ふるさと住民制度が地域の未来を変える 関係人口が支える新しい地方創生

人生100年時代
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地方創生という言葉が使われ始めてから10年以上が経過しました。人口減少や少子高齢化が進むなか、多くの自治体が移住促進や観光振興に取り組んできましたが、人口減少そのものを止めることは容易ではありません。

こうした中で注目されているのが、2026年度から始まる「ふるさと住民登録制度」です。この制度は、実際に住んでいなくても地域と継続的につながる人を「ふるさと住民」として位置付け、地域づくりに参加してもらう新しい仕組みです。

今回は、この制度が目指すものと、地方創生にどのような可能性をもたらすのかについて考えてみます。

人口ではなく「関係人口」の時代へ

これまで地域政策では、「定住人口」を増やすことが重要視されてきました。

しかし、地方では人口減少が続き、すべての自治体が人口を増やすことは現実的ではありません。

そこで近年重視されるようになったのが「関係人口」です。

関係人口とは、その地域に住んではいないものの、

・ふるさとである
・旅行で何度も訪れている
・仕事で関わっている
・副業やボランティアをしている
・ふるさと納税を継続している

など、地域と継続的なつながりを持つ人々を指します。

人口だけでは測れない「応援してくれる人」を増やすことが、これからの地方創生の重要な考え方になっています。

ふるさと住民登録制度とは何か

新制度では、国が共通のデジタル基盤を整備し、各自治体がそれを利用して「ふるさと住民」を登録します。

登録すると、

・地域の情報配信
・イベント案内
・地域活動への参加募集
・地域との継続的な交流

などを受けられるようになります。

政府は今後10年間で1000万人の登録を目標に掲げています。

重要なのは、単なる会員登録制度ではなく、「地域に貢献したい人」と「地域が必要とする人材」を結び付ける仕組みとして機能させようとしている点です。

交流イベントだけでは地域は活性化しない

実は、このような制度は初めてではありません。

全国には以前から「特別町民制度」や「地域サポーター制度」など、住民以外が地域に参加する仕組みが数多く存在しています。

しかし、その中には

「イベントに参加して終わり」

「交流すること自体が目的になってしまう」

という課題も少なくありませんでした。

地域活性化につながるためには、

「誰が」
「何を」
「どのように」
「地域へ貢献するのか」

を具体的に設計する必要があります。

人数だけを追い求めても、地域は変わりません。

副業人材が地方を変える可能性

近年は都市部で働く会社員が、副業として地方に関わる事例も増えています。

例えば、

・マーケティング
・DX推進
・SNS運営
・経営改善
・商品開発
・デザイン
・人材育成

など、都市部に蓄積された専門知識を地方企業へ提供する取り組みが広がっています。

長野県塩尻市では必要な人材像を具体的に示して募集し、松山市では副業人材自身から役割を提案してもらう仕組みを採用しています。

どちらも共通しているのは、「人を集めること」ではなく、「地域課題を解決すること」を目的にしている点です。

地域に必要なのは「人材募集」ではなく「課題の見える化」

制度が成功するかどうかは、募集方法よりも準備段階にあります。

地域には、

・商工会
・農業団体
・NPO
・自治会
・地元企業
・学校
・金融機関

など多くの組織があります。

こうした地域内の主体が、

「地域の課題は何か」

「不足している人材は誰か」

「どんな専門知識が必要か」

を共有できて初めて、外部人材は力を発揮できます。

つまり、制度の本質は人集めではなく、地域全体で課題を整理するプロセスにあるといえるでしょう。

ふるさと納税との連携も期待される

今後期待されるのが、ふるさと住民制度とふるさと納税の連携です。

もし、

ふるさと住民登録

地域活動への参加

イベント参加

寄付

継続的な交流

という流れが一つの基盤で実現できれば、単なる「返礼品目的」の寄付ではなく、地域への愛着を育てる仕組みへ発展する可能性があります。

自治体にとっても、複数のシステムを運用する必要がなくなり、事務コストの削減にもつながります。

「寄付して終わり」から「地域との長い付き合い」への転換が期待されています。

人口減少社会では「住む人」より「支える人」が重要になる

人口減少は今後も続きます。

すべての地域で人口を増やすことは難しくなっていくでしょう。

しかし、地域を支える人は必ずしも住民だけではありません。

都市部に住みながら地方企業を支援する人。

週末だけ地域活動に参加する人。

毎年ふるさと納税を続ける人。

専門知識をオンラインで提供する人。

こうした多様な関わり方が地域の新しい力になります。

「住民」と「観光客」の間に存在する関係人口をどれだけ増やせるかが、これからの地方創生の成否を左右する重要なテーマになるでしょう。

結論

ふるさと住民登録制度は、人口を奪い合う地方創生から、地域を応援する人を増やす地方創生へと発想を転換する制度です。

制度が成功するためには、登録者数だけを競うのではなく、地域の課題を明確にし、地域内外の人材が協力できる環境を整えることが欠かせません。

人口減少が避けられない時代だからこそ、「住んでいる人」だけで地域を支えるのではなく、「地域を思い、関わる人」を増やしていくことが、持続可能な地域づくりへの第一歩となるのではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年7月17日 朝刊
「ふるさと住民の活躍を願う」 私見卓見 BIPROGY総合技術研究所 上席研究員 西村忠士

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