人生100年時代の終のすみか 住宅すごろくにゴールは必要か

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「終のすみか」という言葉があります。

人生の最後まで暮らす住宅です。

かつての住宅すごろくでは、賃貸住宅から始まり、マンションを購入し、最後に郊外の庭付き一戸建てを手に入れることが1つの成功モデルとされることがありました。

一度手に入れた自宅に最後まで住み続け、やがて子どもへ引き継ぐ。

住宅には明確なゴールがあるという考え方です。

しかし人生100年時代になると、この前提は変わります。

60歳で退職したとしても、その後30年、40年と生活する可能性があります。

その間に家族構成も身体の状態も資産状況も変化します。

人生が長くなるほど、1つの住宅が最後まで最適であり続けるとは限りません。

令和の住宅すごろくに、本当に「上がり」は必要なのでしょうか。

住宅の役割は人生とともに変わる

20代で必要な住宅と80代で必要な住宅は違います。

単身時代には、小さな賃貸住宅で十分かもしれません。

結婚すれば2人で暮らせる広さが必要になります。

子どもが生まれれば、さらに広い住宅が必要になります。

子どもが独立すれば、今度は住宅が広すぎることがあります。

高齢になれば階段や段差が負担になります。

さらに介護が必要になれば、一般住宅では生活が難しくなることもあります。

人生が変われば住宅に求める役割も変わります。

それにもかかわらず、住宅だけを一生固定する必要はありません。

終のすみかを早く決める必要はない

50代や60代になると、「そろそろ終のすみかを決めなければ」と考える人もいるでしょう。

しかし60歳から100歳まで40年あります。

40年間、生活環境がまったく変わらないとは考えにくいでしょう。

健康状態。

家族構成。

収入。

資産。

周辺環境。

交通事情。

医療や介護の必要性。

さまざまな条件が変化します。

60代で選ぶ住宅を、必ず人生最後の住宅にする必要はありません。

「次の10年、20年を快適に暮らす住宅」と考えることもできます。

元気な老後と介護期では住宅条件が違う

老後を1つの期間として考えると、住宅選びを誤る可能性があります。

例えば60代ではまだ仕事を続けている人もいます。

旅行や趣味を楽しむ人もいます。

70代でも活発に活動する人は多いでしょう。

この時期には駅や商業施設に近いマンションが便利かもしれません。

しかし80代、90代になり介護が必要になれば、住宅に求める条件は変わります。

生活支援。

見守り。

医療との連携。

介護サービス。

住宅設備だけではなく、生活を支えるサービスが重要になります。

元気な老後の住宅と、介護期の住宅を同じものにする必要はありません。

持ち家を最後まで持つことが目的ではない

長年住宅ローンを返済してきた自宅には特別な思いがあります。

ようやく自分のものになったのだから、最後まで住み続けたいと思うのは自然です。

しかし住宅ローンを完済したことと、その住宅が高齢期にも最適であることは別の問題です。

階段が多い。

駅から遠い。

病院まで遠い。

広すぎて管理できない。

修繕費が大きい。

こうした問題があれば、持ち続けることが生活の負担になる場合があります。

住宅は所有すること自体が目的ではありません。

生活を支えるための手段です。

自宅は老後資産でもある

半投半住という考え方では、自宅を住まいであると同時に資産として考えます。

この視点は高齢期ほど重要になります。

例えば長年住んだ住宅を売却して、より小さな住宅へ移る。

売却代金の一部を次の住宅購入に使い、残りを金融資産として保有する。

その資金を生活費や医療、介護などに利用する。

自宅という不動産資産を、老後に使える資産へ変えることができます。

自宅を最後まで売らないことだけが資産形成の完成ではありません。

必要なときに使えることも資産の重要な役割です。

住宅資産と金融資産のバランスを見る

高齢期には、資産全体を見る必要があります。

例えば自宅が8,000万円、金融資産が1,000万円という家庭があるとします。

資産総額では9,000万円あります。

しかし日常生活で8,000万円の自宅を少しずつ使うことはできません。

住宅資産は大きくても、手元資金が不足することがあります。

反対に住宅を売却して4,000万円の住宅へ住み替えれば、諸費用などを考慮する必要はありますが、金融資産を増やせる可能性があります。

人生100年時代には、住宅資産を持つことと、自由に使える金融資産を持つことのバランスが重要になります。

終のすみかにも出口を考える

「終のすみか」という言葉からは、最後まで住む住宅という印象を受けます。

しかし実際には、その住宅にも最後があります。

所有者が亡くなれば誰かが相続します。

子どもが住むかもしれません。

売却するかもしれません。

賃貸に出すかもしれません。

場合によっては誰も利用しない住宅になる可能性もあります。

自分にとって終のすみかでも、不動産としてはその後も存在します。

