その他空き家とは何か 空き家が約900万戸あってもすべて売ったり貸したりできない理由編

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日本では空き家が増え続けています。

2023年時点の空き家は約900万戸に達しています。

これだけ空き家があるのであれば、新築住宅が減っても問題はなく、空いている住宅を売ったり貸したりすれば住宅不足を解消できるように思えます。

しかし、約900万戸の空き家がすべて住宅市場で利用できるわけではありません。

空き家にはいくつかの種類があり、その中でも特に問題になっているのがその他空き家です。

その他空き家とは、賃貸や売却など明確な利用目的がないまま空いている住宅です。

2023年時点で約386万戸あります。

住宅が余っているのに住みたい住宅が不足する理由を理解するには、空き家の総数だけではなく、その中身を見る必要があります。

空き家とは何か

空き家とは、人が日常的に住んでいない住宅です。

ただし、人が住んでいない住宅がすべて同じ理由で空いているわけではありません。

例えば、入居者を募集している賃貸マンションにも空室があります。

売りに出されている中古住宅も、買い手が見つかるまでは空き家になることがあります。

別荘など普段は住んでいない住宅もあります。

そして、特に利用目的が決まっていないまま空いている住宅もあります。

そのため、空き家の問題を考える場合には、

なぜ空いているのか

これから使う予定があるのか

売ったり貸したりする意思があるのか

住宅として利用できる状態なのか

を確認する必要があります。

空き家の戸数だけでは、住宅市場で利用できる住宅がどれだけあるのかは分かりません。

空き家にはどのような種類があるのか

空き家は利用目的などによって分類できます。

代表的なのが賃貸用の空き家です。

アパートやマンションなどで入居者を募集しているものの、現在は誰も住んでいない住宅です。

次に売却用の空き家があります。

所有者が売却するために市場へ出している住宅です。

この二つは現在空いていても、新しい入居者や買い手が決まれば利用されます。

そのため、住宅市場の中で動いている空き家と考えることができます。

これらとは別に、別荘など普段は人が住んでいない住宅もあります。

そして、それ以外の空き家がその他空き家です。

このその他空き家の増加が、日本の空き家問題を考えるうえで特に重要になっています。

その他空き家とは何か

その他空き家とは、賃貸用や売却用などに分類されない空き家です。

例えば、親が亡くなって子どもが実家を相続したものの、そのまま誰も住んでいない住宅があります。

所有者が高齢者施設へ入居し、それまで住んでいた住宅が空いたままになっている場合もあります。

転勤などで別の場所へ移った後、元の住宅を処分せず残していることもあります。

つまり、

貸すわけでもない

売るわけでもない

普段利用するわけでもない

という状態の住宅です。

2023年時点で、このその他空き家は約386万戸あります。

約900万戸ある空き家の中でも、住宅市場での活用が難しい空き家が大量に存在していることになります。

なぜ売却しない空き家が生まれるのか

使わない住宅なら売ればよいと思うかもしれません。

しかし、実際には簡単ではありません。

まず、所有者が売りたくない場合があります。

親から相続した実家であれば、思い出があるため処分する決断ができないことがあります。

将来自分や子どもが使うかもしれないと考えて残しておくこともあります。

相続によって所有者が複数になっている場合には、売却について意見がまとまらないこともあります。

さらに、売りたくても買い手が見つからない住宅があります。

人口減少が進む地域では住宅需要そのものが弱いためです。

土地と建物を売却しても価格が非常に低く、家財の処分や建物の解体費用を考えると、所有者が積極的に売却するメリットを感じにくい場合もあります。

このような事情が重なることで、利用されない住宅がそのまま残ります。

空き家は放置すると劣化する

住宅は、人が住まなくなればそのままの状態で保存されるわけではありません。

むしろ空き家になることで劣化が進むことがあります。

人が住んでいれば、雨漏りや設備の故障などに比較的早く気づくことができます。

空き家では、それに気づく人がいません。

小さな雨漏りが長期間放置されれば、柱や床などにまで被害が広がることがあります。

換気されなければ湿気がこもり、カビや腐食が発生する可能性もあります。

庭木や雑草が伸びれば、周辺住宅へ影響することもあります。

つまり、空き家は時間が経過するほど、

売りにくくなる

貸しにくくなる

修繕費が増える

という悪循環に陥る可能性があります。

比較的状態の良いうちに活用方法を決めることが重要になります。

約386万戸がそのまま使えるわけではない

その他空き家が約386万戸あるなら、それを住宅市場へ出せば大量の住宅供給になるように見えます。

しかし、ここにも大きな問題があります。

建物の状態です。

その他空き家には、耐震性が不足している住宅や、腐朽や破損などによって修繕が必要な住宅が多く含まれています。

元の記事では、国土交通省によると、その他空き家のうち約7割は耐震性が不足するか、耐震性があっても腐朽や破損などがあり修繕が必要とされています。

つまり、空き家だからすぐに住めるわけではありません。

住宅として再利用するためには、

耐震改修

屋根や外壁の修繕

水回りの交換

給排水設備の更新

断熱改修

内装工事

などが必要になる場合があります。

