かかりつけ薬局とは何か 処方箋を受け取るだけの薬局から転換する仕組み編

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病院を受診するたびに、その病院の近くにある薬局で薬を受け取っている人は少なくありません。

内科を受診したときは内科の近くの薬局、整形外科を受診したときは整形外科の近くの薬局、眼科を受診したときは眼科の近くの薬局という利用方法です。

患者にとって便利な一方、薬局が分散すると、それぞれの薬局では患者が他の医療機関からどのような薬を処方されているのか把握しにくくなります。

そこで重要になるのが、かかりつけ薬局という考え方です。

複数の医療機関を受診していても、できるだけ一つの薬局で薬を管理してもらうことで、患者が服用している薬をまとめて確認できます。

処方箋を受け取って薬を渡す場所から、患者の薬物治療を継続的に支える場所へ変わることが、これからの薬局に求められています。

かかりつけ薬局とは何か

かかりつけ薬局とは、患者が医療機関から処方箋を受け取ったときに継続的に利用し、自分が使用している薬についてまとめて管理してもらう薬局です。

重要なのは、特定の病院に対応する薬局ではなく、患者自身に対応する薬局だということです。

例えば、ある患者が内科、整形外科、眼科の三つの医療機関を受診しているとします。

それぞれの医療機関の近くにある別々の薬局を利用すれば、薬の情報も三つの薬局に分散します。

一方、三つの医療機関から発行された処方箋を一つの薬局に持っていけば、その薬局では患者が使用している薬をまとめて把握できます。

患者を中心として薬の情報を集約することが、かかりつけ薬局の基本的な考え方です。

かかりつけ薬局にはどのような役割があるのか

かかりつけ薬局の役割は、処方箋に書かれた薬を調剤することだけではありません。

患者がどのような薬を使用しているのかを継続的に把握し、安全に薬を使用できるよう支援します。

例えば、新しく処方された薬と以前から使用している薬との飲み合わせに問題がないか確認します。

薬を正しく服用できているか、副作用と思われる症状が出ていないかを確認することもあります。

必要であれば医師へ情報を提供し、処方内容について確認することも薬剤師の重要な仕事です。

患者が市販薬や健康食品などを利用している場合には、それらと処方薬との関係を確認することもできます。

薬局の役割が、調剤という一回の取引から、患者の服薬を継続的に管理する仕事へ広がっていくことになります。

複数の医療機関の薬をまとめる意味

高齢になるほど、複数の医療機関を受診するケースが増える傾向があります。

例えば、高血圧については内科、腰痛については整形外科、目の病気については眼科というように、それぞれ異なる医師から薬が処方されることがあります。

それぞれの医師は自分が診察している病気について薬を処方します。

しかし患者が使用している薬の情報が十分に共有されていなければ、似たような作用を持つ薬が複数処方される可能性があります。

一つの薬局で処方薬をまとめて管理すれば、薬剤師が処方内容を横断的に確認できます。

どの病院でもらった薬なのかではなく、その患者が現在どの薬を使用しているのかという視点で管理できるのです。

高齢化によって複数の慢性疾患を抱える人が増えるほど、この役割は重要になります。

重複投薬を防ぐ仕組み

複数の医療機関を受診している場合に注意しなければならないのが重複投薬です。

重複投薬とは、同じような効能や作用を持つ薬が複数の医療機関から重なって処方されることです。

医療機関同士で患者の処方情報が十分に共有されていなければ起こる可能性があります。

薬局が一元的に患者の薬を管理していれば、新しい処方箋を受け付けた段階で過去の薬歴と照合できます。

同じ成分の薬が重複していないか、同じような作用を持つ薬が増えすぎていないかを確認できます。

問題がある可能性があれば、薬剤師から処方した医師へ問い合わせることもできます。

処方箋に書かれている内容をそのまま調剤するだけではなく、患者が使用している薬全体を確認することに意味があります。

残薬を減らすことも重要になる

もう一つの問題が残薬です。

残薬とは、処方されたものの患者が使用せず、自宅などに残っている薬です。

飲み忘れだけではなく、体調の変化や服用方法の理解不足など、さまざまな理由で発生します。

特に複数の薬を使用する高齢者では、どの薬をいつ飲むのか分からなくなり、薬が余ってしまうことがあります。

薬剤師が継続的に患者の服薬状況を確認すれば、残薬がどの程度あるのか把握できます。

必要に応じて医師と連携し、次回の処方日数などを調整することも考えられます。

患者にとっては不要な薬を抱え込むことを防ぐことができ、医療費の適正化にもつながります。

薬を渡した時点で薬局の仕事が終わるのではなく、患者が実際に薬を使用できているかまで確認することが重要になります。

お薬手帳と電子処方箋も活用する

