築古マンションを購入するとき、室内の古さは比較的分かりやすい問題です。
古いキッチンや浴室は交換できますし、壁紙や床材もリノベーションによって新しくできます。
一方、目に見えないため見落としやすいのが給排水管です。
マンションの給排水管は壁の中や床下、配管スペースなどを通っています。築年数が長くなれば、こうした配管も建物と同じように老朽化していきます。
さらにマンションの配管には、区分所有者が管理する部分とマンション全体で管理する部分があります。
共用部分の配管が更新されていても、自分が購入する住戸の専有部分にある配管は古いままということもあります。
築古マンションでは、室内がきれいにリノベーションされているかだけではなく、見えない配管がどのような状態になっているのかを確認することが重要です。
マンションには給水管と排水管があります
マンションで水を利用するためには、大きく給水側と排水側の設備が必要です。
給水管は、キッチン、洗面台、浴室、トイレなどへ水を届けるための配管です。
給湯設備からお湯を届ける給湯管もあります。
一方、使用した水を建物の外へ流すために使われるのが排水管です。
キッチンで使った水、浴室や洗面所の水、トイレの排水などを住戸から建物全体の排水設備へ流します。
これらの配管の多くは普段の生活では見えません。
そのため、設備に問題が発生するまで老朽化に気づかないことがあります。
共用管と専有管とは何か
マンションの給排水管を考えるときに重要なのが、共用部分と専有部分の区分です。
建物全体を縦方向に通り、複数の住戸が利用する立て管などは、一般的に共用部分として管理されます。
一方、共用の立て管などから分岐して各住戸のキッチンや浴室などにつながる配管については、専有部分として扱われるものがあります。
ただし、どこまでが共用部分で、どこからが専有部分なのかは、配管の位置やマンションの管理規約などによって確認する必要があります。
単純に「自分の部屋の中にあるから専有部分」「壁の中だから共用部分」と判断することはできません。
築古マンションを購入する場合には、管理規約などで給排水設備の区分を確認することが重要です。
誰のものかによって修理する人が変わります
共用部分と専有部分の区分が重要なのは、修理や更新を誰が行うのかに関係するためです。
共用部分である配管であれば、基本的には管理組合がマンション全体の修繕として対応します。
修繕費用には、区分所有者が毎月支払っている修繕積立金などが使われます。
一方、専有部分に属する配管であれば、原則としてその住戸の区分所有者が修理や交換を行うことになります。
中古マンションを購入した直後に専有部分の配管で問題が見つかれば、購入者自身が費用を負担して工事しなければならない可能性があります。
物件価格だけでなく、購入後にどのような設備更新が必要になるのかまで考える必要があります。
築古マンションでは配管も老朽化します
築40年、50年というマンションでは、建物だけではなく設備にも長い年月が経過しています。
給排水管についても例外ではありません。
配管に使われている材料や施工方法は、建設された年代によって異なります。
長期間使用された配管では、内部の腐食や劣化などが進んでいる可能性があります。
排水管では汚れなどが蓄積し、流れが悪くなることもあります。
外から見れば問題のない住戸でも、床下や壁の内部にある配管では老朽化が進んでいる可能性があるのです。
築古マンションでは、内装の新しさと建物内部の設備の新しさを分けて考える必要があります。
古い配管では漏水リスクがあります
配管の老朽化で特に注意したいのが漏水です。
給水管などから水が漏れれば、自分の住戸だけではなく階下の住戸まで被害が広がる可能性があります。
マンションでは一戸の設備トラブルが他人の住宅へ直接影響するところが、一戸建てとの大きな違いです。
床下で少量ずつ水が漏れている場合には、発見まで時間がかかることもあります。
漏水の原因となった場所や管理状況によっては、修理費だけでなく階下の内装や家財などの損害を巡る問題につながる可能性もあります。
築古マンションでは、漏水が起きてから対応するのではなく、配管の状態を事前に確認するという考え方が重要になります。
共用管が更新済みでも安心とは限りません
中古マンションの販売資料などで「給排水管更新済み」といった説明を見ることがあります。
ここで注意したいのが、どの配管を更新したのかという点です。
マンション全体の工事として共用部分の立て管などを更新していても、各住戸内の専有部分の配管まで交換されているとは限りません。
反対に、以前の所有者が住戸をリノベーションした際に専有部分の配管を交換していても、マンション全体の共用配管には今後大規模な更新が必要になる可能性があります。
「配管工事をした」という事実だけでは十分ではありません。
共用部分なのか専有部分なのか、どの範囲をいつ更新したのかを確認する必要があります。
