企業の決算を見ると、営業利益、経常利益、税引前利益、純利益など、いくつもの利益が並んでいます。
同じ利益なのに、なぜこれほど種類があるのか分かりにくいと感じる人もいるでしょう。
特に重要なのが営業利益と純利益です。
営業利益は主に本業でどれだけ稼いだかを見る数字です。
一方、純利益は本業以外の損益や税金なども反映した最終的な利益です。
どちらか一方だけを見るのではなく、2つの利益の違いを理解することで企業の業績をより正確に把握できます。
営業利益は本業の収益力を見る数字
営業利益は、企業が本業でどれだけ利益を生み出したかを見る代表的な数字です。
商品やサービスを販売して得た売上高から、商品を作るための原価や販売費、一般管理費などを差し引いて計算します。
例えば売上高が1,000億円あり、売上原価や販売費などが900億円なら、営業利益は100億円です。
企業が通常の事業活動を通じてどれだけ稼ぐ力を持っているかを見るとき、営業利益は重要な指標になります。
営業利益率を見ると比較しやすい
営業利益そのものだけでなく、営業利益率も重要です。
営業利益率は売上高に対して営業利益がどの程度あるかを見るものです。
売上高1,000億円、営業利益100億円なら営業利益率は10%です。
翌年に売上高が1,100億円、営業利益が132億円になれば営業利益率は12%になります。
売上高が増えただけでなく、収益性も改善しています。
値上げ、高採算商品の増加、生産効率改善などによって、本業の稼ぐ力が強くなっている可能性があります。
純利益は最終的に残った利益
純利益は、本業の利益だけでなく、それ以外の損益や税金なども反映した後に最終的に残る利益です。
営業利益が100億円あっても、さまざまな損失や税金が発生すれば純利益は100億円より少なくなります。
反対に本業以外で大きな利益が発生すれば、純利益が営業利益を上回ることもあります。
株主にとって純利益が重要なのは、1株当たり利益や配当などを考える際の基礎となる数字だからです。
ただし純利益だけでは、その利益が本業から生まれたのか判断できません。
営業利益と純利益の間に何があるのか
営業利益から純利益に至るまでには、本業以外のさまざまな損益が加わります。
例えば受取利息や支払利息があります。
企業が保有する資産を売却すれば、売却益や売却損が発生することもあります。
事業環境の悪化などによって資産価値を見直し、減損損失を計上するケースもあります。
さらに最終段階では法人税などの税負担が反映されます。
その結果として株主に帰属する最終的な利益が計算されます。
営業利益と純利益の差を見ることで、本業以外で何が起きているのかを考えることができます。
営業利益が増えて純利益も増える場合
最も分かりやすいのは、営業利益と純利益がともに増えているケースです。
例えば営業利益が100億円から120億円へ20%増え、純利益も70億円から85億円へ増えたとします。
本業の利益増加が最終利益の増加にもつながっている可能性があります。
ただし、この場合でも増益の理由を確認することは必要です。
値上げによるものなのか。
販売数量増加によるものなのか。
原材料価格低下によるものなのか。
営業利益の中身まで見ることで、増益の持続性を考えることができます。
営業利益は横ばいなのに純利益が急増する場合
注意したいのが、営業利益と純利益の動きが大きく異なるケースです。
例えば営業利益は100億円から105億円へ5%しか増えていないのに、純利益が50億円から100億円へ倍増したとします。
本業が2倍に成長したわけではありません。
保有株式や不動産の売却益など、本業以外の利益が発生した可能性があります。
この場合、純利益だけを見ると大幅増益企業に見えます。
しかし営業利益を見ると、本業の収益力にはそれほど大きな変化がないことが分かります。
営業利益は好調でも純利益が減る場合
反対のケースもあります。
営業利益が100億円から130億円へ増えたのに、純利益が70億円から30億円へ減少することがあります。
減損損失など、一時的な損失が発生した可能性があります。
この場合、純利益だけを見れば大幅減益です。
しかし本業の収益力は改善しているかもしれません。
