iDeCoは一時金と年金のどちらで受け取るべきか 退職所得控除と公的年金等控除を比べる方法編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

iDeCoで老後資金を積み立てた後、最後に考えなければならないのが受け取り方です。

代表的なのは、まとめて一時金として受け取る方法と、複数年に分けて年金として受け取る方法です。

どちらを選んでも同じ金額を受け取るのだから、税金もそれほど変わらないと思うかもしれません。

しかし税制上の扱いは大きく異なります。

一時金には退職所得控除があり、年金には公的年金等控除があります。

そのため、どちらが有利かはiDeCoの資産額だけでは決まりません。

会社の退職金や公的年金など、ほかの老後収入まで含めて考える必要があります。

一時金なら退職所得として扱われる

iDeCoの老齢給付金を一時金として受け取る場合、原則として退職所得として扱われます。

そこで利用できるのが退職所得控除です。

退職所得控除は、iDeCoでは掛け金を拠出した期間などをもとに計算します。

20年以下の部分については原則として1年40万円、20年を超える部分については1年70万円です。

例えば控除の計算対象となる期間が10年間なら、原則400万円です。

iDeCoの一時金が400万円以下で、ほかの退職金との調整などがなければ、退職所得控除によって課税される退職所得が生じないケースがあります。

控除を超えても原則2分の1課税になる

一時金の税制には、もう一つ大きな特徴があります。

一般的な退職所得では、収入から退職所得控除を差し引いた残額について、その2分の1が課税対象となります。

例えばiDeCo資産が1000万円で、利用できる退職所得控除が400万円だったとします。

差額は600万円です。

一般的なケースでは、その2分の1である300万円が課税対象となる退職所得です。

1000万円全額が通常の所得として課税されるわけではありません。

この仕組みによって、一時金は税負担を抑えやすい受け取り方になる場合があります。

年金で受け取ると雑所得になる

一方、iDeCoを年金として分割して受け取る場合は、原則として公的年金等に係る雑所得として扱われます。

この場合に利用できるのが公的年金等控除です。

65歳以上では、公的年金等の収入金額など一定の条件に応じて控除額が決まります。

参考記事では、65歳以上について最低年110万円の公的年金等控除が使えるケースが紹介されています。

そのため、iDeCoを年金で受け取ることで、毎年の控除を利用しながら受け取る方法があります。

公的年金と同じ控除枠を使う点に注意する

ただし、公的年金等控除はiDeCo専用の非課税枠ではありません。

老齢基礎年金や老齢厚生年金などの公的年金も同じ控除の計算に関係します。

例えば公的年金だけですでに公的年金等控除の範囲を大きく使っている人が、さらにiDeCoを年金として受け取れば、その分だけ課税対象となる所得が増える可能性があります。

したがって、年110万円という数字だけを見て、iDeCoを毎年110万円以内で受け取れば非課税になると考えることはできません。

公的年金を含めた年間の収入全体を見る必要があります。

会社の退職金が大きい人は一時金にも注意する

一時金にも同じような問題があります。

退職所得控除はiDeCoだけに使える制度ではありません。

会社から受け取る退職金にも使われます。

60歳で勤務先から大きな退職金を受け取り、その際に退職所得控除を使っている場合、その後のiDeCo一時金について控除額の調整が必要になるケースがあります。

そのため一時金が必ず年金より有利とは限りません。

退職金をいつ受け取ったのか、iDeCoを何歳で受け取るのかという時間軸も重要になります。

一時金と年金を組み合わせる方法もある

iDeCoをすべて一時金、またはすべて年金にしなければならないとは限りません。

金融機関や契約内容によっては、一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方法があります。

例えば退職所得控除の範囲に収まりやすい部分を一時金として受け取ります。

それを超える部分については、毎年の公的年金等控除との関係を確認しながら年金として受け取る方法が考えられます。

資産規模が大きいほど、二つの控除をどう使うかという視点が重要になります。

税金だけで受け取り方を決めない

税負担は重要ですが、それだけで受取方法を決めるべきではありません。

一時金ならまとまった資金を確保できます。

住宅ローンの返済やリフォーム、介護への備えなど、大きな支出を予定している人には使いやすい方法です。

一方、年金方式なら一定期間に分けて受け取れるため、毎年の生活費を補う収入として利用できます。

まとまったお金を一度に受け取ると使い過ぎてしまうことが心配な人にも、年金方式は選択肢になります。

税金と生活設計の両方を見る必要があります。

受け取る直前ではなく60歳から考える

iDeCoの受取方法は、受給開始直前になって初めて考えるものではありません。

60歳で会社の退職金を受け取る。

60代は給与収入を得ながらiDeCoへ拠出する。

65歳以降に公的年金を受け取る。

70歳前後でiDeCoの拠出を終了する。

その後、一時金または年金でiDeCoを受け取る。

この流れを早い段階から整理しておけば、退職所得控除と公的年金等控除をどのように使うのかを考えやすくなります。

結論

iDeCoを一時金と年金のどちらで受け取るべきかに、すべての人に共通する答えはありません。

一時金には退職所得控除があり、一般的な退職所得では控除後の金額について原則2分の1課税という仕組みがあります。

一方、年金として受け取れば公的年金等控除を利用できる可能性があります。

ただし退職所得控除は会社の退職金との関係があり、公的年金等控除は老齢基礎年金や老齢厚生年金などとの関係があります。

つまりiDeCoだけを見て有利不利を判断することはできません。

会社の退職金、公的年金、iDeCoの資産額、受取時期、そして毎年必要となる生活費。

これらを一つの時間軸に並べ、一時金と年金のどちらにどの控除を使うのかを考える。

iDeCoでは積み立て方と同じくらい、受け取り方の設計が重要です。

参考

日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 60歳からiDeCo増額 拠出・非課税枠活用しやすく

タイトルとURLをコピーしました