非上場株式の評価では、「会社規模」という言葉が頻繁に登場します。
同じ利益を上げ、同じ純資産を持つ会社であっても、会社規模が異なれば株価の評価額が変わることがあります。この仕組みを初めて知る経営者の中には、「会社の大きさで株価が変わるのはなぜですか」と疑問に感じる方も少なくありません。
実は、会社規模区分は非上場株式評価制度の中でも特に重要な要素の一つです。近年では、この区分を意図的に変更して株価を引き下げるスキームも問題視され、国税庁の有識者会議でも大きな論点となっています。
今回は、会社規模区分の基本的な考え方と実務上のポイントについて解説します。
会社規模区分とは
会社規模区分とは、会社の事業規模に応じて評価方法を調整するための制度です。
非上場会社は一律ではなく、一定の基準によって、
大会社
中会社
小会社
などに区分されます。
会社の規模が異なれば、経営の安定性や事業内容、株式の価値にも違いがあると考えられているためです。
そのため、会社規模に応じて適用される評価方法や計算割合が変わる仕組みになっています。
なぜ会社規模を区分するのか
仮に、従業員10人の会社と1,000人の会社を同じ基準で評価したらどうなるでしょうか。
両者では、
事業の安定性
資金調達力
収益構造
社会的信用
などが大きく異なります。
税法では、こうした違いを評価に反映するため、会社規模という考え方を導入しています。
つまり、企業の実態に近い評価を行うための制度なのです。
会社規模はどのように判定されるのか
会社規模は、一つの数字だけで決まるわけではありません。
一般的には、
従業員数
総資産額
取引金額(売上高など)
といった複数の要素を総合的に判定します。
これらの基準に基づいて会社を区分し、それぞれに適した評価方法を適用します。
したがって、毎年の業績や事業の拡大・縮小によって会社規模区分が変わる可能性もあります。
なぜ株価が変わるのか
会社規模が変わると、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の適用割合が変わることがあります。
一般的には、
規模の大きな会社では収益力をより重視する評価
規模の小さな会社では資産価値をより重視する評価
となる傾向があります。
これは、大企業ほど継続企業としての収益力が企業価値を左右しやすく、小規模企業ほど保有資産の価値が株価に与える影響が大きいと考えられているためです。
この違いが、最終的な評価額に大きな影響を与えることがあります。
制度を利用した会社規模操作が問題となっている
会社規模区分は重要な制度ですが、その仕組みを利用した評価額圧縮策も見られます。
例えば、
一時的に会社規模を変更する
子会社を利用する
取引内容を変更する
などにより、より有利な評価区分へ移行しようとするケースです。
国税庁の有識者会議でも、
会社規模操作による株価圧縮
子会社を利用した会社規模の変更
などが具体的な事例として紹介されています。
制度本来の趣旨から外れた利用については、今後見直しが進められる可能性があります。
形式ではなく実態が重視される時代へ
近年の税務行政では、「形式」よりも「実態」を重視する考え方が強まっています。
会社規模についても、
一時的な変更なのか
事業上の合理性があるのか
実際に経営実態が変わっているのか
といった点が重要視されるようになるでしょう。
単に評価額を下げることだけを目的とした会社規模の変更は、今後ますます認められにくくなる可能性があります。
税理士が意識したい実務上のポイント
会社規模区分は、自社株評価だけでなく、事業承継全体にも大きく影響します。
そのため税理士は、
会社規模の判定
資本政策
組織再編
株主構成
将来の承継計画
まで視野に入れて助言する必要があります。
短期的な評価額だけを見るのではなく、企業経営全体の中で最適な選択を考えることが重要です。
また、今後制度改正が行われた場合には、これまで有効だった対策が見直される可能性もあるため、最新の制度動向を継続的に確認する姿勢も欠かせません。
結論
会社規模区分は、企業の実態に応じて非上場株式を公平に評価するために設けられた重要な制度です。従業員数や総資産、取引金額などを基に会社を区分し、それぞれに適した評価方法を適用することで、企業価値をより適切に反映しようとしています。
一方で、この制度を利用した会社規模操作による評価額圧縮が問題となり、国税庁では制度の見直しを進めています。今後は、形式的な区分変更だけではなく、事業の実態や経済合理性がより重視される方向へ進むことが予想されます。
会社規模区分を正しく理解することは、適正な自社株評価だけでなく、長期的な事業承継や企業経営を考えるうえでも重要な知識となるでしょう。
参考
税のしるべ 2026年7月13日号(1面)
取引相場のない株式の評価に関する有識者会議に現評価方法を濫用したスキーム8事例、次回8月の会合に議論の「たたき台」を提示
国税庁「財産評価基本通達」