みなし贈与と事業承継税制の実務⑦ 非上場株式・同族会社とみなし贈与(実務編)

税理士
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これまで、みなし贈与の基本構造と低額譲渡の判断基準を整理してきました。

第7回では、その中でも最も実務インパクトが大きい分野である、非上場株式と同族会社におけるみなし贈与を扱います。

この領域は、事業承継と直結しており、判断を誤ると多額の贈与税課税につながる可能性があります。


なぜ非上場株式は問題になりやすいのか

非上場株式は市場価格が存在しないため、評価額の算定が複雑になります。

その結果、取引価格と評価額に差が生じやすく、低額譲渡として認定されるリスクが高くなります。

さらに、同族会社では株主間の関係が密接であり、価格設定が恣意的になりやすいという特徴があります。

このため、税務上は一般の取引以上に厳しくチェックされる領域となります。


株式価値の増加とみなし贈与

非上場株式に関するみなし贈与は、単純な売買だけではありません。

例えば、会社に対して無償で資産を提供した場合、その会社の純資産価額が増加します。

その結果、株式価値が上昇し、既存株主が利益を受けたと評価されることがあります。

この場合、株主はその増加分について贈与を受けたものとみなされる可能性があります。


典型的な発生パターン

実務でよく見られるみなし贈与のパターンは次のとおりです。

  • 会社への無償資産提供
  • 会社の債務免除
  • 時価より低い価額での現物出資
  • 低額での株式譲渡

これらはすべて、会社の価値を通じて株主に利益が移転する構造を持っています。


「誰に贈与があったのか」という問題

非上場株式の場合、みなし贈与の特徴として「誰が利益を受けたか」が問題になります。

例えば、会社に対して資産を提供した場合、直接利益を受けるのは会社です。

しかし、税務上は会社ではなく、その株主が利益を受けたと評価されることがあります。

このように、直接の取引当事者と課税対象者が異なる点が、実務を複雑にしています。


判例・通達の考え方

税務上は、株式価値の増加があった場合、その増加分は株主に帰属する利益と考えられます。

特に、同族会社においては、株主間に特別な関係があることが前提とされるため、この考え方が適用されやすくなります。

また、株式評価は評価通達に基づいて行われるため、実際の取引価格とは異なる評価がされることもあります。


事業承継との関係

事業承継では、非上場株式の移転が中心となります。

この際、以下のような場面でみなし贈与のリスクが生じます。

  • 後継者への株式の低額譲渡
  • 親から会社への資金投入
  • 株式構成の変更を伴う取引

これらはすべて、株式価値の変動を通じて課税関係に影響を与えます。


実務での重要ポイント

非上場株式に関するみなし贈与を回避するためには、以下の点が重要です。

  • 株式の評価額を正確に把握する
  • 取引価格の根拠を明確にする
  • 会社と株主の関係を意識する

特に、「株式価値にどのような影響があるか」を常に意識することが重要です。


見落とされやすいリスク

実務では、次のようなケースが見落とされがちです。

  • 少数株主への影響
  • 間接的な利益移転
  • 長期間にわたる資本取引

これらは単発の取引ではなく、複数の取引の積み重ねとして評価されることがあります。


結論

非上場株式と同族会社におけるみなし贈与は、単純な取引ではなく、株式価値の変動を通じて評価される複雑な領域です。

形式的な取引だけでなく、その結果として誰にどのような利益が移転したのかを考える必要があります。

特に事業承継の場面では、この視点を欠くと重大な税務リスクにつながります。

次回は、事業承継税制の全体構造について整理し、制度の位置付けを明確にしていきます。


参考

東京税理士協同組合 教育情報事業 全国統一研修会資料
みなし贈与と事業承継税制(令和8年)
国税庁 公表資料
財務省 公表資料

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