土地の利用状況を確認します。
代表的なものは、
- 宅地
- 農地
- 山林
- 雑種地
などです。
宅地であれば、
道路との接し方、
形状、
面積、
奥行き、
利用状況などを考慮して評価されます。
さらに、
土地ごとの個別事情についても、
評価基準に従って補正が行われます。
担当者が自由に価格を決めるわけではありません。
家屋は再建築価格方式で評価される
建物については、
現在売買されている価格ではなく、
同じ建物を新築した場合に必要となる建築費を基礎として評価します。
これを「再建築価格方式」といいます。
そのうえで、
建物の経過年数や劣化状況などを反映し、
現在の価値を算定します。
つまり、
中古住宅の市場価格をそのまま評価しているわけではありません。
三年ごとに評価替えが行われる
固定資産税評価額は、
原則として三年ごとに評価替えが行われます。
これを「評価替え」といいます。
評価替えでは、
地価や建築費などの変動を反映し、
新たな評価額が決定されます。
評価替えがない年でも、
土地の分筆や地目変更、
新築・増築などがあれば、
必要に応じて評価額が変更されます。
評価額に不満がある場合はどうするのか
評価額に納得できない場合には、
直ちに裁判を起こすことはできません。
まず、
固定資産評価審査委員会へ審査の申出を行うことになります。
この制度は、
専門的な評価内容を適切に審査するために設けられています。
その後、
なお不服がある場合には、
行政訴訟によって争うことになります。
今回の講義資料でも、
固定資産税評価をめぐる裁判例が紹介されており、
評価方法そのものが争点となっています。
裁判所は何を審査するのか
固定資産税評価に関する裁判では、
裁判所が独自に価格を決めるわけではありません。
主な審査対象は、
- 地方税法に従っているか
- 固定資産評価基準どおり評価されているか
- 必要な補正が適切に行われているか
- 評価手続に違法がないか
といった点です。
つまり、
市場価格が高いか安いかではなく、
評価基準に従って適正に評価されたかどうかが重要になります。
税理士が確認すべきポイント
固定資産税に関する相談では、
次の事項を確認することが重要です。
- 固定資産税評価額
- 土地の利用区分
- 評価替え年度かどうか
- 補正の適用状況
- 固定資産評価基準に沿った評価となっているか
特に不動産取得税や相続税など、
他の税目にも影響するため、
固定資産税評価額の意味を正しく理解しておくことが重要です。
結論
固定資産税評価額は、市場価格とは異なる考え方に基づいて、市町村が固定資産評価基準に従って決定する価格です。
この評価額は固定資産税だけでなく、不動産取得税や登録免許税など、多くの税金の基礎となる重要な価格でもあります。
評価制度は全国共通のルールに基づいて運用されており、評価額に疑問がある場合には、固定資産評価審査委員会による審査や行政訴訟によって適法性が判断されます。税理士には、市場価格と評価額の違いを理解した上で、制度全体を俯瞰して助言することが求められます。
参考
近畿税理士会研修会(周辺専門講座)
「地方税をめぐる最近の動向等―注目すべき裁判例の検討を中心に―」
講師 和歌山大学経済学部教授 片山直子先生
地方税法
固定資産評価基準
固定資産税評価に関する講義資料