物件そのものを安く取得できても、改修費が高額になれば利用は難しくなります。

立地の問題も大きい

空き家活用では、建物の状態だけでなく立地も重要です。

住宅は移動させることができません。

地方に空き家が大量に存在していても、住宅需要が東京などの都市部に集中していれば、その空き家によって都市部の住宅不足を解決することはできません。

さらに同じ市町村でも、

駅から遠い

スーパーが遠い

病院が少ない

公共交通機関が少ない

学校から遠い

といった住宅は需要が弱くなります。

建物をきれいに改修しても、立地そのものを変えることはできません。

そのため、空き家活用では住宅の状態だけではなく、その場所に将来どれだけ住宅需要があるのかを見る必要があります。

空き家の修繕にも人手が必要になる

老朽化した空き家を活用するためには修繕が必要です。

ところが、日本では大工などの建設人材が減っています。

これが空き家活用をさらに難しくします。

中古住宅の修繕は、新築住宅より省人化しにくい面があります。

新築住宅では、木材を工場であらかじめ加工するプレカットなどを利用できます。

同じ規格の部材を使うことで作業を効率化することもできます。

一方、中古住宅は一戸ごとに状態が違います。

壁を開けてみたら柱が傷んでいた。

床を剥がしたら腐食が見つかった。

配管が想定以上に古かった。

このようなことが起こります。

そのため、現場で職人が判断しながら作業する必要があります。

大工が減少すれば、空き家が大量にあっても、それを住める状態へ戻す能力が不足する可能性があります。

安い空き家でも総額では高くなることがある

空き家の中には非常に安い価格で売られている物件があります。

例えば500万円で購入できる戸建て住宅があったとします。

一見すると、新築住宅より大幅に安く見えます。

しかし、

耐震改修に500万円

断熱改修に300万円

水回り交換に300万円

屋根や外壁に300万円

などの費用が必要になれば、購入費と改修費を合わせて1900万円になります。

さらに土地の立地条件や将来の売却可能性も考える必要があります。

住宅購入では、

物件価格が安い

ことと、

住宅取得全体の費用が安い

ことは同じではありません。

特に古い空き家を購入する場合には、修繕費を含めた総額で判断する必要があります。

空き家が多くても状態の良い中古住宅は不足する

空き家問題を考えるうえで重要なのが、この点です。

日本全体では空き家が約900万戸あります。

しかし、住宅購入者が求めているのは単なる空いている建物ではありません。

多くの人が求めるのは、

通勤や生活に便利な場所にある

耐震性がある

断熱性能がある

大規模な修繕をしなくても住める

適切な価格で購入できる

といった住宅です。

こうした条件を満たす中古住宅は、空き家900万戸という数字から想像するほど多いとは限りません。

新築住宅の供給が減れば、状態の良い中古住宅に需要が集中する可能性があります。

その結果、

空き家は増える

一方で、

良質な中古住宅は値下がりしない

という一見矛盾した現象が起こります。

空き家問題は戸数だけでは判断できない

空き家についてニュースを見ると、空き家率や空き家戸数が注目されます。

もちろん重要な数字です。

しかし、住宅市場を考える場合には、その中身を見る必要があります。

重要なのは、

賃貸用なのか

売却用なのか

その他空き家なのか

住宅として使える状態なのか

どこにあるのか

修繕にはいくらかかるのか

という点です。

空き家が100戸あっても、そのうち住宅市場で実際に利用できる住宅が10戸しかなければ、残り90戸は住宅供給としてすぐには機能しません。

空き家の量と利用可能な住宅の量を分けて考えることが重要です。

結論

日本には2023年時点で約900万戸の空き家があります。

しかし、この約900万戸がそのまま中古住宅市場の供給になるわけではありません。

空き家には、入居者を募集している賃貸用、買い手を探している売却用などがあります。

そして特に問題となるのが、明確な利用目的がないその他空き家です。

その他空き家は約386万戸あります。

相続した実家を処分できない、将来使うかもしれない、買い手が見つからないなど、さまざまな理由で住宅市場に出てきません。

さらに老朽化した住宅も多く、耐震改修や修繕をしなければ住めない物件もあります。

地方など住宅需要の弱い場所にある空き家では、改修しても買い手や借り手が見つからない可能性があります。

加えて、大工などの建設人材が減少すれば、空き家を住める状態に戻すこと自体が難しくなります。

つまり、

空き家が多い

ことと、

利用できる中古住宅が多い

ことは同じではありません。

これが、空き家が約900万戸も存在する一方で、条件の良い住宅が不足する理由です。

これから新築住宅の供給が減るのであれば、空き家を活用する重要性は高まります。

ただし、すべての空き家を救うことは現実的ではありません。

立地、建物の状態、耐震性、修繕費、将来の住宅需要を見ながら、活用できる住宅と活用が難しい住宅を見極める必要があります。

空き家問題とは単純に住宅が余っている問題ではありません。

住める住宅と住めない住宅、必要とされる住宅と必要とされない住宅が同時に存在しているという、日本の住宅ストックのミスマッチの問題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し

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