デジタル地方債は地域外の人も買えるのか 住民参加型地方債の購入対象を考える編

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2027年4月から発行できるようになるデジタル地方債は、個人が地域に投資する新しい仕組みとして期待されています。

では、その自治体に住んでいない人でも購入できるのでしょうか。

例えば東京に住んでいる人が、生まれ故郷の地方自治体が発行するデジタル地方債を買う。

以前住んでいた地域の地方債を買う。

旅行で好きになった地域の地方債を買う。

こうしたことができれば、デジタル地方債は住民だけではなく、全国の個人と地域を結ぶ金融商品になる可能性があります。

一方、これまでの住民参加型市場公募地方債では、地域住民やその地域に勤務する人などに購入対象を限定するケースもありました。

誰に買ってもらう地方債なのか。

これはデジタル地方債を考えるうえで重要な論点です。

住民参加型地方債とは何か

個人向け地方債の代表的な仕組みとして、住民参加型市場公募地方債があります。

一般にミニ公募債とも呼ばれます。

自治体が地域住民などから資金を集め、公共施設や地域事業の財源として活用する地方債です。

2002年3月には群馬県が病院整備のために10億円を発行し、20分足らずで完売しました。

自分たちが暮らす地域の公共施設を、自分たちのお金でも支える。

住民参加型という名称には、こうした意味があります。

購入対象を地域に限定する場合がある

住民参加型市場公募地方債では、誰でも購入できるとは限りません。

自治体によっては、

その自治体に住んでいる人。

その自治体に勤務している人。

その自治体に事業所を持つ法人。

などに購入対象を限定する場合があります。

地域住民などに資金調達へ参加してもらうこと自体が目的の一つだからです。

金融商品として広く販売することよりも、地域とのつながりを重視した仕組みといえます。

デジタル地方債も住民参加型として想定されている

今回のデジタル地方債も、住民参加型市場公募地方債の一種として発行することが想定されています。

そのため、実際に誰が購入できるのかは重要です。

デジタル化されたからといって、自動的に全国の誰でも購入できるようになるわけではありません。

発行する自治体がどのような商品設計をするのかによって、購入できる人の範囲は変わる可能性があります。

「デジタルだから全国販売」と単純に考えることはできません。

地域住民に限定する意味はある

購入対象を地域住民に限定することには、明確な意味があります。

例えば自治体が学校を建て替えるために地方債を発行するとします。

その学校を利用する可能性がある住民が地方債を購入する。

豪雨対策設備なら、その設備によって守られる地域の住民が購入する。

地域交通なら、その交通機関を利用する住民が購入する。

こうした形であれば、地方債と住民参加を強く結び付けることができます。

自治体にとっても、住民が地域の事業にどの程度関心を持っているのかを知る機会になります。

地域外にも自治体を応援したい人はいる

一方、現在住んでいる人だけがその地域に関心を持っているわけではありません。

例えば地方で生まれ育った人が、進学や就職で東京や大阪へ移住することがあります。

住所は変わっても、故郷との関係がなくなるわけではありません。

両親が暮らしている。

実家がある。

友人がいる。

毎年帰省している。

こうした人が故郷の自治体に投資したいと考えることは十分に考えられます。

ふるさと納税が示した地域外マネーの大きさ

ふるさと納税が広がったことで、住んでいる地域以外の自治体へ個人のお金が動くことは一般的になりました。

出身地だから寄付する人もいます。

災害が発生した地域を応援する人もいます。

返礼品をきっかけに、それまで知らなかった自治体と接点を持つ人もいます。

デジタル地方債でも同じように、地域外にいる個人のお金を地域へ呼び込める可能性があります。

ただし、ふるさと納税は寄付であり、地方債は投資です。

この違いは明確にしておく必要があります。

関係人口を投資家にできる可能性がある

地域との関係を考えるとき、住民か住民でないかという2つだけでは捉えきれなくなっています。

その地域に頻繁に旅行する人。

地域の商品を継続的に購入する人。

地域イベントに参加する人。

二地域で生活する人。

将来移住したいと考えている人。

こうした人も地域を支える存在です。

