返礼品なしのふるさと納税とは何か 自治体への応援だけで寄付する仕組み編

税理士
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ふるさと納税というと、寄付をして肉や魚、米、果物などの返礼品を受け取る制度というイメージが定着しています。

しかし、返礼品を受け取ることはふるさと納税の必須条件ではありません。

返礼品を希望せず、自治体や地域の取り組みを応援することだけを目的に寄付することもできます。

こうした返礼品なしの寄付が増えると、自治体は返礼品の調達費や送料などを抑えられます。

その結果、同じ1万円の寄付でも地域のために使える金額を増やすことができます。

総務省がふるさと納税の経費率上限を2029年に40%まで引き下げるなか、返礼品なしの寄付は制度本来の姿を考えるうえでも重要になっています。

返礼品なしのふるさと納税とは何か

返礼品なしのふるさと納税とは、自治体へ寄付をしても返礼品を受け取らない方法です。

ふるさと納税は、返礼品を購入する制度ではありません。

法律上の基本的な仕組みは自治体への寄付です。

一定の要件を満たして手続きをすれば、寄付額のうち2000円を超える部分について、所得税や個人住民税から一定の控除を受けられます。

返礼品は自治体が寄付への感謝として提供しているものであり、税控除を受けるための条件ではありません。

したがって返礼品を受け取らなくても、ふるさと納税として寄付することができます。

なぜ返礼品を受け取らずに寄付するのか

返礼品が用意されているなら、受け取った方が得だと考える人もいるでしょう。

しかし、寄付をする理由は経済的なメリットだけではありません。

生まれ育った故郷を応援したい。

以前住んでいた地域を支えたい。

旅行で訪れて好きになった地域を応援したい。

災害を受けた自治体を支援したい。

動物保護や子育てなど特定の活動を支援したい。

こうした目的であれば、返礼品を受け取ること自体が重要ではありません。

自分の寄付をできるだけ多く地域のために使ってほしいと考えて、あえて返礼品を希望しない人もいます。

返礼品をなくすと自治体に残る金額が増える

返礼品なしの寄付が自治体にとって大きな意味を持つ理由は、経費を削減できることです。

通常のふるさと納税では、返礼品を提供するための調達費がかかります。

さらに物品なら送料がかかります。

梱包費や発送管理のための費用も発生する場合があります。

仮に1万円の寄付について3000円の返礼品を調達し、送料が1000円かかるとします。

これだけで4000円です。

返礼品を希望しない寄付なら、この部分を大幅に減らすことができます。

もちろん寄付受付や決済、事務処理などの経費は残ります。

それでも返礼品と配送に伴う費用が不要になれば、地域で使える金額を増やしやすくなります。

経費率によって地域に残る金額は大きく変わる

2025年度のふるさと納税の全国平均の経費率は47.9%でした。

単純化すると、1万円の寄付に対して4790円が経費となり、5210円が残る計算です。

経費率が30%なら7000円が残ります。

20%なら8000円です。

10%なら9000円です。

同じ1万円を寄付しても、経費率によって地域で使える金額は大きく変わります。

返礼品なしの寄付は、自治体が寄付額を増やすだけでなく、寄付金をより効率よく地域へ残す方法の一つになります。

神石高原町では返礼品不要の寄付が多い

返礼品なしでも寄付を集められることを示しているのが広島県神石高原町です。

同町では2025年度に5億8000万円の寄付を集めました。

特徴は、使い道を限定したクラウドファンディング型の寄付が6割強を占めていることです。

犬の殺処分ゼロを目指す活動や、災害時に民間の医師やレスキュー隊員が現地で支援するプロジェクトなどを掲げています。

こうした活動への寄付では、返礼品は不要という人が多いとされています。

寄付者が欲しいのは商品ではなく、社会課題を解決する活動への参加だからです。

神石高原町の経費率は13.7%

神石高原町の2025年度の経費率は13.7%でした。

全国平均47.9%と比べると非常に低い水準です。

1万円の寄付で単純比較すると、全国平均の47.9%なら経費は4790円です。

13.7%なら1370円です。

地域などに回せる金額には3420円の差が生じます。

すべての差が返礼品の有無だけによるものではありませんが、返礼品不要の寄付が多ければ、返礼品調達費や配送費を抑えやすくなります。

寄付額だけを見るのではなく、集めたお金をどれだけ地域に残せたかを見る重要性が分かります。

災害支援と返礼品なしの寄付は相性がよい

返礼品なしのふるさと納税が特に活用しやすいのが災害支援です。

大規模な地震や豪雨などが発生すると、被災した自治体へふるさと納税を利用して寄付する動きが広がることがあります。

