個人事業税は都道府県で判断が異なることがあるのか 地方税実務編

税理士
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税金は全国どこでも同じように課税されるものと思われがちです。しかし、地方税には国税とは異なる特徴があります。

個人事業税は地方税法に基づく税金ですが、実際に課税・徴収を行うのは各都道府県です。そのため、法律は全国共通であっても、事業内容の判断や運用に違いが生じることがあります。

近年のカイロプラクティック事件では、この「都道府県ごとの運用の違い」が裁判でも重要な論点となりました。今回は、地方税ならではの実務上の特徴について解説します。

個人事業税は都道府県税である

個人事業税は地方税法に基づく都道府県税です。

納税先は国ではなく、事業所所在地の都道府県になります。

申告自体は所得税の確定申告の内容を基礎として行われますが、課税するかどうかの判断や税額の決定は都道府県が行います。

この点が、国税である所得税とは大きく異なる点です。

法律は全国共通である

地方税法は全国共通の法律です。

したがって、本来であれば、

  • 課税対象となる業種
  • 非課税となる業種
  • 税率
  • 課税標準

などの基本的な考え方は全国で統一されています。

しかし、現実には法律だけでは判断できないケースがあります。

新しい事業や法律に明確な規定がない事業については、各都道府県が個別に判断してきた経緯があります。

その結果、運用に差が生じることがあります。

カイロプラクティック事件が明らかにした実態

講義資料で紹介されているカイロプラクティック事件では、この運用の違いが明らかになりました。

神奈川県は、カイロプラクティック事業を「請負業」として個人事業税を課税しました。

一方で、全国を見ると事情は異なっていました。

判決では、

  • 請負業として課税している都道府県は少数であったこと
  • 第三種事業として取り扱う自治体があったこと
  • 個人事業税を課税していない自治体も存在したこと

が認定されています。

つまり、同じ事業内容であっても、都道府県によって運用に違いが存在していたのです。

裁判所は運用の違いをどう見たのか

裁判所は、

「他県がどう運用しているか」

だけを理由に課税処分を取り消したわけではありません。

重要なのは、

全国で判断が統一されていないという事実そのものです。

もし法律上明らかに請負業に該当するのであれば、全国でほぼ同じ運用になるはずです。

しかし実際にはそうなっていませんでした。

このことは、

地方税法の文言だけでは課税対象が明確ではないことを示す事情として考慮されました。

その結果、裁判所は課税対象を拡張して解釈することには慎重であるべきだと判断しました。

地方税だから自由に解釈できるわけではない

地方税は地方自治体が課税する税金ですが、

各都道府県が自由に法律を解釈できるわけではありません。

地方税法という全国共通の法律に従って課税しなければなりません。

また、憲法が定める租税法律主義も当然に適用されます。

したがって、

法律に明確な根拠がないまま課税対象を広げることは許されません。

地方税であっても、法解釈の基本原則は国税と変わらないのです。

新しい事業ほど判断が難しくなる

近年では、

  • AIコンサルティング
  • 動画配信
  • オンラインスクール
  • デジタルコンテンツ販売
  • サブスクリプション型サービス

など、新しいビジネスが次々に登場しています。

こうした事業は地方税法制定当時には想定されていませんでした。

そのため、

既存のどの業種に当たるのかという問題が生じます。

このような場合には、

契約内容や事業実態を詳細に検討し、地方税法の趣旨に照らして判断する必要があります。

税理士が注意すべき実務上のポイント

実務では、

「他県では課税されていない」

という事実だけで非課税になるわけではありません。

一方で、

全国の運用状況や判例は重要な参考資料になります。

税理士としては、

  • 地方税法の規定
  • 裁判例
  • 他自治体の運用
  • 総務省の考え方
  • 事業の実態

を総合的に検討することが重要です。

特に新しい事業については、自治体の従来の運用だけで判断せず、法令や判例に基づいた助言が求められます。

地方税実務は今後さらに重要になる

人口減少やデジタル化の進展により、地方税を取り巻く環境は大きく変化しています。

新しい産業や働き方が広がる中で、従来の業種区分だけでは判断が難しい場面は今後さらに増えるでしょう。

そのような時代だからこそ、地方税法の制度趣旨を理解し、判例に基づいて冷静に判断する姿勢がこれまで以上に重要になります。

結論

個人事業税は全国共通の地方税法に基づく税金ですが、その運用は都道府県が担うため、新しい事業などでは判断に違いが生じることがあります。

もっとも、その違いは自由な課税を認めるものではありません。地方税であっても租税法律主義が貫かれ、課税は法律に基づいて行われなければなりません。

カイロプラクティック事件は、都道府県ごとの運用の違いを踏まえながらも、最終的には地方税法の文言と制度趣旨を重視して判断すべきことを示した重要な判例です。税理士には、地域の実務だけでなく、全国的な判例や法解釈にも目を向けた助言が求められる時代になっています。

参考

近畿税理士会研修会(周辺専門講座)

「地方税をめぐる最近の動向等―注目すべき裁判例の検討を中心に―」

講師 和歌山大学経済学部教授 片山直子先生

地方税法

東京高等裁判所令和2年11月18日判決(個人事業税・カイロプラクティック事件)

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