デジタル地方債を地域外の人にも販売できれば、こうした人たちが投資という形で地域と関わることができます。

1万円なら故郷への投資もしやすい

デジタル地方債では、1万円など小さな単位での発行が期待されています。

これは地域外の投資家を取り込むうえでも重要です。

例えば故郷の自治体が防災事業のために地方債を発行したとします。

100万円単位であれば、応援したくても簡単には購入できません。

1万円なら購入できる人は大幅に増えます。

1万円を故郷の防災に投資する。

5万円を地域の学校整備に投資する。

こうした少額の地域投資が広がる可能性があります。

地域外の投資家は新しい資金源になる

人口減少が進む自治体では、地域内だけで十分な個人投資家を集めることが難しくなる可能性があります。

人口そのものが減れば、住民だけを対象にした地方債の市場も小さくなります。

そこで地域外の個人にも対象を広げれば、資金調達の裾野を広げられます。

住民。

出身者。

観光客。

地域のファン。

将来の移住希望者。

さまざまな人から少額ずつ資金を集めるという考え方です。

デジタル化は、こうした広い投資家層との接点をつくる手段になり得ます。

全国から資金を集めればよいとは限らない

ただし、地域外の人に広く販売すれば必ずよいというわけではありません。

地方債には地域住民の参加を促すという役割もあります。

例えば非常に魅力的な条件の地方債を全国に販売した結果、地域住民が購入する前に完売してしまえば、住民参加という目的が薄れてしまいます。

そこで、

住民向けの購入枠を設ける。

一定期間は住民を優先する。

地域外の購入者にも一定の条件を設ける。

といった商品設計も考えられます。

誰から資金を集めるのかは、自治体の発行目的によって変わります。

地域外の人には情報発信がさらに重要になる

地域住民であれば、自治体の課題を日常生活の中で知っています。

道路が老朽化している。

豪雨のたびに浸水する。

学校が古くなっている。

公共交通が減っている。

こうした問題を実感できます。

しかし地域外の人には分かりません。

だからこそ自治体は、

なぜこの事業が必要なのか。

いくら必要なのか。

地方債で何を整備するのか。

完成すると地域がどう変わるのか。

を分かりやすく説明する必要があります。

地域の魅力を発信する金融商品にもなる

デジタル地方債は、自治体を知ってもらう入口にもなります。

例えば環境対策に力を入れている自治体が、太陽光発電設備のデジタル地方債を発行します。

その地方債をきっかけに地域外の人が自治体を知ります。

事業の進捗情報を受け取ります。

地域イベントの案内が届きます。

実際に地域を訪れます。

地域の商品を購入します。

将来的には移住を検討するかもしれません。

地方債による投資を最初の接点として、地域との関係が深まる可能性があります。

住民と地域外投資家の両方を考える

デジタル地方債の購入対象を考えるときに重要なのは、住民か地域外かという二者択一にしないことです。

住民には、自分たちの地域づくりに参加してもらう。

地域外の人には、故郷や好きな地域を投資によって応援してもらう。

それぞれ違う役割があります。

自治体が地方債を発行する目的に応じて、購入対象を設計することが重要になります。

結論

デジタル地方債が始まっても、必ず全国の誰もが自由に購入できるとは限りません。

今回の仕組みでは、住民参加型市場公募地方債の一種として発行することが想定されています。

これまでの住民参加型地方債では、地域住民や地域に勤務する人などに購入対象を限定する場合がありました。

デジタル地方債でも、具体的な購入資格はそれぞれの商品設計によって決まることになります。

一方、デジタル化には地域外の投資家との接点を広げられる可能性があります。

故郷を応援したい人。

以前住んでいた地域を応援したい人。

旅行で好きになった地域に投資したい人。

地域の環境や防災プロジェクトに共感する人。

こうした人が1万円など少額から地方債を購入できれば、地域に新しい資金の流れをつくることができます。

住民が自分の地域に投資する。

地域外の人が好きな地域に投資する。

デジタル地方債が広がれば、住所だけでは決まらない新しい地域との関わり方が生まれる可能性があります。

参考

日本経済新聞 2026年9月29日朝刊 「デジタル地方債の可能性 地域に投資、裾野広げる 個人の購入、増やす契機」

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