事業承継はいつから始めるべきなのか 社長が元気なうちだからこそ選択肢を増やせる理由編

経営

事業承継というと、社長が高齢になってから考える問題というイメージがあります。

しかし、今回の参考記事から見えてくるのは、社長が元気なうちから準備することの重要性です。

後継者を決め、育て、自社株を承継し、相続への備えまで整えるには時間がかかります。

さらに、社長が亡くなる前に認知症などによって判断能力が低下する可能性もあります。

事業承継を始める時期は、引退直前ではなく、社長自身が十分に判断できる段階から考えることが重要です。

死亡後では後継者を育てられない

相続は社長が亡くなったときに発生します。

しかし、事業承継は相続が発生してから始めるものではありません。

会社を引き継ぐ後継者には、実際の経営を経験してもらう必要があります。

参考記事では、自社株信託を利用することで、社長が元気なうちに後継者候補を育てながら、実際の経営を試すという考え方が示されています。

社長が亡くなってしまえば、後継者候補の経営を自ら確認することはできません。

だからこそ、生前から事業承継を始める意味があります。

後継者を決めきれないこと自体がリスクになる

事業承継では、誰を後継者にするのかを簡単に決められない場合があります。

参考記事では、社長の相続を考えた際のリスクとして、後継者を決めきれずに相続対策を進めることができず、自社株の分散を招いてしまうことが挙げられています。

後継者選びを慎重に行うことは必要です。

しかし、決められないからといって何もしない状態が続けば、別のリスクが大きくなります。

社長が元気なうちに後継者候補を絞り込み、育成を始める必要があります。

後継者選びには時間が必要になる

後継者候補を決めても、その人物が本当に経営者として適任なのかはすぐには分かりません。

実際に会社経営を経験させる必要があります。

参考記事では、自社株信託を利用することで、後継者候補による経営を試すことができるとしています。

そして、実際に経営を行ってみて能力的に不十分だった場合には、信託契約を解除し、信託している自社株を社長へ戻すことができると説明されています。

つまり、後継者選びには試す期間まで含めて考える必要があります。

生前贈与を急ぐことにも問題がある

早く事業承継を始めることと、早く自社株を贈与してしまうことは同じではありません。

参考記事では、生前贈与について、自社株を贈与した後継者の資質に問題があった場合にやり直すことが難しいという問題点を挙げています。

後継者が十分に育っていない段階で、自社株を完全に移してしまうことにはリスクがあります。

重要なのは、早く承継を完成させることではありません。

早く準備を始め、時間をかけて後継者を見極めることです。

社長が元気だから後継者を見守れる

自社株信託では、信託契約に指図権を設定する方法も紹介されています。

参考記事では、指図権によって後継者の議決権行使に一定の縛りを設け、社長が元気なうちは後継者にフリーハンドで会社経営を任せるのではなく、その経営を見守ることができるとしています。

後継者に実際の経営を経験させます。

その一方で、社長は経営を見守ります。

この期間を設けることで、経営を一度に引き継ぐのではなく、段階的に事業承継を進めることができます。

認知症になる前の準備も重要になる

事業承継で考えるべきなのは、社長の死亡だけではありません。

参考記事では、社長が認知症になったり、判断能力が低下したりする場合についても取り上げています。

民事信託を利用すれば、委託者である社長の判断能力が低下した場合でも、あらかじめ定めた信託契約の内容に基づいて受託者による財産管理を行うことができます。

そのためには、社長が元気なうちに準備しておく必要があります。

相続が発生する年齢だけを想定して事業承継の時期を決めるのではなく、判断能力が低下する可能性も考えておくことが重要です。

自社株以外の財産も確認する

早く準備を始めるべき理由は、後継者育成だけではありません。

会社経営に必要な財産を確認するためにも時間が必要です。

参考記事では、自社株だけでなく、会社経営に使用している社長個人の不動産についても、自社株とともに後継者へ信託できるとしています。

会社が使用している土地や建物が社長個人の所有になっていれば、その財産についても承継方法を考える必要があります。

事業承継では、会社と社長個人の財産関係を整理することも必要になります。

遺留分への対応も残る

自社株信託を利用すれば、すべての相続問題が解決するわけではありません。

参考記事では、自社株信託をしても他の相続人の遺留分の問題がなくなるわけではなく、遺留分対策を併せて検討する必要があるとしています。

後継者に自社株や事業用資産を集中させれば、他の相続人との関係についても考えなければなりません。

事業承継の準備には、後継者育成だけでなく、家族への財産承継まで含まれます。

遺言と生前贈与と信託をどう使うかを考える

参考記事では、従来の相続対策として遺言書や生前贈与を挙げたうえで、それぞれに問題点があることを示し、その不十分な点を補う選択肢として民事信託を取り上げています。

遺言書には、死亡後の財産の分け方を指定する役割があります。

生前贈与では、生きている間に財産を移すことができます。

民事信託では、信頼できる人に財産管理を託し、後継者候補を試したり、判断能力が低下した場合に備えたりすることができます。

どれか一つだけを見て考えるのではなく、社長や会社の状況に応じて相続対策全体を検討することが重要です。

結論

事業承継を始める時期について、すべての会社に共通する年齢があるわけではありません。

今回の参考記事が示している重要な考え方は、社長が元気なうちから備えることです。

後継者候補を育て、実際に経営を経験させ、その人物が本当に会社を任せられるのかを確認するには時間が必要です。

さらに、認知症などによる判断能力低下への備え、自社株や事業用不動産の承継、他の相続人の遺留分への対応なども考えなければなりません。

早く事業承継を始めるということは、すぐに会社や自社株を後継者へ渡してしまうことではありません。

社長が元気なうちに準備を始め、後継者を育て、必要なら選び直しながら、段階的に会社を次の世代へ引き継いでいくことです。

時間を味方につけられることこそ、早く事業承継の準備を始める大きな意味といえます。

参考

企業実務 2026年9月号 社長の相続対策リスク

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