長期投資では、インデックスファンドへ投資する方法が広く知られています。
一方で、「市場平均を少しでも上回りたい」と考える投資家も少なくありません。
そのために個別銘柄を選ぶ方法もありますが、近年は「特定の特徴を持つ銘柄へ体系的に投資する」という考え方が注目されています。
それが「ファクター投資」です。
経験や勘ではなく、長年の研究で市場平均を上回る傾向が確認されてきた要因を活用する投資手法として、多くの機関投資家が採用しています。
ファクター投資とは
ファクター投資とは、株価のリターンに影響を与える「要因(ファクター)」に着目して運用する投資手法です。
ここでいうファクターとは、企業の規模や株価の割安さ、値動きの特徴など、長期間にわたり投資成果へ影響を与える傾向が確認されている要素を指します。
個別企業を分析して投資するというよりも、共通する特徴を持つ銘柄へ幅広く投資する考え方です。
なぜ注目されるようになったのか
ファクター投資が注目されるきっかけとなったのは、効率的市場仮説だけでは説明できない現象が数多く発見されたことです。
例えば、小型株が長期間では大型株を上回る傾向や、割安株が割高株より高い収益を上げる傾向などが、多くの研究で報告されました。
こうした現象は「市場の癖」ともいえるものであり、継続的に観察されたことから、投資戦略として活用されるようになりました。
主なファクター
代表的なファクターにはいくつかの種類があります。
まず「バリュー」です。
株価が企業価値に比べて割安な銘柄へ投資する考え方です。
次に「サイズ」です。
一般的に小型企業は大型企業より高い成長余地があるとされ、小型株へ投資するファクターです。
「モメンタム」は、価格が上昇している銘柄は、その後もしばらく上昇しやすいという傾向を利用します。
さらに、「クオリティ」は収益性や財務内容が優れた企業、「低ボラティリティ」は価格変動が比較的小さい企業へ投資する考え方です。
現在では、こうした複数のファクターを組み合わせる運用も一般的になっています。
ファーマ・フレンチの3ファクターモデル
ファクター投資を語るうえで欠かせないのが、ユージン・ファーマ氏とケネス・フレンチ氏が提唱した「3ファクターモデル」です。
この理論では、株式のリターンは市場全体だけではなく、
市場リスク
企業規模
株価の割安さ
という3つの要因によって説明できると考えました。
これは、CAPMを発展させた理論として高く評価され、現在でも資産運用の基礎理論の一つとなっています。
その後は収益性や投資行動を加えた5ファクターモデルなども提唱されています。
ファクター投資のメリット
ファクター投資の魅力は、感情に左右されにくいことです。
あらかじめ決めた基準に基づいて機械的に投資するため、「人気だから買う」「不安だから売る」といった心理的な影響を受けにくくなります。
また、複数の銘柄へ分散投資するため、個別企業のリスクも抑えやすくなります。
近年では、ファクター型ETFや投資信託も数多く登場しており、個人投資家でも利用しやすい環境が整っています。
注意すべき点
一方で、ファクター投資にも弱点があります。
どのファクターも常に市場平均を上回るわけではありません。
例えば、バリュー株が長期間低迷する時期や、小型株が大型株に劣後する局面もあります。
また、一つのファクターだけへ集中すると、市場環境の変化によって期待した成果が得られないこともあります。
そのため、複数のファクターを組み合わせたり、長期的な視点で運用したりすることが重要になります。
長期投資ではどう活用するか
個人投資家にとって、ファクター投資はインデックス投資とアクティブ運用の中間に位置するような考え方ともいえます。
市場全体へ投資する安心感を保ちながら、特定の特徴を持つ企業群へ重点的に投資できるためです。
ただし、短期間で成果を期待するのではなく、長い時間をかけてファクターの効果を待つ姿勢が欠かせません。
投資手法を選ぶ際には、自分の目的やリスク許容度に合わせて活用するとよいでしょう。
結論
ファクター投資とは、株式のリターンに影響を与える特徴や傾向に着目して運用する投資手法です。市場リスクだけでは説明できない企業規模や割安さ、モメンタムなどの要因を活用することで、市場平均を上回る成果を目指します。ただし、どのファクターも常に有効とは限りません。長期投資では複数のファクターを組み合わせ、分散投資を意識しながら継続することが重要です。
参考
ユージン・F・ファーマ、ケネス・R・フレンチ「Common Risk Factors in the Returns on Stocks and Bonds」(1993年)
アンドリュー・アング著『ファクター投資入門』
日本経済新聞 投資・資産運用関連記事(各号)