住宅選びでは、自分が暮らしている間だけでなく、その後どうなるかまで考えておくことが重要です。

子どもが家を欲しいとは限らない

親世代にとって、自宅を子どもへ残すことが財産形成の目的になることがあります。

しかし子どもには子どもの生活があります。

別の都市で働いている。

すでに住宅を購入している。

海外で暮らしている。

親の自宅に住む予定がない。

こうしたケースもあります。

その場合、住宅を相続することが必ずしも利益になるとは限りません。

売却しやすい住宅なら現金化できます。

しかし需要の少ない地域の住宅では、相続後の管理が負担になる可能性があります。

自宅を残すことと、価値ある資産を残すことは必ずしも同じではありません。

売れる住宅を持つことが老後の自由につながる

半投半住で重要なのは、値上がりする住宅だけを探すことではありません。

必要になったときに売却できる住宅を持つことです。

駅に近い。

生活利便性が高い。

管理状態がよい。

幅広い世代が利用できる。

一定の住宅需要がある。

こうした条件を持つ住宅なら、高齢になって住み替えたくなったときに選択肢を持ちやすくなります。

住宅の流動性は、単なる投資上の問題ではありません。

老後の自由度に関係します。

住み続ける自由と売る自由の両方を持つ

理想的な住宅とは、必ず売却する住宅ではありません。

住み続けたいなら住み続けられる。

しかし生活条件が変わったら売却することもできる。

この両方の選択肢を持つことが重要です。

「この家しか住む場所がない」という状態と、「この家に住み続けることを自分で選んでいる」という状態は違います。

半投半住が目指すのは、住宅を頻繁に売買することではありません。

住宅によって人生を固定されないことです。

住宅すごろくは逆方向にも進める

従来の住宅すごろくは、住宅が徐々に大きくなる方向でした。

小さな賃貸住宅。

マンション。

戸建て住宅。

より広い住宅へ進むことが豊かさの象徴でした。

しかし高齢期には逆方向へ進むことがあります。

広い戸建てからコンパクトなマンションへ。

大きなマンションから小さなマンションへ。

持ち家から賃貸へ。

一般住宅から高齢者向け住宅へ。

住宅は小さくなっても、生活の利便性は高くなる可能性があります。

住宅の広さと人生の豊かさは同じではありません。

最後まで自宅で暮らす選択もある

もちろん住み替えなければならないわけではありません。

長年暮らした地域に友人がいる。

近くに家族がいる。

病院や買い物にも困らない。

住宅をバリアフリー化できる。

訪問介護などを利用できる。

こうした条件が整えば、現在の住宅で長く暮らす選択もあります。

重要なのは、「持ち家だから最後まで住む」と自動的に決めるのではなく、他の選択肢と比較したうえで住み続けることです。

住み続けることも、主体的な住宅選択の1つです。

住宅すごろくのゴールは住宅ではない

人生100年時代の住宅すごろくを考えると、1つのことに気づきます。

本当の目的は住宅を手に入れることではありません。

自分らしい生活を続けることです。

働く時期。

子育てする時期。

夫婦2人になる時期。

1人で暮らす時期。

支援を受けながら暮らす時期。

それぞれに適した住宅があります。

住宅は人生を支える舞台です。

舞台が人生に合わなくなれば、変えてもよいのです。

半投半住が変える住宅観

半投半住という考え方の本質は、住宅で利益を得ることだけではありません。

住宅を一生固定されたものとして考えないことにあります。

住む。

資産として保有する。

売る。

貸す。

小さな住宅へ移る。

老後資金へ変える。

住宅に複数の役割を持たせます。

こう考えると、「一生に1回の住宅購入」という発想から離れることができます。

住宅購入は人生最大の買い物ではあっても、人生最後の住宅選択とは限りません。

結論

人生100年時代に「終のすみか」を早く決める必要はないのではないでしょうか。

人生が長くなれば、住宅に求める条件は何度も変わります。

若い時期には通勤。

子育て期には広さ。

高齢期には生活利便性。

さらに年齢を重ねれば医療や介護との距離。

その変化に合わせて住宅も変えてよいのです。

令和の住宅すごろくには、決められたゴールはありません。

タワーマンションが上がりでもありません。

庭付き戸建てが上がりでもありません。

高級な高齢者住宅が上がりでもありません。

その時々の自分に合った住宅を、自分で選べる状態を維持すること。

それが新しい住宅すごろくの考え方です。

住宅は人生のゴールではありません。

人生を支えるための資産であり、生活の道具です。

だからこそ、住み続ける自由と住み替える自由の両方を持っておく。

人生100年時代の「終のすみか」とは、特定の1軒を早く決めることではなく、最後まで自分で住まいを選択できることなのかもしれません。

参考

日本経済新聞 2026年10月2日朝刊 令和の住宅すごろく「半投半住」で選択多様に

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