配管更新履歴を確認します
築古マンションを購入するときには、マンション全体の修繕履歴を確認することが重要です。
外壁や屋上防水などの大規模修繕だけでなく、給水設備や排水設備について、これまでどのような工事が行われてきたのかを確認します。
さらに長期修繕計画を見ることで、今後どの時期に設備更新を予定しているのかを把握できる場合があります。
共用配管の大規模な更新が近い将来予定されている場合には、修繕積立金が十分に確保されているかという問題にもつながります。
工事費が不足すれば、修繕積立金の値上げや一時金の徴収が必要になる可能性もあります。
配管の状態を見ることは、マンション全体の管理状態を見ることでもあるのです。
リノベーション履歴も確認します
すでに室内がリノベーションされた中古マンションを購入する場合には、その工事内容を確認することも重要です。
キッチンや浴室が新品になっていても、床下の給排水管まで交換されているとは限りません。
見える設備だけを新しくし、見えない配管は以前のものを利用している可能性があります。
反対に、スケルトン状態まで解体した大規模なリノベーションであれば、専有部分の給水管や給湯管、排水管などを交換している場合があります。
いつ、どの範囲まで工事したのかを確認できれば、購入後の設備更新を考える材料になります。
リノベーション済みという言葉だけで判断しないことが重要です。
自分でリノベーションするなら配管交換を検討します
築古マンションを購入し、自分で全面的にリノベーションする場合には、専有部分の古い配管を同時に交換することを検討できます。
床や壁を解体している時期であれば、完成後に改めて配管工事を行う場合と比べて施工しやすくなります。
せっかく新品のキッチンや浴室を設置しても、その裏側にある配管が古いままでは、数年後に漏水などの問題が発生する可能性があります。
もちろん、すべての配管を無条件に交換すればよいわけではありません。
現在の材質や状態、過去の更新時期などを確認し、専門家と相談して判断することが重要です。
目に見える内装に予算を集中させるのではなく、見えなくなる設備にお金を使うという考え方も築古リノベーションでは必要になります。
配管の位置は間取り変更にも影響します
給排水管は老朽化だけの問題ではありません。
リノベーションの自由度にも大きく関係します。
前回取り上げたように、排水管では水を流すための勾配が必要です。
マンション全体を通っている共用の立て管の位置を自由に移動することはできません。
そのため、キッチンや浴室を現在の位置から大きく離れた場所へ移動すると、排水勾配を確保できなくなる場合があります。
床を高くして配管スペースをつくれば対応できることもありますが、その分だけ天井高が低くなります。
配管は、築古マンションの「見えない制約」の代表的なものなのです。
購入前に建物全体と住戸内部の両方を確認します
築古マンションの配管を確認するときには、マンション全体と購入する住戸の二つに分けて考えると分かりやすくなります。
マンション全体については、共用配管の更新履歴や今後の修繕計画を確認します。
住戸については、専有部分の配管がいつ交換されたのか、リノベーション時にどこまで更新されたのかを確認します。
さらに管理規約で共用部分と専有部分の境界を確認しておけば、将来問題が起きた場合の管理責任についても理解しやすくなります。
必要に応じて、仲介会社や管理会社、リノベーション会社などに確認することも重要です。
室内を見ただけでは分からない部分だからこそ、書類や専門家を利用して確認する必要があります。
結論
マンションの給排水管には、マンション全体で管理する共用部分と、各区分所有者が管理する専有部分があります。
建物全体を通る立て管などは一般的に共用部分となりますが、各住戸につながる配管については専有部分となるものがあります。
重要なのは、築古マンションでは建物と同じように配管も年月を重ねていることです。
共用部分の配管が更新されていても専有部分の配管が古いままという場合もあれば、その反対もあります。
そのため「給排水管更新済み」という言葉だけではなく、いつ、どの部分を、どの範囲まで更新したのかを確認する必要があります。
また、自分で全面的なリノベーションを行う場合には、床や壁を解体する機会に古い専有部分の配管を交換することも選択肢になります。
築古マンションでは、新しいキッチンや美しい床といった目に見える部分だけで物件の状態を判断することはできません。
壁や床の中に隠れている給排水管まで確認することが、漏水リスクを抑え、長く安心して暮らすための重要なポイントになります。
参考
日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 築古物件 リノベ不可の盲点
日本経済新聞 2026年8月18日 夕刊 耐震性、地盤の固さも重要