もちろん大きな損失が発生した理由は確認する必要があります。
それでも営業利益と純利益を分けて見ることで、本業の悪化なのか、本業以外の特殊要因なのかを区別できます。
経常利益という数字もある
日本基準を採用する企業では、営業利益と純利益の間に経常利益という数字があります。
営業利益に受取利息や支払利息など営業外の損益を加減したものです。
企業が通常の事業活動を続ける中で生じる利益を見るための指標として利用されます。
例えば借入金が多い企業では支払利息が大きくなり、営業利益と経常利益の差が広がることがあります。
一方、保有する金融資産から多額の受取利息や配当金を得ている企業では、経常利益が営業利益を上回ることがあります。
営業利益と経常利益の差にも企業の特徴が表れます。
会計基準によって表示は異なる
決算を読む際には、企業が採用する会計基準によって利益の表示が異なることにも注意が必要です。
すべての企業の決算書に同じ名称の利益が並んでいるわけではありません。
そのため企業同士を比較するときには、単に項目名だけを見るのではなく、それぞれの利益が何を示しているのかを確認する必要があります。
特に海外企業や異なる会計基準を採用する企業を比較する場合には注意したいところです。
上方修正ではどの利益が変わったかを見る
企業が業績予想を上方修正した場合にも、営業利益と純利益の違いは重要です。
例えば売上高予想は据え置き、営業利益予想も据え置きなのに、純利益予想だけが大幅に引き上げられることがあります。
保有資産の売却益などが理由かもしれません。
一方、売上高、営業利益、純利益がそろって引き上げられていれば、本業の好調が上方修正につながっている可能性があります。
上方修正という言葉だけを見るのではなく、どの段階の利益が修正されたのかを確認することが重要です。
進捗率も利益ごとに違う
進捗率を見る場合にも注意が必要です。
営業利益の進捗率は30%なのに、純利益の進捗率は60%というケースがあります。
純利益に一過性利益が含まれていれば、こうした差が生じる可能性があります。
純利益の進捗率だけを見て上方修正の可能性が高いと判断すると、実態を見誤ることがあります。
営業利益、経常利益、純利益それぞれの進捗率を確認し、大きな差があれば理由を調べることが大切です。
1株当たり利益にもつながる
純利益は1株当たり利益を見るうえでも重要です。
一般にEPSと呼ばれる指標です。
企業の純利益が増えれば、他の条件が同じなら1株当たり利益も増えます。
PERも株価と1株当たり利益の関係を見る指標です。
そのため株式市場では純利益も非常に重視されます。
ただし、一過性利益によって純利益と1株当たり利益が急増している場合、その水準が翌年度も続くとは限りません。
PERが低く見えても、一時的な利益によるものかもしれません。
どちらが重要なのか
営業利益と純利益のどちらを見るべきかという問題ではありません。
目的によって両方を見る必要があります。
本業の収益力を知りたいなら営業利益が重要です。
株主に最終的に帰属する利益や1株当たり利益を考えるなら純利益も重要です。
そして2つの利益の動きが大きく異なる場合には、その間に何が起きたのかを確認します。
利益を一つの数字として見るのではなく、段階ごとに見ることで企業の収益構造が分かります。
結論
営業利益と純利益は、同じ企業の利益を示していますが意味は異なります。
営業利益は主に本業の収益力を見る数字です。
純利益は本業以外の損益や税金なども反映した最終的な利益です。
営業利益と純利益がともに増えているのか。
営業利益は横ばいなのに純利益だけ急増していないか。
営業利益は好調なのに純利益が減っていないか。
こうした違いを見ることで、企業で何が起きているのかを理解しやすくなります。
決算を見るときに重要なのは、利益が増えたか減ったかだけではありません。
どの段階の利益が変化し、その理由は何なのかを見ることです。
上方修正や高い進捗率を確認するときにも、営業利益と純利益を分けて見ることで、その業績改善が本業によるものなのか、一過性の要因によるものなのかを判断しやすくなります。
参考
日本経済新聞 2026年10月3日 朝刊「業績の上方修正を先取り 進捗率や市場予想を見極め」