この場合、寄付者の目的は返礼品ではありません。

被災地を助けたいということです。

むしろ返礼品を準備すれば、被災した自治体や地域の事業者に新たな負担をかける可能性があります。

返礼品を必要としない寄付であれば、支援に回せる金額を増やしながら、返礼品の準備や発送に伴う事務負担も抑えられます。

ふるさと納税の仕組みを、全国から被災自治体へ資金を届ける手段として活用できます。

社会課題への寄付とも相性がよい

返礼品なしの寄付は災害支援だけではありません。

動物保護。

子どもの支援。

教育。

文化財保存。

自然環境保護。

地域医療。

こうした社会的な目的とも相性があります。

重要なのは、寄付者にお金の使い道を具体的に示すことです。

単に返礼品はありませんと伝えるだけでは、寄付を集めることは難しいでしょう。

自分の1万円が何に使われるのか。

寄付によって何が変わるのか。

どのような成果が生まれたのか。

こうした情報が分かれば、返礼品とは別の価値を寄付者に提供できます。

返礼品の代わりに成果を返す

返礼品なしの寄付では、自治体が寄付者へ何も返さなくてよいという意味ではありません。

物品の代わりに、活動の成果を伝えることが重要になります。

たとえば寄付によって施設を修復できた。

保護した動物の環境を改善できた。

子どもたちへ新しい教育機会を提供できた。

災害復旧がここまで進んだ。

こうした結果を寄付者へ伝えます。

寄付したお金が役に立ったと実感できれば、翌年も寄付してもらえる可能性があります。

商品を返すのではなく、寄付によって生まれた成果を返すという考え方です。

返礼品競争から脱却できるのか

ふるさと納税では、自治体同士の返礼品競争が制度の大きな問題として指摘されてきました。

寄付を増やすために人気商品をそろえる。

仲介サイトで目立たせる。

全国へ大量に発送する。

寄付額は増えても、同時に経費も増える構造です。

返礼品なしの寄付を増やせれば、この競争から一定の距離を置くことができます。

自治体が競うものも変わります。

返礼品の豪華さではなく、

どのような地域を目指しているのか

どのような課題を解決するのか

寄付金をどのように使ったのか

という部分が重要になります。

返礼品を完全になくすことは現実的ではない

一方、すべてのふるさと納税を返礼品なしにするのは現実的ではありません。

多くの寄付者が返礼品を楽しみに制度を利用しています。

返礼品には地域の特産品を全国に知ってもらう役割もあります。

地域の農家や漁業者、食品会社などにとって、新しい販路になる場合もあります。

したがって問題は、返礼品があるかないかという二者択一ではありません。

返礼品で地域の産業を応援する寄付。

体験型返礼品で観光客を呼び込む寄付。

返礼品なしで社会課題を支援する寄付。

複数の方法を組み合わせることが重要になります。

経費率40%で返礼品なしの価値が高まる

総務省はふるさと納税の経費率上限を段階的に引き下げ、2029年には40%とする方針です。

自治体は返礼品調達費、送料、仲介サイト手数料、事務費などを含めて経費を抑えなければなりません。

返礼品を単純に削れば寄付額まで減る可能性があります。

そこで返礼品がなくても寄付してくれる人を増やすことができれば、経費率を下げながら寄付額を維持できる可能性があります。

これから自治体に求められるのは、返礼品を選んでもらう力だけではありません。

地域そのものを応援してもらう力です。

結論

返礼品なしのふるさと納税とは、寄付者が自治体から返礼品を受け取らず、地域や特定の活動を応援することを目的として寄付する仕組みです。

返礼品はふるさと納税の税控除を受けるための必須条件ではありません。

返礼品を希望しなければ、自治体は返礼品調達費や送料などを抑え、その分を地域やプロジェクトへ回しやすくなります。

特に災害支援や社会課題を解決するプロジェクトでは、返礼品より寄付金の使い道そのものが寄付の動機になります。

一方で、返礼品には地域産品を全国へ広め、地域事業者を支える役割もあります。

重要なのは返礼品をなくすことではなく、返礼品がなくても応援したいと思われる自治体や地域をつくることです。

2029年に経費率上限が40%へ引き下げられるなか、ふるさと納税は返礼品のお得さを競う仕組みから、地域への共感や応援を集める仕組みへ転換できるかが問われています。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税、経費を圧縮 40%以下は177自治体

日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税の経費圧縮 世田谷区、独自サイト開設

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