薬の一元管理を支える代表的な仕組みがお薬手帳です。

お薬手帳には、患者が処方された薬の名称や服用方法などの情報が記録されます。

複数の医療機関や薬局を利用している場合でも、お薬手帳を提示することで薬剤師が過去の処方内容を確認できます。

さらに電子処方箋など医療のデジタル化が進めば、薬剤情報を確認する方法も広がっていきます。

ただし、情報を集めるだけで薬の問題が自動的に解決するわけではありません。

その情報を確認し、患者の状態と照らし合わせ、必要であれば医師へ働きかける薬剤師の役割が重要です。

デジタル化は、かかりつけ薬局の機能を支える手段の一つと考えることができます。

門前薬局とは何が違うのか

門前薬局とかかりつけ薬局の大きな違いは、何を中心として薬局を利用するかです。

門前薬局では、病院や診療所という医療機関を中心として患者が薬局を利用する傾向があります。

病院を受診した患者が、その近くにある薬局へ処方箋を持っていく仕組みです。

これに対して、かかりつけ薬局では患者自身が中心になります。

どの医療機関を受診したとしても、できるだけ同じ薬局を利用し、薬の情報をまとめて管理してもらいます。

門前薬局が医療機関との距離を強みにしてきたのに対し、かかりつけ薬局では患者との継続的な関係が強みになります。

調剤薬局の競争軸が立地から患者との関係へ変わることを意味しています。

処方箋が減るほど患者との関係が重要になる

2025年度に病院などが発行した処方箋の枚数は8億5730万枚となり、前年度から0.8%減少しました。

新型コロナウイルス禍による特殊要因を除けば、比較可能な1993年度以降で初めての前年割れです。

人口減少や市販薬利用の拡大などによって、今後も処方箋市場の成長が続くとは限りません。

処方箋が増えていた時代には、新しい店舗を出し、多くの処方箋を受け付けることが成長につながりました。

しかし処方箋そのものが減少すれば、限られた処方箋を薬局同士で奪い合うことになります。

そのとき重要になるのが、患者から継続的に利用してもらえるかどうかです。

病院に近いから利用される薬局から、この薬局に薬を管理してもらいたいから利用される薬局への転換が必要になります。

在宅医療との相性もよい

かかりつけ薬局の考え方は在宅医療とも密接に関係しています。

高齢になって通院が難しくなれば、医師や看護師などが患者の自宅を訪問して医療を提供するケースが増えます。

薬剤師も患者の自宅や高齢者施設を訪問し、薬の使用状況を確認することができます。

自宅を訪問すれば、薬局の窓口だけでは分からなかった問題が見えることもあります。

大量の薬が残っていたり、複数の医療機関から処方された薬が混在していたりする場合があります。

患者の生活まで把握しながら服薬を支援することは、かかりつけ薬局が持つ継続的な薬剤管理という役割の延長線上にあります。

高齢化が進むほど、患者を店舗で待つだけではない薬局の重要性が高まります。

薬局は薬を渡す場所から変わっていく

調剤薬局では長い間、処方箋を受け付け、正確に薬を調剤し、患者へ渡すことが中心的な業務でした。

もちろん、この役割がなくなるわけではありません。

しかし調剤機器やデジタル技術の進歩によって、薬をそろえる業務については効率化できる余地が広がっています。

一方、患者の服薬状況を確認したり、医師と連携したり、副作用や重複投薬を防いだりする仕事は、薬剤師の専門性がより求められる分野です。

調剤という対物業務だけではなく、患者に向き合う対人業務へ重点を移すことが求められています。

かかりつけ薬局への転換は、その象徴ともいえます。

結論

かかりつけ薬局とは、患者が複数の医療機関を受診していても、できるだけ一つの薬局を継続的に利用し、服用している薬をまとめて管理してもらう考え方です。

薬の情報を一元的に把握することで、重複投薬や飲み合わせの問題を発見しやすくなります。

飲み忘れなどによって発生する残薬を把握し、医師と連携して適切な処方につなげることもできます。

門前薬局が特定の医療機関との位置関係を強みにするモデルであるのに対し、かかりつけ薬局では患者との継続的な関係が重要になります。

処方箋の発行枚数が減少に転じたことで、薬局は単純に処方箋を大量に受け付けるだけでは成長しにくくなっています。

在宅医療やデジタル化が進めば、薬局の役割はさらに広がるでしょう。

これから問われるのは、どれだけ多くの薬を渡したかだけではありません。

患者が安全に薬を使い続けられるよう、どれだけ継続的に支えることができるかです。

かかりつけ薬局への転換は、調剤薬局が処方箋を処理する場所から、地域住民の薬物治療を支える医療拠点へ変わっていく流れなのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日 市販薬シフトで処方箋減少 昨年度、調剤薬局に再編圧力

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