会社員にとって年末調整は、毎年秋から年末にかけて会社から渡される書類に必要事項を書き、生命保険料控除証明書などを提出する恒例行事という印象が強いかもしれません。
しかし、令和8年分の年末調整は例年とは少し事情が違います。
令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げなどが、原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されるからです。
そのため、令和8年は一年の途中まで行われてきた源泉徴収と、年末調整で使用する新しい制度との関係を理解しておくことが重要になります。
年末調整とは一年間の所得税を精算する手続き
会社員は毎月の給与や賞与を受け取る際に所得税が差し引かれています。
これが源泉徴収です。
ただし、毎月差し引かれている所得税の合計額が、その人が一年間で本来納めるべき所得税額と必ず一致するわけではありません。
一年間の給与額が確定し、扶養親族や生命保険料などの状況を反映して所得税を計算すると、税金を払い過ぎている場合もあれば不足している場合もあります。
そこで会社が一年間の所得税を計算し直し、すでに源泉徴収した所得税との過不足を精算します。
これが年末調整です。
令和8年は所得税の制度が変わる
令和8年分の年末調整が特に重要なのは、所得税に複数の改正があるためです。
大きな変更点として、基礎控除の引上げがあります。
基礎控除は、多くの納税者が所得税を計算するときに所得から差し引くことのできる所得控除です。
さらに、給与所得控除の最低保障額も引き上げられます。
給与所得控除は、給与収入から給与所得を計算するときに差し引く仕組みです。
この二つが変わることで、給与所得者の課税対象となる所得にも影響します。
扶養親族の所得要件も変わる
今回の改正では、扶養親族などに関する所得要件も見直されます。
これは家族を扶養している会社員にとって重要な変更です。
これまで所得要件を超えていたため扶養控除などの対象にならなかった親族が、改正によって新たに要件を満たす場合があります。
ただし、対象になったからといって会社が自動的に扶養控除を適用してくれるわけではありません。
新たに扶養親族などの要件を満たすことになった親族について控除を受ける場合には、給与所得者の扶養控除等異動申告書など必要な書類を会社へ提出する必要があります。
年末調整の書類を書く前に、家族の収入だけでなく所得がいくらになるのかを確認しておくことが重要になります。
生命保険料控除にも特例が設けられる
令和8年分では、生命保険料控除についても変更があります。
年齢23歳未満の扶養親族を有する場合について、一般生命保険料控除に特例が設けられています。
生命保険料控除は、支払った保険料の全額がそのまま所得から差し引かれる制度ではありません。
契約の種類や支払った保険料などによって控除額が計算されます。
子育て世帯などでは、令和8年分の年末調整で従来とは異なる控除額になる可能性があるため確認が必要です。
なぜ12月の年末調整が重要なのか
今回の改正を理解するうえで重要なのが令和8年12月1日という日付です。
基礎控除の引上げなどは原則としてこの日から施行されます。
一方、令和8年中の毎月の給与については、改正前の源泉徴収税額表によって所得税が計算されてきました。
そこで12月に行う年末調整では、引上げ後の基礎控除額や令和8年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表を使って、一年間の所得税額を計算します。
そして、それまで給与や賞与から差し引かれてきた源泉徴収税額との過不足を精算します。
令和8年については、毎月の給与計算そのものを年初までさかのぼってやり直すのではなく、年末調整で一年間の税額を合わせると考えると分かりやすいでしょう。
税金が戻ってくる可能性もある
基礎控除や給与所得控除が大きくなれば、条件によっては課税対象となる所得が小さくなります。
その結果、それまで給与から源泉徴収されていた所得税が、本来納めるべき一年間の所得税より多くなることがあります。
その場合は年末調整によって差額が還付されます。
ただし、すべての給与所得者が同じ金額だけ還付されるわけではありません。
給与額や所得、扶養親族、各種所得控除などによって年税額は異なります。
年末調整で税金が戻ってくるかどうかは、一人ひとりの状況によって違います。
給与担当者にも大きな変更になる
今回の改正は、年末調整を受ける従業員だけでなく会社の給与担当者にとっても重要です。
国税庁は令和8年分の年末調整のしかたに加えて、源泉徴収義務者向けの年末調整チェック表や年末調整に関するQ&Aなどを公表しています。
特に注意したいのが、新たに扶養親族などの要件を満たすことになった従業員への対応です。
必要な申告書が提出されなければ、正しい控除を反映できない可能性があります。
制度変更だけでなく、従業員への周知や書類の確認まで含めて対応する必要があります。
令和9年からは新しい源泉徴収へ移る
令和8年12月の年末調整は、新しい所得税制度への切り替え地点でもあります。
国税庁は令和9年分の源泉徴収税額表も公表しています。
令和8年は年末調整によって改正後の制度を反映し、令和9年からは新しい源泉徴収税額表などを使った給与計算へ移っていくことになります。
令和8年分の年末調整だけを見るのではなく、令和9年の給与計算まで一連の制度変更として理解しておくことが大切です。
結論
令和8年分の年末調整は、例年の年末調整とは少し違います。
基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族などの所得要件の見直し、23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例など、複数の変更が重なるためです。
そして大きなポイントとなるのが、これらの改正が原則として令和8年12月1日に施行され、12月の年末調整で一年間の所得税額に反映されることです。
年末調整は単なる会社への書類提出ではありません。
毎月の給与から仮に納めてきた所得税と、一年間で本来納めるべき所得税を合わせる重要な精算手続きです。
令和8年は制度そのものが変わるからこそ、自分に関係する控除や家族の所得状況を例年以上に確認しておくことが重要になります。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた